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ジャンルも国も越境する料理と酒、そして人が交わる唯一無二の場所 宮古の良い夜を味わえるワインバー「ガリンペイロ」(宮古島)

雑然とした中にえも言われぬ心地よさを感じながら、気の利いたつまみを食し、酒のグラスを傾けられる「ガリンペイロ」。
1軒目としてガッツリご飯を食べながらの食べ飲みでも、2軒目以降のお酒メインのバー利用でもフラリと寄れるこの店は、宮古島の繁華街からほんの少しだけ外れた場所にある。ナチュラルワインやビール、最近力を入れているラムに合わせて、エスニックフードや、宮古島の素材を使ったホットサンド、そして背徳感を覚えつつも手が止まらなくなる夜中のナポリタンも楽しめる。

目次
異国に思いを馳せられる食べ物たち

「フードは自分の興味があるもの、好きなものでエスニックな感じが多いんですけど。自分が食べて美味しかったものから、行ったことない国の食べたことのない想像で作ったものもあります(笑)お料理を通して、海外に思いを馳せるのも良いじゃないですか」
そう語る砂田さんの言葉通り、ガリンペイロのメニューはグローバルに多彩だ。

ざっと見てみると、チリコンカン(メキシコ)、ケバブ(中東地域)、ラープ・ガイ(タイ)、鶏肉のフォー(ベトナム)、豚とアサリのアレンテージョ風(ポルトガル)……このほかにもまだまだある上、季節や時期によって細かく変化していくので、行くたびに新メニューを味わうのも楽しみになる。
おつまみにも空腹にもいける良い塩梅の夜サンドイッチ

そんな中でレギュラーメニューにラインナップしているキューバサンド(アメリカ)は、ちょっとしたおつまみとしても、そして空腹の時の主食としてもどちらでもいける魅力的な一品で、夜にサンドイッチを食べることの何とも言えない良さを感じさせてくれる。
しっかりとした肉の味を感じられるローストポークにまろやかなチーズが絡まり、アクセントとなるピクルスが合流。全体的にちょっと塩っぱ目の絶妙な塩加減は食欲も刺激する上、酒も進む。
サンドイッチをかじりながらビールをゴクゴクと飲むのも良いし、ラムのソーダ割りでいくのも良し。もちろんスパークリング・ワインも合わないはずがない。

サンドつながりで、伊良部島特産のなまり節(カツオを茹でて燻製にしたもので、表面は香ばしく中身はしっとりしている)を使ったなまり節チーズサンドにも触れておきたい。
なまり節の香ばしい燻製と潮の香りとチーズが合わされば、美味くないわけがない。フレッシュトマトで酸味と爽やかさをプラスすれば、食欲も刺激する上、酒も進む。サンドイッチをかじりながらビールを……(以下同文)。

とりあえず何かつまみたい時や、どれを食べるか迷った時にはひとまずつまみ盛りを。色んな味をつっつきながら、何を飲むか、何を食べるかメニューをゆっくりと吟味するのもまた楽しみの1つ。
気に入った味に類するものや、あるいは全く違った方向性のメニューを追加でオーダーするのもいい。砂田さんとの会話を楽しみながら、自分の気分に合わせたおすすめを聞いてみるのもいいだろう。

夜のナポリタンは、ケチャップが効いた濃い目の味わいがクセになる。数件の店をまわってハシゴ酒をした後、そんなにお腹が空いていなくても、オーダーしたらなぜかついつい食べてしまえる。そして皿が空になっていることに気づくのである。〆に食べる人も多い、魅惑の一品だ。
宮古島の気候・風土にぴったりなラムがイチ推し

ガリンペイロはナチュラルワインが飲めるワインバーとしての顔もあるが、最近はラムにも力を入れている。
ひと言で「ラム」と言ってもその種類は多種多様で、樽で熟成させていないホワイトラム、3年未満熟成させたゴールドラム、3年以上熟成したダークラム、そしてフルーツやハーブ、香辛料などを漬け込んだスパイスドラムやラムリキュールなど、それぞれの味わいは全く違う。
さらにストレートやロック、ソーダ割り、トニック割りなど、飲み方でも口当たりや印象が変わり、気分やシーンに合わせて楽しみ方がいくらでもある。

「ラムは宮古で作ったものもあるので、“文脈”も踏まえて飲んでみると味わい深いんですよ。それと『LAODI(ラオディ)』という、ラオスで日本人の方が作ってるボトルが、すごく野性味があって繊細で、とっても面白い。気候や風土的にも、宮古で飲むのが合ってると感じます」
入り口に近いカウンター席に座ると、目の前にたくさんのラムが並ぶ。目移りしてどれを選んでいいか分からなくなったら、砂田さんに味の違いや傾向を聞いてみるのも良いが、自分の直感を信じて目についたラベルのボトルをジャケ買いならぬ“ジャケ飲み”してみても良いだろう。そうやって一期一会の酒の味に出会うのもこういう店での楽しみの1つだ。
どんな人でも安心できる「セーフプレイス」として

