沖縄経済
健康・医療・介護情報を一元管理「PHR」の可能性
後間
近年、あらゆる分野で加速するデジタル化。
今回はその中でも健康や医療、福祉の分野に関するお話しを野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんにうかがいます。
よろしくお願いします。
宮里
よろしくお願いします。
後間
最近では新型コロナの影響もあってウェブ会議や電子決済などデジタル化が急速に進みましたが、健康や医療、福祉の分野でもこうした動きが広がっているのでしょうか?
宮里
医療や福祉の分野では今回のテーマである「PHR」の推進に力を入れています。
「PHR」とは「パーソナル・ヘルス・レコード」の頭文字をとったもので、直訳すれば「個人の健康記録」です。
つまり「デジタル技術によって、健康や医療、介護などに関する患者の情報を集め、一元的に保存されるデータ」を意味します。
私たちが医療機関を受診すると診察や検査結果、薬の記録がデータ化され、また自治体や健康保険組合には健康診断などのデータが蓄積されていきます。
また最近では体重計やスマートウォッチなどのウェアラブル機器によって、体重や歩数、血圧など、日々の身体のデータも簡単に記録できるようになりました。
こうしたデータを集約することで健康管理や病気の予防などにより効率的に役立てることができるのです。
後間
実際に国内の動きはどうなのでしょうか。
宮里
国では病院などの公的機関が持つ個人の医療や介護の情報、健康診断などの情報を自ら「マイナポータル」経由で把握して利用・活用できる環境を整える「データヘルス改革」を進めています。
こうした公的なデータと、民間で収集したさまざまなデータを一体化して、国や、企業、そして全国民にメリットがある形にしたい考えです。
一方、企業でも生活習慣の改善をサポートするアプリの開発に力を入れています。
例えばある大手通信会社では歩数などの活動データを記録・管理し、目標をクリアするとコインが付与されるといったアプリを展開し、通信以外の重点分野のひとつに位置づけています。
こうしたPHRの推進には多くのビジネスチャンスがあるだけでなく、国や自治体としても人々の健康寿命を延ばし社会保障関連の支出を抑えることができます。
そして何より、健康の増進と適切な医療へと繋がるのです。
後間
今後の市場規模はどう予測されていますか?
宮里
経済産業省はヘルスケア産業全体の国内市場規模が、2016年のおよそ25兆円から、2025年にはおよそ33兆円に拡大すると推計しています。
なかでもヘルスケア関連アプリやウェアラブル機器などの成長が見込まれています。
後間
情報を一元化するということは、セキュリティの面など課題もいろいろあると思いますが、官民一体となって進めていくことが重要だといえそうですね。
今回は健康や医療、福祉の分野で進む「PHR」について宮里さんにうかがいました。
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