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普天間基地返還の道筋「5年以内の運用停止」実現していない約束。新たな市長に問われる手腕。
2024年9月8日に投開票された宜野湾市長選挙は、政府与党が支援した佐喜真淳市長が当選を果たした。その佐喜真市長が公約に掲げているのが普天間基地の「返還期日の明確化」だ。
政府は2013年に「5年以内の運用停止」を沖縄県に約束したが、現在も実現していない。1日も早い返還を市民が望むなか、見通せない返還期日、佐喜真新市長の手腕が問われる。
「一日も早い返還そういう道筋をつけていきたい」
超短期決戦の選挙戦を制した宜野湾市の佐喜真市長は、宜野湾市役所で市政の最大の課題である普天間基地の全面返還について決意を述べた。
佐喜真淳 宜野湾市長
「最大の課題である普天間飛行場を1日も早く返還する。そういう道筋をつけていきたいと思います」
1995年に発生した米兵による少女暴行事件をきっかけに高まった県民の反基地感情を受け、日米両政府は翌年、普天間基地の全面返還を発表。
しかし、返還は「県内移設」が条件とされたことで反対運動が起こり、「世界一危険」とされる普天間基地は現在も運用を続けている。
2013年、辺野古の埋め立て承認を引き出したい政府は、当時の仲井真知事に対し、普天間基地の5年以内の運用停止を「約束」した。
しかし、翁長県政に代わると辺野古移設に反対していることを理由に期間内の返還は難しいと責任を転嫁した。
2017年2月15日 安倍首相(当時)
「残念ながら現知事(翁長知事)は根本のところで全くご協力いただいていないわけでございます。つまり、一緒に考えることができなくなっている中において、5年というのは難しい状況になってきております」
日米で取り決められた返還条件は8項目
政府は、普天間基地の返還は代替施設の完成が前提だとしているが、有識者は、仮に辺野古への移設が完了しても返還が実現するかは不透明だと指摘する。
沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「海兵隊も各離島に小分けにして海兵隊を配備しようという計画は、2022年からはじめていますが、こんな時代に固定化されるような航空基地が本当に必要なのか?もう一度見直す必要があると思います」
2023年、アメリカ軍は日本の報道機関向けにワークショップを開催したが、このとき海兵隊幹部の口から驚きの発言が飛び出した。
海兵隊幹部は辺野古の代替施設について、山に囲まれてレーダーの捕捉が難しいことや、普天間基地より滑走路が短くなることに懸念を示し、「軍事的には普天間基地が残せるのであればその方が良い」との見解を示した。
沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「米軍は、ドローンで戦争する時代にこの基地は何に使えるのかっていう疑問を呈したりしているんですよね。辺野古問題は既にもう軍事的合理性を失っている」
辺野古に代替施設が完成しても、普天間基地は返還されないかもしれないという懸念は政府内でも共有されている。
2017年6月 参議院外交防衛委員会 稲田防衛相(当時)
「米側との具体的な協議、内容の調整が整わないこのようなことがあれば返還条件が整わず、返還がなされないということになります」
日米で取り決められた返還条件は8項目。この内、海兵隊の幹部が懸念を示していた滑走路の運用については、「緊急時における民間施設の使用」が条件になっている。
政府は、「利用調整に必要な法的な枠組みを整えている」としているが、普天間基地の返還はおろか、民間空港までアメリカ軍の運用範囲となれば、基地負担軽減に逆行するのは必至だ。
佐喜真市長は、「返還期日の明確化」を政府から引き出すとしているが、前泊教授は要請だけで実現は難しいと指摘する。
沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「政府に依存したって、日本政府はアメリカの安全保障政策の下で動いていますから、いつ返してくれるのかという段階的返還に道筋を付けられるかどうかお手並み拝見という感じですね」
30年近く停滞が続く普天間基地の全面返還。市民の安全な暮らしを守るため、佐喜真新市長のこれまでにない本気度が問われる。
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