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当銘 寿夫

当銘 寿夫

「消えた自衛隊誘致」「誰のために島を守る」戦後80年、20年を隔てた2本が投げかけた「問い」

戦後80年 20年を隔てた2本が投げかけた「問い」

2025年12月20日、21日の両日、那覇市の桜坂劇場で「戦後80年 沖縄民放三局合同ドキュメンタリー上映会」が開かれました。初日のトークセッションでは、自衛隊誘致に関する2作品を“地続き”で捉え直す議論が交わされました。司会は元琉球朝日放送アナウンサーでフリーの宮城さつきさん。登壇したのは、琉球放送「消えた自衛隊誘致 ~小さな島の選択~」(2005年)でディレクターを務めた嘉手川由紀子さんと琉球朝日放送「誰のために島を守る ~自衛隊配備 その先に~」(2024年)のディレクター、塚崎昇平さんです。

目次

島嶼の自衛隊誘致をテーマにした二つの作品

戦後80年 20年を隔てた2本が投げかけた「問い」

「消えた自衛隊誘致 ~小さな島の選択~」は、「経済振興」を期待して決議された下地島への自衛隊誘致が、住民側の反発で白紙撤回に至った経緯を追った作品です。嘉手川さんは「説明も聞いていない、あまりにも急だ」という住民の声が引き金になったと振り返りました。

戦後80年 20年を隔てた2本が投げかけた「問い」

もう1本の「誰のために島を守る ~自衛隊配備 その先に~」(2024年)は、南西地域で自衛隊の存在感が増す中、何を「守る」のかを問い直す作品です。トークでは与那国・石垣・宮古へと配備が進んできた流れそのものが話題に上がりました。

20年の時を経た「続編」のよう

戦後80年 20年を隔てた2本が投げかけた「問い」

セッションの冒頭、宮城さんは「どちらも自衛隊を扱ったドキュメンタリー作品だが、両方の作品の間に20年の時間が経っています。お互いの作品を見てどう感じましたか」と問いかけました。
嘉手川さんは「私の作品は、下地島に自衛隊を呼ぼうとした町議会の動きが住民の力で白紙になった記録ですが、もしあの時、誘致されていたら下地島の現在の姿は塚崎さんの番組で紹介される与那国島のようになっていたはず。地続きの続編を見ているようでした」と語りました。当時は今ほど「台湾有事」などの言葉がリアルではなかったと振り返ります。
一方の塚崎さんは「嘉手川さんの作品を、自分の取材の『前史』のように感じました」と答えました。塚崎さんは、国が「防衛上の空白地帯を作らない」という強い意図を持って動いていたことの延長線上に今の南西シフトの流れはあると、あらためて実感したといいます。

合併、交流、振興策──島が迫られた「選択」の構図

戦後80年 20年を隔てた2本が投げかけた「問い」

セッション中盤、宮城さんは2作品の共通点として「離島苦」と経済の問題を挙げ、目の前の課題を解決したい思いが誘致へつながったのではないか、と整理します。
嘉手川さんは、伊良部町の場合は「平成の大合併」という自治体の存続を揺さぶる状況が背景にあったと説明しました。 「自衛隊誘致によって、巨額の振興策が受けられる。市町村合併しなくても、町は存続できる」と指南する人物の存在によって、町議会が誘致決議に至ったプロセスを克明に描き出していました。

戦後80年 20年を隔てた2本が投げかけた「問い」

塚崎さんは「かつて与那国町の住民は台湾との交流による経済振興などを盛り込んだ独自の自立プランを作りましたが、それがうまく進まなかったときに、自衛隊誘致に伴う経済振興が入り込んできました。夢が潰えそうになったところに差し伸べられた手段を、島の人たちがどう受け止めるか。切実な選択の姿がありました」と、島が置かれた厳しい現状を説明しました。
加えて、自立ビジョンが示す「国境に人が住み続けることが、領土を守ることにつながる」という考え方を紹介し、無人化が領土問題の火種になり得るという例示を挙げながら、「自衛隊配備による抑止」以外の選択肢もあらためて提示したかったと語りました。

「判断材料」示す/「善悪」で描かない

戦後80年 20年を隔てた2本が投げかけた「問い」

後半は、事前に寄せられた質問「どんな信念で、どんなメッセージを込めたか」「対立する話題を扱う難しさはあるか」に移ります。
嘉手川さんは、起きた事象を追いかけ、後から関係者にインタビューし、可能な限り「起きたことをそのままストレートに出す」ことを意識したと言います。視聴者が自分の背景に照らして考えられるよう、「材料を提供する」ことが役割だと語りました。
塚崎さんは誘致を進める町長と誘致に反対する議員を、単純な善悪の構図として描かないよう意識したと明かしました。

感情のひだ 描き出せる

戦後80年 20年を隔てた2本が投げかけた「問い」

トークセッションの締めくくりに、宮城氏は今回の合同上映会の意義を改めて強調しました。「ストレートニュースだけでは伝わらない、人々の感情のひだや表情を描き出すのがドキュメンタリーの力です」と語り、映像記録が持つ奥行きについて触れました。
放送局の枠を越えた今回の試みについて、「沖縄の民放3局には、どこか共通して流れる強い思いがあると感じました。これからも、ぜひドキュメンタリー作品を見続けていってほしい」と会場に語りかけました。

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