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OTV報道部

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喜びも苦労もつながって笑っていたい。双子や三つ子、多胎育児を支える活動

双子や三つ子といった、一度の出産で産まれた複数の子を多胎児(たたいじ)と呼ぶ。
多胎を育てる家庭は、赤ちゃんの世話に追われ社会との繋がりが乏しくなり、孤立しやすいことが指摘されている。

多胎育児の現状とそれを支える活動を取材した。

二人同時に泣かれると…まだルーティンに慣れていない…

2022年6月3日、宜野湾市の上原家に産まれた双子の空音(そらん)ちゃん、海音(かのん)ちゃん。

上原家には二人のお姉ちゃんもいて、双子は第3子と4子。

乳幼児のお世話をこれまで経験してきたママとパパでも、双子育児はワケが違うようだ。

上原美咲さん
「授乳のタイミングも同時なので、激しく鳴いている方を先に選んで飲ませて、もう一人は泣かせっぱなしになります。辛かったのは、体調が悪い時に二人同時に泣かれて…。うわ~ってなりました」

(一年が経って)

上原美咲さん
「1歳8か月になりました~。仕事に復帰したので、朝の準備からお迎えまでバタバタと過ごして、まだルーティンに私が慣れていない状況です」

100人に1人は多胎児の母親という割合で推移

日本多胎支援協会によると、多胎児の出生割合は体外受精が本格化した1980年代後半から急増し、2005年にピークを迎えた。
その後、生殖補助医療のルールが決められたことから一時減少傾向となったものの、年間に出産する100人に1人は多胎児の母親という割合で推移している。

神戸女子大学 看護学部 服部律子 教授
「不妊治療が普及する以前に比べると、高い状況にあることは変わらないです。育児を体験した人たちの力を借りながら、助けていこうという環境・取り組みが不可欠だと思っています」

同じ境遇の親だからこそ苦労も悩みも分かち合える

浦添市の児童館に集合したのは双子、双子、双子!
多胎児とその親が交流する「ふたごちゃん・みつごちゃんクラブ」だ。

当時、まだ0歳の双子を連れた上原さんも参加していた。

上原美咲さん
「お出かけの準備の話、離乳食とかアドバイスをもらいました。共有できるのがストレス発散にもなります」

同じ境遇の親だからこそ、苦労も悩みも分かち合える。

参加者の女性
「赤ちゃん一人でも産後うつになるのに、二人って私死んじゃうんじゃないかって思いました」

ふたごちゃんクラブ創立者 内間美沙紀さん
「みんなで話しましょう、すぐ連絡ください。私も一人で悩んでいましたよ」

このクラブを立ち上げた内間美沙紀さん。

内間さん自身も双子の詩織ちゃんと怜奈ちゃんを育てている。

夫の転勤先の東京で双子を出産した内間さん。

ふたごちゃんクラブ創立者 内間美沙紀さん
「知らない土地での初産で、しかも双子で。エレベーターなしの3階だったので、赤ちゃんを連れての移動がおっくうになりました。幾度とくるオムツ替えと授乳に追われるので、作業のようにこなして、全然笑っていませんでした」

識者「環境が非常に整っていない」家族を追い詰めていく状況にある

外出のハードルが高く、社会とのつながりが乏しくなり、孤立することが多い多胎育児。

2018年の調査報告書では、多胎家庭で虐待により子どもが死亡するケースは一人の子を産み育てる家庭と比べ、2.5倍~4倍と指摘されている。

神戸女子大学 看護学部 服部律子 教授
「妊婦さんやお母さん方、それからご家族の孤立化という、多胎児を産み育てていく環境が非常に整っていなくて、お母さんやご家族を追い詰めていく状況にあります」

内間さんは、訪問に来た保健師の紹介で東京の双子会に参加し、仲間と話すことで子育てを楽しめるようになったという。

ふたごちゃんクラブ創立者 内間美沙紀さん
「家で日中、一人になったときと全然気持ちが変わっていて。ほかの同じ境遇のママたちも一緒だ、みんな一緒だという気持ちになったら楽になりました」

双子が1歳の時に沖縄に戻った内間さん。

当時は身近に双子と親が集まれるサークルがありませんでした。

多胎育児を支える場を当事者の視点で作りたいと立ち上げたのが、ふたごちゃん・みつごちゃんクラブだ。

成長していける仲間がほしい。大変さをみんなで笑っていたい

2023年5月に開催した多胎教室。双子連れもいれば、親のみで参加する人もいた。

ふたごちゃんクラブ創立者 内間美沙紀さん
「最近、双子サークルが県内に増えてきたんですよ。居場所づくりをする上で、ちょっと違った居場所があったらいいなと感じています」

親自身への学びや体験の提供を軸にする多胎教室では、保護者同士の交流がより深まり、息抜きにも繋がっている。

多胎教室の参加者
「次も双子だったらと思うと怖くて… 。双子×双子になるのが怖くて、あとひとり産めないです」

こんな気持ちを笑って吐き出せるのも、同じ双子ママだから。

一方、こんな声も…

小学1年(男子・男子)の父親
「一人の場合ももちろんですけど、それ以上にお父さんの関わりが大事。私も双子、三つ子のパパの会をやってみたいなと思いました」

内間さんはいま、乳幼児を相手に奮闘中の家庭だけでなく、子育てが一段落した世代まで多胎育児の交流の輪を広げていきたいと考えている。

ふたごちゃんクラブ創立者 内間美沙紀さん
「私もまだまだこんな甘えんぼさんを育てている一人のママなので、一緒に不安とか苦しさとかを相談して成長していける仲間が欲しいです。大変さをみんなで笑っていたいです」

内間さんは双子クラブや多胎教室といったサークルを開催しているが、やはり外出がネックだったり、情報が届かない保護者もいることが課題と考えている。

多胎育児をする家庭を取りこぼさないためには行政の関わりは不可欠だとして、一般社団法人沖縄多胎ネットを設立し、自治体に呼びかけ、親子の外出支援に向けて動きだしている。

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