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OTV報道部

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譲渡率は驚異の99.9パーセント 不用品を捨てずにリユースする嘉手納町による粗大ごみ削減率

年々増える粗大ごみの量を減らそうと、嘉手納(かでな)町では家庭などから出る不用品を捨てずにリユースする仕組みづくりに取り組んでいる。

必要なものを必要な人に届け、資源を循環させるその方法とは?

処分費用・運搬費用もかからない

お目当ての品を求めて、遠く離れた豊見城(とみぐすく)市から利用者がやってきた。

利用者
「これこれ。まさにこれです。これをずっと探していたので。母親がちょっと体が不自由で、なかなか自動で回るっていう機械がなくて、これはもうまさに理想的な機械なので」

嘉手納町役場で町内の廃棄物処理などの業務を担う山城久幸さんは、「(利用者は)安く手に入ったからよろこんでくれるし、僕らは処分費用がかからない。(譲る方は)処分費用、運搬費用もかからないので、もう一石で四鳥です」と話す。

町役場の地下スペースにはリサイクルショップさながら、ベッドや冷蔵庫、オーブントースターなどが並んでいる。

これらは全て町民から集められた不用品だ。

ごみ削減へ ジモティーを活用

2020年度に嘉手納町で処分した粗大ごみの量は、コロナ禍の巣ごもり生活で家具や家電の買い替えが進んだことを背景に、5年前と比べると2倍以上に増えた。

読谷村と共同で運営するごみの処分場は老朽化が進み、施設の維持・管理に多額の費用がかかるほか、ごみの埋め立て地もおよそ10年後には満杯になる見込みだ。

各施設の延命化が必要だということで、延命化を図るためにはどうするのかを考えた結果、簡単な答えが「ごみを減らす」ということであった。そのため嘉手納町が取り入れたのが、不用になった家具などを譲りたい人と譲り受けたい人をマッチングする地元の掲示板サイト「ジモティー」だ。

ジモティーは2024年1月17日現在、全国139の自治体と協定を結び、地域のニーズをもとに不用品が循環する枠組みを共同で構築している。

嘉手納町も2021年9月に沖縄県内で初めてジモティーと連携協定を結び、公式アカウントを立ち上げた。

嘉手納町役場 産業環境課 環境衛生係 山城久幸 係長
「(ジモティーの)周知を図って、住民自らリユースの方をしていただくこと。あとは代理出品ですね。インターネット環境が無いご家庭やスマホを使ったことがない高齢者の方々もいらっしゃいますので、その方々を対象に代理出品の方をスタートさせました」

ネットに不慣れな高齢者などには町の職員が出向き、出品のサポートや不用品の回収を行うことでジモティーの活用を促進しており、町全体でリユース意識を高めようと活動している。

譲渡率は驚異の99.9パーセント

山城さんによると、これまでに代理出品した1100点あまりのうち、譲渡率は驚異の99.9パーセント。「処分方法の中に『捨てる』ではなく『譲る』という項目が判断いただける状況になってきたので、そこが一番良いところですね」と話す。

これまでは無料で譲っていたが、2023年11月からは商品の状態に見合った価格を設定し、売却するようになった。

嘉手納町役場 産業環境課 環境衛生係 山城久幸 係長
「売却という形を示して、その金額をまたさらに町民の方々に示すことで、より『捨てる』という方向から『売却しよう』という方向へ進んでいただけるのかなと思いまして」

得られた売上は町の歳入として、ごみの処分費用に充てる。

粗大ごみの量は過去5年で最小

この日は地域の高齢者から回収の依頼があるということで、同行させてもらった。

町内でも特に高齢者が占める割合が高い中央区では、自治会長が役場と連携し、不用品の回収に努めている。

嘉手納町役場 産業環境課 環境衛生係 山城久幸 係長
「レンジとオーブントースター、ミキサーや炊飯器、あとはヒーターですね。代理で自治会長のほうから問い合わせがあって、まずは見に行こうと。そしたらやっぱり使えるものばかりなので、リユースしましょうと」

嘉手納町中央区自治会 長嶺由次 会長
「持っている本人にとってはいらないものでも、必要な方にこのモノ自体が循環するというのは良い取り組みだと思っています。(高齢者の)皆さんもよろこんでいます」

職員が役場に運び込まれた不用品の状態などを確かめ、写真を撮影して掲示板に投稿する。

山城さんを中心にリユース活動を続けた結果、2021年度のジモティーとの連携による粗大ごみの削減効果はおよそ5.5トン、町全体でも前の年度の粗大ごみの量と比べて、50トンあまりの削減に成功した。

2022年度はさらに15トンの減量にも繋がり、過去5年で最少となるなど、町民のリユース意識は確実に高まっている。

嘉手納町役場 産業環境課 環境衛生係 山城久幸 係長
「目指すのはやっぱりリサイクル率の上昇ですよね。地球温暖化防止といったものにもどんどん繋がりますので。まずはリサイクル率を、せめて50パーセント台に目指してやっていきたいと思います」

あなたにとってはいらないものでも、誰かにとっては必要なもの。

行政と企業が一体となって循環型の社会を目指す取り組みはこれからも続く。

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