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世界一のファンに囲まれてプレーのできる沖縄は僕の第2の“ホーム”#45 ジャック・クーリー<上>
僕が琉球ゴールデンキングスに来てから、2024-25は6年目のシーズンだ。それ以前のチームでは1年ずつしかプレーをしていないから、圧倒的に長い間、ここにいることになる。
そして、沖縄という場所でプレーをし続けていられることは、僕にとってとてつもない幸福感を与えてくれている。
琉球に来る前年、僕はイタリアでプレーをしていて、僕らのチームはファイナルに進出したのだけど、それが6月25日と遅い時期まで行われていた。その時点で僕は琉球からのオファーをもらっていたのだけど、僕としてはシーズンが終わるまで契約は待ってもらいたいと伝えた。
今ではこれほどまでに沖縄のことが気に入っている僕は、日本という国は訪れるにはいいところだということくらいは知ってはいたものの、詳しいことについてはほとんど何も知らなかった。だからこそ、キングスとの契約についてじっくり考えたくもあった。
そこで、僕は親友の1人で、京都ハンナリーズなどでプレーをしていたデイヴィッド・サイモンに相談をした。兄貴分でもあるデイヴィッドはこう言ってくれた。
「沖縄は世界で最高の場所の一つだから絶対に契約したほうがいい」
というわけで僕は琉球の一員となったわけだけど、来てみたら想像していた以上に素晴らしい時間を過ごすことができている。
沖縄について話すべきことは山ほどある。その中で一番に頭をよぎることは、沖縄の人たちがどれほど親切で、僕のような外国人でも暖かく迎え入れてくれたことだ。
そのことは、沖縄だけではなくて日本全体に言えることでもある。例えば僕ら外国人が日本語を話せない時、僕らではなくて彼らのほうが「英語が話せなくてごめんなさい」と頭を下げてくれる。日本なんだから日本語だけしかできなくても、何も悪いことはない。謝るとしたら、むしろ僕らのほうがそうすべきなのに。
言葉のこと以外でも、何か困ったことがあったとしたら必ず誰かが気にかけて手助けをしてくれる。それはもちろん沖縄でも同じ。みんなすべてにおいて抜群に良い人たちなんだ。
沖縄は、僕にとっての新しい故郷のようなものだ。ここには多くの友人もいて、食事にもよくでかける。暮らすのにこれほどすばらしい場所はないと思っている。妻との婚姻届は沖縄で提出した。休みの日には家族でいろんなところに行く。もっとも、僕は沖縄本島以外の島にまだプライベートでいったことがないし、釣りを趣味としているのでそれを兼ねてどこかの島を訪れてみたい。
沖縄という場所が日本の中でも特別な文化や歴史のあるところだというのは理解しているし、好きなところばかりさ。でも僕のなかで一番気に入っていることは、沖縄にいるととても平穏が感じられるし、リラックスができるというところ。人々は皆、とても穏やかで、でも沖縄にすごく誇りを持っていて僕らの試合の時には沖縄アリーナを満員にして熱狂的に応援をしてくれる。すごく情熱的だ。
それはなにも沖縄アリーナだけで感じることではなくて、他の場所で試合をする時だってそうだ。天皇杯だろうがBリーグだろうが、ファイナルのアリーナの半分はキングスファンだ。沖縄の人たちにとってアウェーの場所にまで来てくれることには、頭が下がる。
2023-24シーズンのチャンピオンシップ(CS)のセミファイナル。僕らはホームで千葉ジェッツと対戦したわけだけど、最終3戦目にまでもつれた。3戦目は火曜日の夜で、でもその日は雨が降るなど、とてもひどい天気の日だった。それでも、沖縄アリーナでの最多来場者数記録(8,712人)を作るほどのファンが客席を埋め尽くしてくれた。僕らを応援したいという気持ちに満ちあふれていた。だから土日の試合だろうと、平日の試合だろうと、キングスファンたちはいつもそういう感じなのさ。そして、大きな箱だと盛り上がりを作り出すのは簡単じゃないけど、沖縄アリーナも大きなアリーナなのにいつもファンたちが盛り上げてくれる。
僕たちには世界で一番のファンがついてくれていると思っている。沖縄アリーナでのホームゲームでは本当にそう感じさせてもらっている。沖縄は小さな島々からなる場所で、そこには美しいビーチなんかもあって緩やかな空気の漂うところだけど、でも人々はこの場所の人間であることに誇りを持っていて、選手も応援してくれる人たちも団結の力を持っているのを感じる。
最近は沖縄に続いて群馬や千葉など多くのチームの本拠地で新しいアリーナができている。だけど、僕らにとって沖縄アリーナは特別だ。沖縄アリーナは「バスケットボール・ファースト」。コートがすばらしいだけじゃなくて、練習場からロッカールーム、ウエイトルームとどこを見ても芸術的。もちろん建物としても美しくて、コンサートなどを催してもすばらしい場所となる。
僕も沖縄アリーナができる前の沖縄市体育館時代を経験しているわけだけど、沖縄アリーナができて真の意味でキングスは強豪となったわけだから、アリーナが強いチームを作り上げるということの最高の例になっていると言える。ファンにとっても至極の場所だと思う。
僕はその沖縄アリーナで多くの声援を背に受けながらプレーをしていることを重々、感じている。コート上での僕は感情をよく出すことで知られていて、それがファンの皆さんに楽しんでもらえている一因だとは思っている。ただ、これでも大人しくなったほうで、昔はもっと感情を爆発させていた。時に感情にまかせすぎたプレーをしてしまったりして、妻から「やりすぎよ」などと諌められてしまうこともあるが、そこも含めて僕ではないかと感じている。
それに、感情が溢れ出てしまうのは僕がそれほどまでにバスケットボールを愛していて、自分のすべてをこの競技に注いでいるからだ。バスケットボールはエンターテインメントでもあるし、見ている人々を喜ばせなければいけない。そのことは、いつも頭に置いている。
また、僕は自分を多くの優れた選手たちのように言葉でチームを引っ張るリーダーだとは思っていない。だけど、自分が感情を出して激しく戦っているところを見せることで、味方を鼓舞したり、諦めない気持ちを表すという点ではリーダーシップを発揮できていると思っている。
これからも、それは僕の役割であり続ける。
(取材・構成 永塚和志)
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