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IT企業「LINE」から転身!沖縄唯一のJクラブの社長に。FC琉球・川崎龍吾 新社長が語る “夢と沖縄の未来”
IT企業「LINE」でプロダクトマネージャーとして8年間を過ごしたのち、サッカービジネスの世界に飛び込んだ。
その決断のきっかけは、緻密なキャリア設計でも、業界人からのスカウトでもない。ふとインターネットでJクラブの求人を検索したこと——それだけだった。
今年2月にFC琉球の社長に就任した川崎龍吾氏にインタビュー、挑戦の軌跡を辿った。
目次
趣味はサッカー観戦 ビジネスへの興味
川崎社長のルーツをたどると、まず出てくるのがサッカー観戦への深い愛着だ。
兄の影響で小学校低学年からボールを蹴り始めたものの、プレーよりもスタンドから見ることのほうが好きだったという川崎少年は、幼いころから家族でJリーグを観にスタジアムに足を運んでいた。
サッカー以外にも学生時代に夢中になったことがある。“ビジネス”だ。
川崎龍吾 社長
「高校が大学の附属の学校で、いわゆる大学の受験勉強をせずに大学にそのまま上がれるという環境だったんです。
時間がある分、高校から、大学でいうサークル活動に近いような取り組みをしていて。そこでビジネスについて学んだり、実践したりという活動をしていました」
高校時代からビジネスを学ぶサークル活動に没頭し、大学では休学してミャンマーへ渡った。
民主化直後のミャンマーで、ウェブサービスを活用した外資企業向け求人紹介事業を立ち上げる。大学の休学も、ミャンマーでの事業もリスクとは思わなかったとあっさり言う。
「他の人がやっていないことだから、おもしろそうだと思って飛び込みましたね」
その感覚は、いまも変わっていない。
IT大手の「LINE」に新卒で入社し、プロダクトマネージャーとして求人サービスや金融サービスなど多様なプロダクトを手がけた。
5年後、10年後を逆算して動くのではなく、そのときどきで一番“びびっ!とくるもの”に全力投球する——それが川崎さんのモットーだった。
「LINEという大きなプラットフォームを活かして、皆さんに使ってもらえるような生活インフラのサービスを作りたい。その想いで仕事をしていましたね」
仕事への情熱を燃やし続ける川崎氏に突如として転機が訪れる。
「初めてのキャリアチェンジ・転職を漠然と考えたんですよね。そうすると、あまり同じIT業界の別の会社に行くイメージがどうしてもわかなくて。
そんなときふと、そういえば自分は子どもの頃からサッカーが好きだったなという事を思い出して。社会人としてサッカービジネスをやらずに人生を終えるのは後悔するだろうなと思って。
その日のうちにサッカークラブの求人を探したんですよ。そのとき偶然、FC琉球の求人が公開されていて、ほんとにそれが縁ですね」
0対1の敗戦が見せてくれたもの
採用の選考中だった2022年。当時J2を舞台に戦っていたFC琉球対横浜FCの一戦を観に行った。スコアは0対1の敗戦。
その年琉球はJ3に降格してしまうシーズンの最中にあり、結果としては惜敗だった。
それでも、スタジアムの雰囲気は忘れられなかった。
「子どもがたくさんいて、関東で見てきたJリーグの試合とはまったく違う、アットホームな雰囲気だったんですよ。」
敗戦の後でさえ、スタジアムが醸し出す人の温かさが「このクラブはおもしろい」という直感を呼び起こした。
データを武器にしてきた人間が、データでは測れない「スタジアムの空気」に心を動かされた。
ITとサッカービジネスの、決定的な違い
FC琉球を運営する琉球フットボール株式会社に入って4年。川崎社長はサッカービジネスの難しさについて率直に語った。
「ITと一番違うのは、データで検証がしづらいといったところがありますね」
ウェブサービスの世界では、ユーザーがどの広告を経由して来訪し、どのページで離脱したかがすべてログデータで可視化される。
意思決定してすぐ実装し、効果を検証する——そのサイクルが回しやすい。
「サッカーの場合、なぜその試合に来ていただいたのか、どうしてFC琉球にハマっていただいたのかというのは、データだけではない。
皆さん一人一人にストーリーがあって、どこで感動していただいたのかというのが千差万別なんですよね」
その難しさの中に「手応え」を感じた瞬間がある。2024年に行われたルヴァンカップのガンバ大阪戦だ。
J1クラブとの公式戦が沖縄で初めて開催されたあの試合、FC琉球は2対1で勝利を収めた。試合前からスタジアムに漂っていた熱気、選手とファンが一体となって作り上げた雰囲気——川崎社長が「負ける気がしなかった」と言い切るほど、それは圧倒的な体験だったという。
あの空気こそ、サッカーが持つ力の本質だろう。
「1万人を動員したい」ホーム開幕戦に懸ける想い
2026年8月29日(土)。FC琉球は「全島サッカー祭り」を開催する。本来のホーム開幕戦が台風で延期となったため、この日が2026-27シーズンのホーム開幕戦となりSC相模原を迎え撃つ。
目標は入場者“1万人”。Jリーグ加盟以降、1万人を超えスタジアムが満員になったのは2019年の1試合のみ。当時は小野伸二さんが所属していた。
コンテンツは盛りだくさん。内閣総理大臣賞を受賞した花火師を招いたスタジアム花火(今回で3回目)は、試合後に選手と来場者が一緒にピッチで鑑賞できる。
ただし、川崎社長が強調するのは「イベントとフットボールは両輪」という点だ。試合前後の賑わいはあくまでも入口に過ぎない。
最後に「この試合、おもしろかった」と感じてもらえる試合を見せること——それがなければ、どれだけ花火が美しくても、リピーターは生まれない。
1万人を動員し最高のスタジアムの雰囲気を作り上げる。そして試合に勝利して最高の一体感を生み出す。全島サッカー祭りをひとつの出発点として26‐27シーズンを走り抜きたいと語る。
「今シーズンの目標はもちろんJ2昇格ですが、それも一つの通過点です。沖縄初のJ1昇格、さらにその先へと導いていけるように、誠心誠意、経営の舵をとっていきます」
週末はJリーグ観戦に夢中になっていた少年が、いま沖縄のJクラブの経営者として同じ問いと向き合っている。
「サッカーは人を元気にできるか」——その答えを、スタジアムの熱狂の中で証明しようとしている。
計画ではなく、直感。データではなく、人の裏にある物語。
沖縄のサッカー界を盛り上げる!新社長の挑戦が始まる。
取材・執筆:植草凜(沖縄テレビアナウンサー)
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