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松永 多佳倫

松永 多佳倫

『豊臣兄弟』より『新垣兄弟』あっての沖縄尚学・夏の全国制覇だったが、兄弟ゆえに複雑な感情を!?

『豊臣兄弟』より『新垣兄弟』あっての沖縄尚学・夏の全国制覇だったが、兄弟ゆえに複雑な感情を!?

『豊臣兄弟』がネット界隈で盛り上がりを見せているなか、昨年8月の沖縄では『新垣兄弟』が盛り上がりどころか、沖縄県民たちの心をわし掴みにしてたくさんの夢を見させてくれた。まさに、あっぱれじゃ。

新垣瑞稀と有絃。

沖縄尚学の背番号3とひとつ違いの背番号10。
この兄弟がいなかったら間違いなく沖縄尚学の夏の甲子園優勝はありえなかった。

現在、同志社大学野球部所属の兄・瑞稀にあの夏の甲子園のことを尋ねると、「あの夏は暑く長かった。いい思い出です」自分のことはさておき、有絃について熱を込めて話し始める。弟思いのいい兄である。
「有絃が入ったばかりの頃はまだまだでした。もともとコントロールが良くて球速もそこそこ出ていたんですけど、今は球速もあって変化球もあって安定してしっかり試合を作れるピッチャーに成長しつつあります。
ストレートは末吉のほうが速いんですけど、変化球は有絃も負けてないんじゃないかなって思います。小学校の頃から変化球を投げるのが好きでよく投げてましたから」

新垣有絃は、夏の甲子園で彗星の如く出てきたイメージであるが、夏の県大会でもしっか投げており調子は良かった。県大会での調子の良さを甲子園でも持続して結果を出せれたことが、深紅の優勝旗を持ち帰れた要因のひとつであるのは間違いない。
「あんなにやるとは思ってなかったですけど」

瑞稀は、小中学校からずっと一緒に寝食共にやってきた弟・有絃を思えばこその言葉だった。

末吉は打たれても次打者を抑える底力

『豊臣兄弟』より『新垣兄弟』あっての沖縄尚学・夏の全国制覇だったが、兄弟ゆえに複雑な感情を!?

東風平中学3年時には、エース瑞稀を中心とした新垣兄弟、大城卓志の三本柱の力投により全国中学体育大会で軟式野球3位の成績を残す。

最も甲子園に近い高校ということで沖縄尚学に入学し、最初はピッチャーをやっていたが高校1年夏前にコンバートされた。
「バッティングも好きだったのでコンバートされたからには頑張ろうと思った」と切り替え、ピッチャーに対する未練はなかった。

1年が経ち、弟・有絃が入学してきた。そして、MAX145キロの末吉良丞も入ってくるそうそう怪物ぶりを見せつけた。

「もともと中学校からいいのが来るって聞いていて、入ってみたらもう本当にすごかったですね。
入ったときからもうレベルが違くて、さすがに1個下とは思えないくらいすごかったですね。あの夏の甲子園では、末吉は打たれないだろうなっていうのは分かってました。
守ってても安心して見てられます。末吉のすごさは、もちろんボールの威力もそうなんですけど、メンタルの強さ。
打たれてもあんまり気にしてないというか、次のバッターでちゃんと抑えられる力を持っているところです」

ファーストで守っていた兄・瑞稀は全幅の信頼を末吉に寄せることで安心して守備につけたという。

有絃の活躍を見て嫉妬心が……

『豊臣兄弟』より『新垣兄弟』あっての沖縄尚学・夏の全国制覇だったが、兄弟ゆえに複雑な感情を!?

インタビューでも蚊の泣くような声で答え、完全寡黙なイメージの弟・有絃についてプライベートではどうなのか訊いてみた。

「いつもあんな感じですね。自分は普通に喋ったりしますが、有絃は家でもあんまり喋らないです。甲子園のマウンドでは、さすがに緊張してるように見えましたが、まあ、何も考えてなさそうな感じでしたね(笑)」

バッターに悟られないためにもピッチャーはポーカーフェイスというか何を考えているかわからないほうが絶対的に有利。
名投手は皆仏頂面なもんだ。

甲子園の初戦は末吉の剛腕によるピッチングに全国が酔いしれたが、2回戦の鳴門戦以降は有絃の先発、好リリーフが目立ち、一気にシンデレラボーイと駆け上がった。
その活躍具合を見てグラウンドに一緒に立っている兄として何か嫉妬めいたものを感じたかどうかを尋ねてみると、瑞稀は少し躊躇しながら口を開く。
「うーん、甲子園で活躍したときはまあ感じましたけど」

瑞稀は、正直に答えてくれた。
中学のときは同じピッチャー同士で全国3位の結果を残した。しかし次のステージである高校野球では瑞稀はピッチャー失格でコンバートされ、有絃はエース級に上り詰め夏の甲子園優勝の立役者となった。

美しい兄弟愛だけで物語が構成していくのは、観ている側の勝手な都合。まだまだ多感な高校生だからこそ複雑な感情が生じることは極自然。
人間である以上、歪な部分がないと逆に不自然でもあり、またそれが人間らしさでもある。一番いけないのは悪意の連続によって憎悪を宿すことだ。

野球はチームスポーツである以上に、個人にスポットライトが浴びやすい特異な競技。主役が輝けば輝くほど脇役は目立たたずに佇むといったコントラストが明確化される。
一生懸命やったなかでの悔しさはそれだけ真剣にやった証であり、悔しさがある分だけそれだけ強くなれる。アスリートとはそういうものだ。
「大学野球はスピードひとつをとってみても高校とは全然違うので、早く順応して目標に向かってやっていくだけです」

兄弟である以上、比べられるのは当たり前だ。今は弟・有絃に負けない云々よりも名門同志社大学野球部の一員として力のあらん限り切磋琢磨する時期だ。

新垣瑞稀の野球人生のピークはまだまだこれからである。

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