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真栄城 潤一

真栄城 潤一

「沖縄戦の絵」に命の尊さを学ぶ 沖縄創価学会が実践し続ける沖縄戦継承・平和発信

「沖縄戦の絵」に命の尊さを学ぶ 沖縄創価学会が実践し続ける沖縄戦継承・平和発信

沖縄戦から80年が経過する。時を経るごとに細かな歴史や戦争体験の記憶の継承が年々困難さを増している中、沖縄創価学会は平和学習用の「沖縄戦の絵」パネル貸出や紙芝居の作成、さらにかつての米軍ミサイル発射基地の公開など、さまざまな平和推進事業に取り組んでいる。

戦争の記憶をたどって体験者が描いた絵が表現するもの

「沖縄戦の絵」に命の尊さを学ぶ 沖縄創価学会が実践し続ける沖縄戦継承・平和発信
「沖縄戦の絵」パネル①

沖縄創価学会が小中学校向けに貸出を行なっているパネルの「沖縄戦の絵」は、戦争体験者が自ら描いたもの。記録として残っている写真のほとんどが“米軍視点”のため、そうではない沖縄の住民の目線から見た当時の情景を後世に残すことを目的としている。絵の収集は1981年に始められ、700枚lを超える絵が集められた。

空に浮かぶ花火のような光の下、壊れた橋の側で頭に荷物を乗せて川を渡る避難者たち。燃え上がる家屋と日の丸が記された戦闘機。農道を進む兵隊の列。無造作に並べられ、赤く染められた人体…。描かれた絵は、抽象的なものから具体的なものまで表現に幅があるものの、写真が伝える生々しさとはまた違った別の迫真性を感じられる。

思い出すことさえためらわれるような辛く苦しい記憶をたどって描かれたこれらの絵には、描いた人たちそれぞれのたくさんの思念が渦巻いている。そして、共通して最も強く響いているのは「二度と戦争をしてはいけない」という思いだろう。

自分の住む地域の絵でより身近さを感じて学ぶ

「沖縄戦の絵」に命の尊さを学ぶ 沖縄創価学会が実践し続ける沖縄戦継承・平和発信
「沖縄戦の絵」に命の尊さを学ぶ 沖縄創価学会が実践し続ける沖縄戦継承・平和発信
「沖縄戦の絵」パネル②

パネルの貸し出しは2005年頃から行われていたが、平和推進部が設置されてからは発信にも力を入れるようになり、毎年20校程度だった貸し出し先の学校が今年は40校以上に増えている。
そんな中、平和学習に活用している教員から「子どもたちにとって戦争は遠い存在なので、自分たちの住む地域の絵があればより身近に感じられる」という要望を受け、今年は新たに県内10箇所(※)の地域別に分類したパネルを制作した。

※県内10地域…1.那覇市編 、2.糸満市編、 3 南部編(豊見城市、南城市、南風原町、八重瀬町、与那原町、糸満市)、4. 中部編(浦添市、宜野湾市、西原町、北谷町、沖縄市、うるま市、嘉手納町、読谷村)、5.金武町・宜野座村・恩納村編、6.名護市編、7.本部町・今仁 村編、8.国頭村・大宜味村・東村編、9.伊江島編、10.離島編

また、パネルに関連して沖縄戦の絵を描いた仲程シゲさんの作品を基にした紙芝居も貸し出している。この紙芝居は創価学会青年部が仲程さんから聞き取った体験談をもとに、シナリオと絵を作成 。監修は石原昌家さんが務めており、時代考証も経た上で忠実性も重視した。

パネルをみる平和推進部のメンバー

創価学会の平和活動は、仏教の経典『法華経』に説かれている「生命の尊厳」と「生命の共生」という哲学を根本としている。生命尊厳とは、全ての生命が最高に尊いものであり、無限の可能性を秘めているという考えだ。
この理念を現代的に表現したのが「人間革命」という言葉で、池田大作名誉会長が執筆を開始した小説『人間革命』は「社会を変革するためには、まず人間の心から変わっていかないといけない」という思想を基にしている。

沖縄創価学会の沖縄戦継承も含む平和発信事業は、池田名誉会長が1960年に初めて沖縄を訪れ、南部戦跡を見学したことが大きな1つのきっかけとしてある。沖縄戦の悲惨な爪痕を目の当たりにした数年後、小説『人間革命』は沖縄の地で執筆が開始された。その冒頭の一節は「戦争ほど残酷なものはない。戦争ほど悲惨なものはない」という言葉から始まっている。

米軍核ミサイル基地を平和の発信地に

「沖縄戦の絵」に命の尊さを学ぶ 沖縄創価学会が実践し続ける沖縄戦継承・平和発信

恩納村にある創価学会沖縄研修道場は、かつての冷戦時に米軍「核ミサイルメースB基地」だった場所に建設され、現在は平和発信の拠点に転換した施設だ。今年3月にリニューアルされ、以前は見学できなかった当時のミサイル発射口が見学可能になったほか、発射口内に設置された大型スクリーンで沖縄戦や冷戦の歴史を学ぶことができる映像シアターが常設されている。さらに、沖縄戦の絵も常設展示されおり、いつでも見学が可能になった。

また、6月13日から同月末まで、那覇市泉崎の琉球新報本社1階で、地域別の表記もプリントしてリニューアルしたパネルの展示を開催している(6/30まで)。

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