イベント,沖縄経済
これでいいのか?日本の観光・・・“海外展開”の成功率を上げる。マインドを高めることがスキルになる…「沖縄観光」の現在地とアジアへの展望【Asia Newtravel Bootcamp 2026】
観光やテックビジネスの一線で活躍する企業や事業者、さらに台湾や韓国などアジア各国のスタートアップが集い、ツーリズムについての議論や交流を深めるイベント「Asia Newtravel Bootcamp 2026」が2月6日に那覇市の琉球新報ホールで開催された。
多様な角度からツーリズムのトレンドやビジョンを語るセッションでは、沖縄の主要産業である観光業についての議論を中心に据えながら、様々な分野のスピーカーが沖縄やアジアの可能性について意見を交わした。
目次
インバウンド客が沖縄に求めるものとは
「沖縄はアジアのテストマーケティング市場〜インバウンド消費を起点に“海外展開”の成功率を上げる〜」と題したセッションでは、小売業からリウボウホールディングス代表取締役会長の糸数剛一さん、飲食業からはポーたま株式会社代表取締役の清川勝朗さんが登壇し、それぞれが自身の経験を元にしながら市場の変化や特徴について語った。
糸数さんは沖縄県内のインバウンドに関する状況について「百貨店にインバウンドが最も入っている」として、現状認識を以下のように語った。
「これまでインバウンドは“+α”的な存在でしたが、今では明確にターゲティングして“取りに行く”客層になったと思っています。そのため、どんな商材が求められているのかを分析し、ショップ展開のあり方を大きく変えている途中にあります」
インバウンド向け商品の売れ筋に関しては、来訪当初の時期にはおおまかに日本製の商品が売れていたのに対して、近年はリピーターが増加したことに伴い「沖縄にしかない、クオリティの高いもの」が売れる傾向にあるということにも言及した。
清川さんはポーたまを手がける前に個人で営んでいたコーヒー店で、世界各国の人たちと交流したことが現在につながっていることを話した。
「コーヒーを出していた時に店に来てくれた海外のブロガーが紹介してくれて、その後ポーたまを新規展開する時にも取材してくれたんです。ブログを見た人、それに口コミで来てくれる人たちも増えましたね」
清川さんは台湾でかなりの数のおにぎり屋さんが出店している現状に言及し、そこでもポーク卵おにぎりが人気だということを踏まえ、ポーたまの海外進出について「3月にはソウルでのオープンが決まっており、台湾での展開も話を進めています」と今後の動きについて述べた。
きめ細かなデータを活用して見えてくる沖縄観光
ビッグデータを活用した集客広告やデータ分析を行うVpon JAPAN株式会社九州・沖縄支社長・妻夫木友也さん、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)のマネージャー・坂本麻美さん、そして旅行・観光企業向けにデジタルマーケティングとデータ分析事業手掛けるADARAのAPACシニアセールスディレクター・森下順子さんの3氏は「脱・経験則。最新データで読み解く沖縄観光の現在と伸びしろ」と題して議論をした。
妻夫木さんは2025年に1000万人を超え、過去最多となった沖縄県の入域観光客数について触れながら、沖縄観光の概況について説明。コロナ禍を経てインバウンドが増加しているものの、3/4は国内客という現状を指摘し「今も主力は国内客」とした。
とはいえ、国内線乗り継ぎの外国人客も一定数が訪沖していること、そして外国人の内訳を見ると東アジアに加えて近年はアメリカからの旅行者が増えている傾向もデータで示しながら、沖縄を訪れている外国人観光客の多角化についてあらためて強調した。
※沖縄観光地域カルテ
沖縄を訪れた人流データで見ることができる「おきなわ観光地域カルテ」を提示しながら、人の動きについて話した坂本さんは「切り口を変えることで、立体的に状況を見ていく」ことの重要性を述べた。
例えばプロ野球キャンプシーズンの時期には、沖縄県全体の数字を見ることに加えて、キャンプ地になっている北谷町や宜野座村までフォーカスした人の動きを数字として見ることで、より具体的に、ピンポイントに対応するための施策を練ることも可能になる。
「沖縄全体の大きなまとまりで見ることも重要ですが、どうしてもそれだけではフィットしない分析も出てきます。きめ細かなデータを活用しながら対応をしてほしい」(坂本さん)
森下さんは海外客の内訳や購買データを示し、沖縄へ来訪する旅行者の中では台湾の人たちが圧倒的に多いことを説明した上で「現状を踏まえた上で何に注力していくべきなのか」を選択・決定してビジネスを展開することの重要性を述べた。
「購買データや人流データを掛け合わせることで、それぞれの地域や場所に特化した深掘りをすることができます。受け入れ体制の構築や土産屋さんの在庫管理などにデータを活用してもらいたい」(森下さん)
開業半年、ジャングリア沖縄は今どうなのか?
