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沖縄の定番観光に飽きたらコレ!琉球王国のルーツ・南城市佐敷のディープスポットを巡る「佐敷まーい」ARスタンプラリー
琉球王国の始祖・尚巴志王ゆかりの地である南城市佐敷を舞台に、歴史と文化を体感する観光ガイド「佐敷まーい」が始まっている。
「まーい」とは、うちなーぐち(沖縄言葉)で「まわる、めぐる」ということを意味しており、直訳すると「佐敷めぐり」。佐敷まーいでは、地域に点在する尚巴志王にゆかりあるスポットをめぐることで、体を動かして歴史や文化を感じられるような観光サービスが提供されている。
このプロジェクトではVRやARといったデジタル技術を導入することで、“体験型観光の拡張“に取り組んでいることも試みの1つとして注目しておきたい。
今回はARを活用し、ややディープなスポットも組み込まれた「冒険スタンプラリー」について、実際に9ヶ所全てに足を運んだ体験を踏まえて紹介していこう。
目次
スポットに近づくとARキャラクターが登場、解説を聞ける
このスタンプラリーでは、佐敷まーいのWEBページや各スポットに設置されているQRコードにスマートフォンでアクセスし、地図上に示される場所に近づけばAR体験を楽しめる。
画面をタップすると、3Dの南城市のゆるキャラ「なんじぃ」が現れ、その側でOTV(沖縄テレビ)の後間秋穂アナウンサーがスポットについての解説を始める。画面上の2人(?)のちょっとしたやりとりを横目に、知識と情報を得ながら周囲の風景を見渡せば、いつもと少し違った観光体験ができるはずだ。
01. がんじゅう駅
スタンプラリーの“始まりの地”である「がんじゅう駅・南城」(体験滞在交流センター)では、南城市のさまざまなスポットを紹介するパネル展示や琉装(琉球王国時代の衣装)体験、聖地「斎場御嶽」についての常設展示など、たくさんの情報を得ることができる場所だ。
すぐそばにある「地域物産館」では、文字通り地域の特産品を中心に、食べ物から土産物まで沖縄に関する色々なグッズも取り扱っている。
ちなみに佐敷まーいに関連して、がんじゅう駅にはVR体験ブースも設置されているので、旅の始めに見ておくといいかもしれない。
02.佐敷上グスク
ここからは「尚巴志王ゆかりの地」が2ヶ所続く。尚巴志王は1429年に北山・中山・南山の三山を統一して琉球国を築いた国王で、外交や貿易を通じて国に繁栄をもたらし、政治・文化の基盤を整備した琉球史における重要人物の1人。
佐敷はそんな尚巴志王が生まれ育った地であり、その歴史を物語る場所があちこちにある。その中の1つが「佐敷上グスク」。「佐敷上」は「さしきうぃ」と読み、ここは尚巴志王とその父親・尚思紹王の居城跡だ。
少し開けた広場には樹齢を感じさせるガジュマルや沖縄では少し珍しい竹の姿もあった。宮にいたる少し長めの階段を登る途中にも遺構があり、ふらふらと寄り道しながらゆっくり見回ってみるのもいいだろう。
03.苗代殿・つきしろの岩
「苗代殿」は「ナーシルドゥン」と読み、苗代は佐敷の小字名(一区画の名称)。この場所は聖域を前にして拝むための「拝所(はいじょ、ウガンジュ)」で、供物を捧げ、琉球王国時代の公的な女性の祭司である「ノロ」によって祭祀が執り行われていた聖域だった。
そのすぐ近くにある「つきしろの岩」には、尚巴志の誕生にまつわるエピソードが。これは現地に行って、後間さんの声で聞いてほしい。
ちなみにこのスポットは森の中にあって、少々ワイルドな坂道を進むことになるので、虫除け対策や暑さ対策を十分にしておくのが望ましい。
04.石畳道
ここからは南城市にある集落「小谷(おこく)」にある4ヶ所のスポットが連なる。かつてはバーキ(竹細工)の職人が多く住んでおり、工芸の地域として栄えていたという。
事前予約をすれば現地のガイドと集落内を歩く「小谷(ウクク)まーい」で、さらにディープな歴史を知ることも可能だ。
石畳の道は琉球王国時代から住民たちを支えてきた生活の道。戦前までは集落の中に多くの石畳道があったが、車が普及したこともあり、現在では状態良く残っているのはこの場所のみ。
