環境に優しいだけじゃない！ 多くのメリットをもたらすアップサイクル

──今回はブルームーンパートナーズの伊波貢さんとお伝えします。

伊波さん
「今回のテーマは『環境に優しいだけじゃない！多くのメリットをもたらすアップサイクル』です」

「アップサイクル」とは、本来捨てられるはずのものにデザインやアイディアといった新たな価値を与え、別の製品に生まれ変わらせることをいいます。

県内企業でも他業種とのコラボレーションやユニークな発想で廃棄物に新たな命を吹き込む取り組みが進んでいます。

廃棄されるものが沖縄の工芸品へと変身

食卓を彩るモダンなブラックのシャンパングラス。
グリーンの器は涼しげな印象を与えてくれます。

伊波さん
「琉球ガラス村で作られているこちらの商品、何でできているかわかりますか」

これらの琉球ガラスの原料となっているのが…

廃棄される車の窓ガラスです。

リサイクル事業を手掛けるうるま市の拓南商事は年間およそ6万台の廃車を解体していて、リサイクルできない窓ガラスなどは輸送費のコストをかけて、県内外の埋め立て処分場に運ぶしかありませんでした。

拓南商事　玉城杏璃さん
「正確な数字は言えないんですけど、莫大（ばくだい）な費用をかけて処分していまして、どうにかリサイクルできないかと考えていました」

そんな時に産業振興公社を通じて出会ったのが、糸満市の琉球ガラス村です。

拓南商事と琉球ガラス村は2019年から協業で、車の窓ガラスを活用し新たな製品にアップサイクルするプロジェクト「mado（マド）」をスタートさせました。

琉球ガラス村　川上英宏 常務取締役
「戦後の物がない時代に駐留米軍が投棄する廃ビンを溶かしたという歴史的な事実もありまして、それで今回、サイドガラスを溶かしてということにチャレンジした経緯になります」

戦後はアメリア兵が捨てたジュースの空きビンを再利用して作られていた琉球ガラス。

しかし、ペットボトルの普及などから廃ビンを集めるのが困難となり、1980年代からは天然資源をもとにした「バージン原料」を使って琉球ガラスが量産されています。

いったいなぜ、琉球ガラス村は拓南商事とタッグを組み、いまでは使わない原料を使って製品をつくろうと思ったのでしょうか。

琉球ガラス村　川上英宏 常務取締役
「60代から70代の職人が若い頃に廃ビンを扱っていて、その廃ビンを扱っていた手早い技術というのを今の若い職人に技術継承していかないといけない」

バージン原料に比べ、再生ガラスの原料は固まるのが早いので、スピーディーに成形する技術が求められます。

琉球ガラス村　川上英宏 常務取締役
「細かいところを素早くやるという技術が格段にスピードアップしたのかなと思っていますし、それがさらにガラス作り全体の職人の技術の幅にも繋がっていると思います」

両社はmadoシリーズを長く続けていくための取り決めとして、琉球ガラス村は窓ガラスを通常の原料のおよそ半額で仕入れ、拓南商事も利益が得られるようにしています。

拓南商事　玉城杏璃さん
「（廃棄するのに）費用がかかっていたものが、買い取ってもらえて新しいものに生まれ変わるというのは、作業する人としても志も高くなりますし、そういう面ですごくありがたいと感じています」

琉球ガラス村　川上英宏 常務取締役
「今は２色なんですけどガラスの色開発であったり、器とインテリア素材以外にもガラス原料として大学と研究開発をしておりまして、別の使い道を開発しています」

リサイクルだけでない新たな価値の創出

うちなーの翼・JTA日本トランスオーシャン航空でも、2022年から費用をかけて廃棄していたものを全く別のものに変身させています。

この色鮮やかなバッグは…
ライフベストをアップサイクルしています。

こちらのタグとキーホルダーは、シートベルトや機体の外側を覆うジュラルミンでできています。

JTA　照屋寛親さん
「1つ1つが航空安全・安全運航を支えている役割を担っているんですね、そこをお客様に1つでも知っていただきたい」

製品には実際の航空機に施される加工や装飾がされていて、技術力の高さを感じることができます。

作っているのは、工具を扱うのに慣れている整備士…
だけではありません！！

普段はデスク業務を行っている職員も参加しています。

整備管理部門　谷口万里奈さん
「たかがシートベルトだけど新しい価値を生み出されるというのは、すごく魅力的なことだなと思います」

整備管理部門　堀内一貴さん
「こういったことをきっかけに、整備士の方とコミュニケーションする機会も増えています」

JTAではアップサイクルされた製品をイベントなどで販売し、売り上げは県内の福祉団体に寄付しています。

JTA　照屋寛親さん
「（2022年は）子育て支援団体、あとは子どもの居場所を支援するサポート団体の合計4団体に各10万円づつ寄付させていただきました。社会にとっても我々にとっても購入する方にとってもいいスキームを今後とも挑戦していきたいと思っています」

今日の一言

──さて伊波さん、今回のテーマから見えてきたことはなんでしょうか。

伊波さん
『アップサイクルはビジネスチャンス！』です。

新しい価値を与えて新しい製品をつくる。
これはさまざまな業界において展開できるかもしれません。

時代の追い風もありますので、自社でもアップサイクルに取り組むためのアイディア出しに取り組んでみてはいかがでしょうか。