2025年の沖縄の最大の話題の1つと言っていいジャングリア沖縄については、「開業半年、“スタートアップ”ジャングリア沖縄の挑戦とアジアへの眼差し」と題して、株式会社ジャパンエンターテインメントの取締役副社長・佐藤大介さんがモデレーターの質問に答える形で語った。
開業から半年が経過し、来場者のピークの時間帯やアトラクションの待ち時間など、想定とのズレが生じることも多々ありはしたが、佐藤さんは「キャパシティの生産性を高めることで、待ち時間の大幅短縮も実現した」と説明。PDCAを高速で回すことで日々の課題解決に尽力していることを強調した。
また、人材育成については「マインドを高めること自体がスキルになります」と持論を展開し、ジャングリア沖縄のスタッフ(ナビゲーター)の評価が高いことを紹介しながら、その7割を占める沖縄出身者のホスピタリティを激賞した。
沖縄から海外へ、海外から沖縄への呼び込みについては、海外からの訪日客はまだまだ伸びるという今後の予測に基づき「双方向での展開を考えています」とした。
「沖縄のブランド力を高めて引き入れることで沖縄にも貢献したいし、人材の輩出につても良い人材が集まるシステムを作ってアドバンテーンジをもたらしたいですね。『観光を学ぶなら沖縄で』という環境を作ってから、ジャングリア沖縄の人材育成モデルがアジアへ出ていくという形を目指したい」(佐藤さん)
日本の「観光業界」の問題点と可能性
「これでいいのか?日本の観光。—業界の欠陥とグローバル共創による破壊的想像」という挑発的なタイトルの最後のセッションでは、ベルトラ株式会社の代表取締役社長・二木渉さんとEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社パートナーの平林知高さんが日本の観光業界について、鋭い視点からの意見を交わした。
平林さんは現在の「インバウンドブーム」に対して、率直に「懐疑的です」と難色を示す。「国は6000万人を目指しているとのことですが、まだまだやらなければならないことが山ほどあります。コロナが明けてすぐに海外の人たちが押し寄せてきたので、業界として変わるタイミングを逸してしまったように感じています」
二木さんも概ね同調しつつ「日本の法律には色んなバリアがあります」と指摘。日本の企業への影響を考慮しつつ、以下のように話した。
「覚悟を持った変化を遂げなければ、世界の中での競争力は生まれていきません。今のままの『安全第一主義』である限り、国際的なルールとのギャップは広がっていく一方だと思います」
また、日本でほぼ唯一今後の成長を見込める産業がツーリズムということでも2人は意見の一致を見せ、現状に対して苦言と期待を込めた言葉を残した。
「日本は世界が認めていますが、残念ながらその点を使いこなせていません。日本がこれから成長しつづけるのは、ツーリズム産業ぐらいしかないのが現状です。今後、人口減少も不可逆に進んでいく中で、ツーリズムの話を外国人政策と一緒くたにするのはナンセンスでしょう。豊かになるためには規模を維持しなければならず、そのためには日本の外からきてもらうビジネスが不可欠という状況下で、色んなビジネスを外に持ち出して、取り入れてというサイクルを回していくことで、イニシアティブを獲得してリーダーになることが出来る。その可能性が最もあるのがツーリズム業界だと考えています」(平林さん)
このほかのセッションでは、アジア各国の観光起業家支援、大阪・関西万博、MICE、世界のリゾートホテルのトレンド、グローバル人材になるための留学など、多岐に渡るトピックスが議論されたことに加え、スタートアップピッチも開催された。
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