うるま市,グルメ,地域,本島中部
ヒットグルメを生み出し続ける沖縄イイダコ屋店主の頭の中
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ジュワジュワー。鉄板の中でタコ焼きが焼ける香ばしい香り。祭りやフードコートでおなじみの光景です。でも、このタコ焼きは何かが違います。一個のタコ焼きから飛び出る8本の足。タコ焼き一個にイイダコが丸ごと一匹入っています。これ、めちゃめちゃ映えるやつじゃないですか!沖縄本島中部のうるま市など県内3カ所にある「沖縄イイダコ屋」。店主の仲西洋陽(ひろや)さんに、多くの人を引きつけるグルメを生み出す秘訣をうかがいました!
飲食業を始めるきっかけ
——「沖縄イイダコ屋」を始める前は何をされていたんですか。
「食品の物流会社に勤めていました。19年近くその仕事を続けていたので工場のセンター長になっていたんですけど、ずっと飲食業に興味があって。36歳のころ、勤務先の社長に『僕に4年間、猶予をください。やりたいことやってみてうまくいかなかったら、もう一回、平社員から雇ってください』って頭を下げて。社長は『OK、いいよ!』って送り出してくれました」
——周囲の反応はどうでしたか。
「みんな『絶対、失敗する』でしたね(苦笑)。県外企業の沖縄のセンター長だったので、一応、年収は良かったんですよ。それを投げ出すことになるので…。土地も家も買ったばっかりで、結構借金もあって。妻も最初は反対したんですけど。『人生、一回だから』ってお願いして、最終的には妻が一番理解してくれました。僕も不安しかなかったですけど、やるだけやってみようという好奇心の方が強くて。失敗は考えなかったですね。でも、最初は大変でした。1カ月で100万円無くなって、次の月も100万円。妻は不安でしょうがなかったと思います(苦笑)」
——飲食業はどういう風にスタートを?
「キッチンカーを作って、イベントで沖縄そばや唐揚げを売っていました。でも、誰もやっていないことをやりたいなと思って。ヤギを飼っていたので、そこにヒントを得て。沖縄のソウルフードを売ったら注目されるだろうと思い付いて、キッチンカーでヤギ汁を売るようになりました。そのタイミングで『ガチめしグランプリ』というコンテストに出てみたら、ヤギラーメンでグランプリを取ることができて。そこからですね。『あ、飲食、楽しいな』と思えるようになりました」
商品に地元への恩返しをプラス
——タコ焼きに小さなタコを丸ごと一匹入れるアイデアは、どこから来たんでしょうか。
「ヤギについて勉強しに台湾に行ったことがあったんです。夜市の屋台でタコ焼きの鉄板の上に生地を引いて、その上にランダムにイイダコを乗せて、その上からまた生地をかけて、チーズをかけて、バーナーであぶって、グラタンみたいな食べ方をする料理と出会ったんです。見た目のインパクトがすごくて。その後、大阪にもイイダコを使ったタコ焼きがあると知って、大阪にも行って食べてみて。その2つをかけ合わせて、沖縄の人が好きな揚げダコにしたら、絶対勝つなと思いました(笑)」
「うるま市のおいしい料理が集う『うるマルシェ』に沖縄イイダコ屋で出店したところ、おかげさまで好評でした。でも、それだけだと誰でもできることだなと思い直して。出身地であるうるま市に恩返しがしたい、意味のある商売をしたいなと思いました。地産地消につながるように、普通のタコ焼きソースではなく、うるま市勝連産の太もずくを使ったソースを共同開発し、それをかけて食べてもらうようにしました。生地に使う卵も、「ノーマンブラザーズ」で有名なうるま市の徳森養鶏場の「くがにたまご」を使っています」
失敗ではなく「勉強」
——面白い料理のアイデアは自然と生まれてくるんですか。
「物流会社に長年勤務していたので、ロングセラー商品でもちょっとずつパッケージをリニューアルしているのを間近で見ていました。『パッケージを変えたら、売れなくなるんじゃない?』と心配もしたんですけど、やっぱり変えた後の方が売れ行きがいいんですよね。『パッケージはどういう見せ方がいいのか』『こういうデザインが人を引きつけるのか』を自然と学んでいたんだと思います」
「人通りが多い国際通りなどを歩きながら『あ、今、こういうのが流行っているんだ』『今、みんな、こういうのを食べているんだ』と、人が食べているものをチラチラ見ています(笑)。海外や県外で流行っている料理が時間差で沖縄で流行ることがあるので、向こうで流行っている料理をいつもリサーチして。新しい料理器具を取り寄せては、その器具の前に立って『さぁ、これで俺に何ができる?』って(笑)」
——ヒット商品の裏で、たくさん挑戦して、たくさん失敗してもいるということですか。
「失敗半分、成功半分ですかね。ただ、僕、どれも失敗と思っていないのかもしれません。『あ、これもダメだったか』とはなるけど、勉強になるので失敗とは思っていないのかな。それで、いつも『次、何をやろうかな』って考えています。今、面白そうだなと思っているのはたい焼きパフェ。え、知りません?検索してみてください、かわいいですよ(笑)。僕、料理を食べたときのお客さんの笑顔が見たいんですよ。次の料理も楽しみにしていてくださいね」
くぇーぶータイム
見た目のインパクトはすごいけど、正直、イイダコ固いんじゃないの?(不安)それではいただきます!ぱくっ。外カリッ、中トロ。タコ、柔らか〜!そして、生地もダシが利いていて、おいひ〜!え、ソースも3種類あるんですか。もずくのとろみがタコ焼きによく絡みます。かつおダシ系にポン酢系、島とうがらしを使ったピリ辛系で「味変」し放題じゃないですか〜!”ばんない”行けますね。もう1パックお願いします!
沖縄イイダコ屋のタコ焼きは1パック5個入り(700円・税込)。うるま市の太もずくを使ったばんないソース(480円・税込)も各種販売しています。
編注:「くぇーぶー」は沖縄の言葉で「食べ物にありつく運」を意味します。
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