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OTV報道部

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遺骨収集はボランティア頼み。沖縄戦の遺骨の多くが遺族の元に帰れず

戦世(いくさゆ)から78年。20万人あまりもの命が失われた沖縄戦の犠牲者の遺骨の多くが遺族の元に帰っていない。

遺族の高齢化や、県出身者の遺骨の返還が、国が実施するDNA鑑定ではこれまで実現していないなどの課題について考える。

戦後76年間、暗い壕に取り残された8人の遺骨

2021年3月3日、糸満市で発見されたのは、戦後76年もの間、暗い壕の中に取り残されていた戦没者の遺骨だ。

見つかった8人のなかには、子どもと見られる小さな遺骨もあった。

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田哲二さん
「子どもは沖縄の方ですよね。この大人の方は県外から来た兵隊かもしれないですけど、子どもは沖縄の子どもなんですね」

厚生労働省は2023年5月、8人の遺骨のうち4人の遺骨からDNAを抽出できたことを明らかにした。
4人のうち2人が男性、2人は女性。女性の1人は骨の状態から子どもであることがわかった。

遺骨収集はボランティア頼みに…

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田哲二さん
「子どもは軽い、軽いですね…かわいそうにね」

20年以上前から沖縄に通い、遺骨収集を続けてきたボランティアの浜田哲二さんと律子さん。

糸満市の壕から見つけ出した8人の遺骨を納骨袋に納め、国によるDNA鑑定で身元を特定してほしいと糸満市の遺骨収集情報センターに託した。

これまでに国によるDNA鑑定で6人の遺骨が遺族の元に帰っていて、その全員が県外から沖縄戦に動員された兵士だった。

軍人は遺骨とともに見つかった名前の書かれた遺留品や、部隊の名簿などの記録が身元を特定する手がかりとなった。

一方、着の身着のままで戦火を逃げまどい犠牲となった民間人には、手がかりがないのがほとんどだ。

遺骨と遺骨を結びつけるDNA鑑定の申請を国はホームページなどで案内しているが、高齢化する遺族に対する直接的な申請の呼びかけは、遺骨収集同様にボランティア頼みとなっている現状がある。

これまで沖縄戦で肉親を亡くした全国の遺族からの国へのDNA鑑定の申し出があったのは1496件。

このうち、沖縄の人からの申請は328件にとどまっている。

戦争のことは過去のことだと思ってない。心の中にいろいろな思いを抱いて生きてこられた

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田哲二さん
「この照屋公民館の裏にある兵士が立てこもっていた陣地壕、その中から8人の方のご遺骨をお迎えしたんです。その8人の中のお2人がお子さんなんですよ」

子どもの遺骨が見つかったことをきっかけに、沖縄の戦没者遺族に直接DNA鑑定の申請を呼びかけたいと、地域の公民館を訪ねた。

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田哲二さん
「国が、その遺骨の身元を判明させるためにDNA鑑定というのをやっていまして、もし『うちの家族かもしれないよ』『うちの知り合いかもしれない』と申し出ていただき、DNAが一致しましたら、故郷にご遺骨は帰れる可能性があるんですよ」

遺骨とともに見つかった遺留品を見せ、見覚えはないか、小さなことでも何か手がかりがないかと呼びかけた。

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田律子さん
「このお弁当箱が、このちっちゃなご遺骨の近くから出てきました」

この日に集まった地元の人たちの中に、子どもの遺骨や遺留品について心当たりがある人はいなかったが、沖縄戦で父親を亡くしたという女性が、DNA鑑定の申請をしたいと申し出た。

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田律子さん
「皆さんやっぱり戦争のことは過去のことだと思ってないです。まだ心の中にいろいろな思いを抱いて戦後生きてこられたと感じました」

(Qあんまりこういう話はしないですか?)

沖縄戦で父親を亡くし、DNA鑑定の申請をした遺族
「普段はね、うん…。あの時はみんな南部に駆り出されていますからね」

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田律子さん
「1人でもこうして申請したいですって言ってくださった方がいて、どこで亡くなったかっていうことがわからなくて申請をされたと思いますので、一致していたらいいなという気持ちでいっぱいです」

戦争体験者は鬼籍に入っていく、そうした人たちの記憶にたどり着けるか

浜田さんたちはこれまで、部隊の証言や名簿を基に収集活動と遺族への声かけを行ってきたが、女性と少女の遺骨が見つかったことで、沖縄の遺族を探すことに力を入れていきたいとより一層感じるようになった。

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田哲二さん
「沖縄戦で亡くなっている絶対的な数は、やっぱ沖縄の方が多いんですよ。だからこそ沖縄の人の声掛けがきちっとできてないっていうのは、私の活動では非常に大きな落ち度です。ただ、純粋に言って簡単ではないんですよね。データがほぼありませんので、自分たちで現地に行って声をかけています」

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田律子さん
「遺骨からDNAが取れたとしても、遺族からのDNAの提出がなければ絶対、一致して返還ということなのにはならないと思うんですよ。たくさんの方に可能性があるんだったらDNA鑑定をやってみようっていうふうに思ってもらって、提出してもらうっていうことが今後は大事になると思います」

沖縄戦から78年が経過し、遺骨の劣化が進みDNAの抽出も難しくなっていることに加え、遺族が高齢化していくことに焦りも感じている。

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田哲二さん
「戦争体験された方々がどんどん鬼籍に入っていかれている中で、そうした人たちの記憶に、少しでもたどり着けるといいますか。でも、それは時間かかるんですよね」

遺骨収集を続けてきたボランティア 浜田律子さん
「掘るだけではなくて、そういう声掛けですとか、遺留品もお持ちして、見覚えないですかと尋ねながら遺族を探す、そういった活動もこれからしたいと思います」

国が実施するDNA鑑定は国費が充てられるので、遺族側の負担はない。浜田さんたちは、鑑定申請の手続きについても連絡をもらえれば訪ねて書類の書き方なども指導したいとしている。

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