文化
“芸術は爆発だ!”岡本太郎が見つめた沖縄…「それはひとつの恋」溢れ出すノスタルジア
60年前の沖縄とは…岡本太郎が刻んだ“思い”
「芸術は爆発だ!」のテレビCMでも有名だった日本を代表する芸術家・岡本太郎さん。
その岡本さんが見た60年前の沖縄と今とをつなぐドキュメンタリー映画「岡本太郎の沖縄」が公開されている。60年前の沖縄とはいったいどういうものだったのか…
強烈なエネルギーで日本を揺さぶり続けた岡本さん。
大阪・万博記念公園にある「太陽の塔」や東京・渋谷駅の「明日の神話」などに代表される作品は、今なお日本人に大きな影響を与え続けている。
日本とは何か?60年前、自らの内なるアイデンティティーを探るため、日本再発見の旅に出た岡本さん。その旅の最後にぶつかったのが沖縄だった。
岡本さんは、2度の旅を通して沖縄の本質を追い求めた。夢中でシャッターを切った岡本さん。彼が撮った沖縄の写真は数百枚にも及んだという。
岡本さんは魅入られたかのように、沖縄をフィルムに刻み付けていった。あふれ出した言葉たちは『沖縄文化論』という本になり、沖縄を見つめたまなざしは、のちに写真集として発表された。
「日本人とはなにか?」岡本太郎が考える沖縄の本質
『沖縄文化論』より:
「肌寒い東京を飛び立って数時間、まったくあっという間に、沖縄に来てしまった… やがて道が右のほうに緩やかな弧を描くと、予期したとおり車の前方に無数のギラギラした照明とともに、基地が展開しはじめる」
岡本さんが旅した1959年の沖縄。その年は18人が死亡した米軍ジェット機墜落事故が起きた年…。反米感情は高まり、沖縄は騒然としていた。
しかし岡本さんはあえて基地問題には焦点を当てず、そもそも沖縄とは何なのかを見つめようとした。
『沖縄文化論』より:
「沖縄についての報告はいろいろある。そのほとんどが軍政下の政治…。それはたしかに厳然たる事実の反映ではあるが… そもそも沖縄とはなにか?日本人とはなにか?そして自分自身とはなにか?もっと自分の神秘、その根源を見つめなければならない と、私は考える」
岡本さんが撮影した数百枚もの沖縄写真には、1枚として米軍基地やフェンスさえ映っていない。岡本さんが見つめた沖縄。岡本さんは沖縄の本質をどのように感じ取ったのか。
『沖縄文化論』より:
「素朴だが、鋭く、たくましい。切実な生命力を伝えている。サバサバした人生観。厳しさと貧困に耐えながら、明朗さを持ち続けた。こだわらない、だが、投げやりでない。我々が遠く捨て去り、忘れてしまった生活のきめが意識の奥で生きている。それは生き甲斐そのものだ」
写真家・山田實氏:
太郎さん、どこで写真術を身につけたのかと思うくらい見事な写真。人物も、風景の切り取り方も見事。本当の日本が沖縄にあるなんて…。太郎さんがそんなこと言うんですからね。太郎さんに教えられてねぇ。
「それはひとつの恋のようなものだった」
『沖縄文化論』より:
「初めての天地には神秘がある。未知の風物にふれる喜びの中に、自分の根源に巡り会うような、いいようのないノスタルジアをおぼえるのだ」
岡本さんのまなざしは何気ない石垣のある風景。そしてこの島で生き抜いてきたお年寄りたちのしわだらけの顔へとむけられていった。そしてこう言い切ったのだ。
『沖縄文化論』より:
「沖縄の中にこそ、忘れられた日本がある。わたしは、自分自身を再発見した」
沖縄の中に日本本来の姿を見つけ、沖縄で自分自身を再発見したと言った岡本さん。沖縄への温かい思いをこんな言葉で表現している。
「それはひとつの恋のようなものだった」
映画「岡本太郎の沖縄」公式サイト
http://okamoto-taro.okinawa/
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