店内では馴染みの常連客たちが和やかに会話していたり、1人の時間を楽しむ人もいたり、近隣の飲食店のスタッフたちが仕事終わりで飲みに来て談笑していたり、さらにはそこに偶然迷い込んだ(?)初めての訪問者たちも交じり合って、夜な夜な賑やかなセッションが繰り広げられている。
店主の砂田文生さんが、ガリンペイロという店を営む上で大切にしていることが2つある。1つは「セーフプレイス」であることだ。

「特にマイノリティと呼ばれる人たちや、世の中に居心地の悪さを感じている人たちのセーフティースペースという意味です。国籍、人種、ジェンダー、障害とか、他にも色々とあると思うんですけど、どんな方でも安全にゆっくりできる場所というのが、自分のお店のありたいと思う形です」
砂田さんのこの言葉と考え方を示すように、店先にはレインボーフラッグが掲げられている。その様子を見かけて入店してくる人も時折目にする。

そしてもう1つは「ブリコラージュ」という言葉で表される概念で、「ありあわせの道具や素材を用いて、自分の手でモノ作りをする」ということ。
「1つの完成形を目指すというよりも、ワインにしろ、食べ物にしろ、お客さんにしろ、スタッフにしろ、今あるもので面白いものを、居心地の良い空間を作り出すという考え方をしています。その場で偶発的に生み出されるものを大事にしたいんですよね」
宮古島という場の魅力

店を営んで15年目になる砂田さんは、宮古島の面白さについて「宮古島の人たちや自分みたいに移り住んできた人、観光客たちが必ずしも混ざり合わずに、“サラダボウル”みたいな状態にあること」だと話す。さらに、近年はそこにインバウンドの外国人たちや、移住してきた外国人たちも加わっている。
「サラダボウルの“具材”が増えると、それはそれで楽しみなんですよ。今みたいな状況を面白がるようにしたいなと思っているし、宮古島の人たちはそうする度量があると感じています」
ここで言う「サラダボウル」とは、様々な野菜(=具材)が1つの容器(=ボウル)に混ざって入れられていながら、それぞれの野菜の色や形がきちんと残っていて、素材の存在感と持ち味が活かされている状態を意味する。
転じて、宮古島では島内外の人たちが交差し混じり合っていると同時に、それぞれの人たちが互いに個性や文化を尊重し合いながら1つの島にいて、ともに生活を営み続けているということだ。

宮古島はコロナ禍前にも、そして現在もいわゆる「宮古島バブル」と呼ばれる現象にさらされ、かなり短いスパンで風景が目まぐるしく変わっている。
その中で必要なのは、土地に暮らす人たちにとっても、そして通り過ぎていく人たちにとっても、自分の現在地を見失わないようにきちんと落ち着いて話ができる錨(いかり)のような場所、すなわち「セーフプレイス」だ。
「言われて1番嬉しいのは『居心地が良かった』とか『長居しちゃった』とか、そんな言葉なんです。日常だけど、その中でも肩肘を張らない程度に特別な感じの店でありたいんですよね」と微笑む砂田さん。
実は、そんな店の居心地の良さの一端を現地に行かずとも味わえるコンテンツがある。砂田さんと、朝の時間帯にガリンペイロで間借り営業をしているモーニングスタンド「エルドラド」の店主・剥岩元気さんの2人がMCを務めるポッドキャスト番組「ガリンペイロのゴールデンナゲットアワー」だ(Spotifyで無料配信中)。
2人のリズム的にも内容的にも軽快な掛け合いは、カウンターに座ると自然と聞こえてくる店内での会話そのもので、ディープなガリンペイロファンからは「完全に店にいる気持ちになれる」との評判も聞こえてくる。1度店を訪れて恋しくなってきたら、再生ボタンをタップするといい。
ガリンペイロでは今夜もとりとめのない話題がカウンター越し飛び交い、その声に乾杯の音が重なって、色んな人たちの落ち着ける空間(=セーフプレイス)が作り出されている。
Information

- 酒と旅 ガリンペイロ
- 住所
- 〒906-0012
沖縄県宮古島市平良西里567 - 電話番号
- 0980-72-4532
- 営業時間
- 18〜25時
- 定休日
- 日曜日
- クレジットカード
- 可
- SNSのURL
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