コンパクトな長さではあるものの、琉球王国時代の人々が踏みしめていたという時間の積み重ねも感じながらゆっくりと歩いてみると味わい深いはず。
05.上の井
上の井は「ウィーヌカー」と読み、集落の南にある井戸。1970年代までは生活用水として使われていたとのこと。
かつて正月用の豚を捌く行事「ウヮークルシー」の際、豚の血を使った肉料理のチーイリチーを供え忘れた祟りとして水が赤く染まったという逸話があり、それからは毎年チーイリチーが捧げられているそう。
この手の逸話は色んなところに色んなパターンで数えきれないほどあり、その土地の文化や暮らしと結びついている。こういうちょっとした物語とその場所の空気感を接続して、色んなことを想像してみるのも楽しい。
06. タカンリ
佐敷一帯と中城湾、そして知念半島まで一望できるスポット。「タカンリ」はうちなーぐちでズバリ「高台」の意味。
かつては若い男女が飲食をともにし、歌い踊って交流する「毛遊び(モーアシビ)」の場でもあり、綱引きの際に東西の威勢をぶつけ合う「ガーエー」も行われていたとのことで、集落の人たちが集う重要な場所だったことがうかがわれる。
07. 下茂の井
読み方は「シムヌカー」。別名「夫婦井(ミートゥガー)」とも呼ばれていて、井戸の前庭中央にある大きな岩を境に、男女で別れて使用していたとされている。
沖縄では井戸は「カー」と呼ばれ、水源として暮らしには欠かすことのできない重要な場所としてあった。こうした水場は信仰の対象となることも多く、水源としては使われずとも残されている所が多い。
規模の大小や造りは地盤・立地などによって違いがあるため、それぞれの地域のカーに訪れて想像できるかつての暮らしぶりの差異に思いを馳せたい。
08.イビの森
ここからの2つは南城市の“自然体験”スポット。
「イビ」はうちなーぐちで聖域、神域のことで、この森には尚巴志の祖父・佐銘川大主(さめがわうふぬし)を祀る「場天御嶽(ばてんうたき)」をはじめとした拝所がいくつも点在している。
このエリアに踏み入れるとまず目につくのは大きなガジュマルの木で、その根元に「いび御嶽」と記された石柱も目に入る。そのほかにも、少し見渡せばいくつかの石柱や石碑が建っており、かなり独特の雰囲気が漂う。
ガジュマル付近にあるぽっかりと浮いたような階段を降りていけば、石畳道も敷かれており、この場所に根付いた歴史と空気を感じることができるはずだ。
09.タク川の御嶽
最後のスポットは落差10mの滝。水の勢いはそこまで強いわけではないが、緑に囲まれた中で響き渡る水音が心地良く、えも言われぬ神聖な空気が漂う。
水源のすぐ近くに御嶽があり、この滝がある新里集落の祭祀が執り行われる聖地であることがわかる。
滝の上部の山中に登っていく道もあり、その先には琉球神話にまつわるスポットもあるとのことだが、筆者が訪れたときには倒木で道が塞がれていたため、進行を断念した。
かつて新里集落ではこの水源から水をひいて、稲作が行われていた時期もあったという。ここまでにいくつかの「水」を巡る場所が出てきたが、沖縄の水場と暮らしや信仰との関係性を考えることは、歴史や文化への見方を深めることにつながるように思えた。
現地でしか感じられないことを感じながら、コンプリートを目指そう
スタンプラリーのスポット計9ヶ所を写真とテキストで紹介してきたが、それぞれの場所に行って、その場所の空気を吸ってしか感じられないことが多々あるので、ARも駆使しながら現地に足を運んでみてほしい。
車で移動して全てのスポットを回ると、3〜4時間ほどの時間がかかった。それぞれの場所に駐車場があるわけではないが、WEBページに駐車場の案内もあるので、地図で確認しながら巡るのがオススメだ。
ちなみにアンケートに答えると特典(オリジナルステッカー等)もゲットできるので、コンプリートを目指してみよう。
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