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沖縄古民家「上江門そば」沖縄的時空間の中ですする麺とスープはひと味違う。歴史と文化とともに味わう一杯(八重瀬町)

初めて訪れるのにどこか懐かしさを感じる沖縄昔ながらの古民家で、周囲とは違った時間の流れを感じながら沖縄そばをゆっくりと楽しめる。「上江門そば」(八重瀬町)はそんな場所だ。
300年の歴史があるという建物を改装した店舗、そしてこだわりと気持ちが詰まった沖縄そば味わいについて紹介していこう。

目次
ゆったりと落ち着ける「上江門そば」の空間

上江門そばは八重瀬町安里集落の少し外れに位置する。民家が密集するエリアから、畑や緑の割合が多くなる風景に差し掛かると、敷地面積の広い店舗が現れる(駐車場もかなりのスペースがあるので、車で行っても駐車の心配が不要なのはありがたい)。
駐車場側から入店すると、テーブルも多く飲食スペースもかなり大きく中庭も広がっていることが分かり、のんびり過ごせそうな雰囲気が漂っているのを感じる。
「そばやジューシーなどのメニュー全部にこだわっているのはもちろん、ゆったりとした時間を過ごして落ち着けるような場所を作るということにも同じくらい力を注いでいます」と、オーナーの上門史弥さんは語る。
建物や立地の魅力はほかにもたくさんあるが、そちらはちょっと後にまわして、何はなくとも先ずはそばからいってみよう。

鰹、味噌、醤油の3種から選べるスープ

上江門そばの特徴のひとつは、スープの味を選べることだろう。多くの沖縄そば屋では基本的にスープは1種類で、麺やその上に乗る具材でバリエーションをつけることはあるが、スープに選択肢を設けることはそんなに多くはない。
選べるスープは「鰹」「味噌」「醤油」。普段食べている、いわゆる沖縄そばのイメージに最も近いのは鰹だろう。沖縄そばは豚肉の出汁をベースにしつつ、鰹をどれくらいの配分で味を決めるかというパターンが多く、その塩梅やほかの出汁を加えるかどうかで個性が分かれていく。
今回食した鰹味のスープは、厳選した鰹節をたっぷりと使用しているということもあり、ガツンと鰹が香りつつ、しっかりとしたボディ感(コク、芯の太さ)がある。それでいて、クリアですっきりとした後味になっている。
「醤油と味噌もベースは鰹の出汁で仕上げています。味噌は数種類をブレンドしたものを使っていて、すっきりはしていますがクセになる味わい。そして醤油は椎茸と野菜を使用した自家製タレを効かせつつ、あっさりとした味になってます」(上門さん)
「上江門そば」のオリジナル麺でこだわったのは“コシ”

歯応えや小麦の風味などにフォーカスして特注した麺は、沖縄そばとしてはオーソドックスなゆで麺製法で、少し硬めでコシがあって噛み締めるとプツプツと切れていく感触も楽しめる。
「麺はオリジナルで、配合なども自分たちで決めています。時間が経ってしまってもしっかりとしたコシがあるのが特徴だと思います」という上門さんの言葉通り、噛み応えも食べ応えもあるため、すする度にどんどん満足感が上がっていくのを体感できるはずだ。
具材の肉は軟骨ソーキ(軟骨を含むあばら肉)と三枚肉(皮付きのバラ肉)。この2種類が全ての味のそばに乗っている。両方とも肉はハシでほろほろと割くことができて、少しあじくーたー(味濃いめ)なので、麺と一緒に食べると口の中でベストな状態になる。
「肉もうちの売りの1つです。1日中ずっとひたすら煮込みまくってますよ(笑)だから、味がしっかりついていて、とても柔らかいんです」(上門さん)

沖縄そばには欠かせないジューシーは、肉と椎茸がゴロゴロ入っている具だくさんタイプだ。こちらにも鰹出汁を使用して炊き上げており、力強い味わいに仕上がっている。そばの途中で一口食べると、鰹の味わいが通じ合った後、ジューシーの米やニンジンの甘さが際立ち、それを肉と椎茸の出汁感が下支えする。
食べ合わせが心地よくて、麺+米という“炭水化物祭り”状態にも関わらず、このセットをペロリと平らげてしまうことに抗うことはできないはずだ。
八重瀬町文化財指定の建物、立派なガジュマルが醸し出す沖縄空間


家屋の中を見渡してみると、かなり大きな沖縄スタイルの仏壇が目に入る。今も上門家が現役で使用しているとのことで、この存在感が醸し出す沖縄的な空気は非常に大きい。また、柱や天井をよく見ると、あちこちに木材がえぐられたような傷痕がある。これは沖縄戦の時に被弾した銃痕だという。

外に出ると、母屋と同じかそれ以上の時間を経て育ち、そしてこの場所を見守ってきた大きなガジュマルがあり、まるでキジムナー(沖縄の妖怪)が住み着いていそうな佇まいで鎮座している。そのすぐそばにある水場からは、落ち着きをもたらす優しい水の音が響く。
さらに、店舗家屋としての正面(正門)側にはヒンプン(外からの目隠し兼魔除け)が設置され、防風林でもあるフクギも植え付けられていて、琉球石灰岩の石垣も合わせたその景観には、少しばかりタイムスリップしたかのような錯覚を覚えるほどだ。
ちなみに上江門そばの店舗となっているこの建造物は、八重瀬町の指定文化財として登録されている。
敷地内にある看板や先の銃痕の側にある案内板のQRコードを読み込めば、建物や沖縄の伝統的な文化・風習についての詳しい説明を読めるようになっているので、そばを待つ間、もしくは食後に腹ごなしで敷地内を歩きながら歴史に触れるのも一興だろう。
沖縄芸人のパッション屋良さんも豪快に食す

実は「上江門そば」は、沖縄テレビ(OTV 沖縄県内8ch)の新番組「パッション法律GYM所 なにそ~れ」の初回ロケ地となっている。
番組内では、沖縄そばの紹介はできてこないかもしれないが、配信限定のSNSではオフショットとして、食レポ動画なども5/7(水)11:25以降に配信予定!
「上江門そば」が気になる方はこちらもご覧になって頂いきたい。

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