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OTV報道部

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青のグラデーションは豊穣の海 移設工事で埋め立てられていく辺野古 大浦湾

普天間基地の移設計画をめぐり、2024年1月10日に始まった辺野古の大浦湾の工事。

その大浦湾に面する瀬嵩(せだけ)区の公民館では、豊穣の海に息づく多様な生物を紹介する写真などを展示している。

展示を企画した区長の思いとは。

20年に渡り貴重な生態系を記録

名護市の瀬嵩区の浜からは、埋め立てに向けて工事を進める作業船が、大浦湾に展開する光景が広がっている。

海岸からほど近い集落にある公民館に展示されているのは、大浦湾にすむ生きものたちを切り取った写真や、個性的な姿かたちを残した標本だ。

失望しかない 自分たちの財産が失われていく

名護市瀬嵩区・西平伸 区長
「ここ側は、瀬嵩の前浜をイメージして作ったもので、浜で拾ってきました。向こう側はダイビングで集めてきたやつです。前浜をイメージして前浜の形を作った、そんな感じです」

瀬嵩区で生まれ育ち、現在区長を務める西平伸さんは、仲間と「ダイビングチームすなっくスナフキン」を結成し、20年に渡り大浦湾の貴重な生態系を記録してきた。

「大浦湾で一番楽しいところは、泥場」だと話す西平さん。大浦湾独自の魅力を「サンゴ礁は、慶良間や離島の方がきれいだが、あそこに無くてこっちにあるのといったら、やっぱ泥場だね」と説明する。

西平さんが見てきた、大浦湾に潜む豊かな生態系。

大浦湾の水面を彩る青のグラデーションは、水深によって色が変わり、海底に砂場や岩礁、泥場といった、多様な環境の存在を示している。

名護市瀬嵩区・西平伸 区長
「これは『トウカムリ』って貝です」

名護市瀬嵩区・西平伸 区長
「これがこの辺に普通に目立ってたもんだから、トウカムリポイントって名付けました。(水深)4メートル、5メートルのきれいな砂場があって。今この辺で作業ヤードの石が投げられています」

西平さんは、埋め立て工事のためしょっぱなに石を投げられた場所が一番生物の多様性がある場所だったため、そこから工事が始まったというのはとてもショックだったそうだ。

名護市瀬嵩区・西平伸 区長
「これじゃ後戻りはできないのかもしれないね。失望しかない」

普天間基地の返還が合意されてから27年。
移設先として浮上したことで名護の人々は時に分断され、翻弄(ほんろう)されてきた。

名護市瀬嵩区・西平伸 区長
「(展示には)基地に賛成とか反対とかという事はひとことも書いていないからね。賛成でも反対でも個人個人でやるのは構わないけど、今はもういろんな人間関係があるからさ。最初の(1997年)名護市民投票のときにもう仲違いして大変だったから、あれには戻れない」

Q.実際に今年に入って浜に行ったりしましたか?

名護市瀬嵩区・西平伸 区長
「いや行かないね。浜に行ってもやることもないしね。船が停まっているのは日常の生活になっているからさ。浜に行ったら悲しくなるとか、そういうものはもうとっくに終わっている」

西平さんは、自分たちの財産が失われていく中、大浦湾に豊かな自然があるということだけをアピールしたいと考えている。

土砂や石材で埋められてゆく豊穣の海。

豊かな自然を享受しながら、そこで暮らしてきた人々の思いも押しつぶされている。

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