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「ジャックはパワー、僕はスピード」琉球ゴールデンキングスを加速させる川真田紘也、献身的な動きで生む攻撃のリズム
今夏から続いたリハビリ期間を経て、ようやくたどり着いた新天地のホームコート。今シーズン、琉球ゴールデンキングスに加入した川真田紘也が10月19日、沖縄サントリーアリーナで行われた滋賀レイクス戦でホームデビューを飾った。
キングスは99―67で快勝。チームとして今季最多の28アシストを記録するなど、流動的なオフェンスを展開し、通算成績を4勝4敗の五分に戻した。その中で存在感を発揮したのが、身長204cmの日本代表センターである川真田だ。献身的なスクリーンやゴール下への素早いダイブ、泥臭いリバウンドでチームに活力を与えた。
試合後、川真田は印象的なコメントを口にした。
「ジャックと自分の違いはスピードとパワーだと思っています」
自身との比較対象に挙げたのは、同じセンターのジャック・クーリーだ。力強さを武器にチームの屋台骨を支えるクーリーとは異なる持ち味で、キングスのオフェンスに新たなリズムを生み出そうとしている。
負傷離脱を乗り越え、ホームで示した存在価値
川真田は昨季まで長崎ヴェルカに2シーズン所属し、今季、キングスに移籍した。しかし、7月に日本代表として出場した「FIBAバスケットボールワールドカップ2027 アジア地区予選 Window3」の試合中に右手関節舟状骨を骨折。手術を受けて全治3〜4カ月の見込みと発表され、戦列を離れたまま開幕を迎えていた。
復帰を果たしたのは10月16日にアウェーで行われた横浜ビー・コルセアーズ戦。9分3秒という短い出場時間で5得点、6リバウンド、1スティールを記録し、中でもオフェンスリバウンド5本は圧巻だった。
そして迎えたホームデビューの滋賀戦では、出場時間を14分32秒に伸ばした。個人スタッツは3得点、4リバウンド。堅実なスクリーンやボールハンドラーの道を作るクリアアウト、ディフェンスの素早いカバーなど、数字に表れない部分での貢献も光った。
初めてゴールドのユニフォームをまとって沖縄サントリーアリーナのコートに立ち、「ホームとはいえ、少し緊張していた」と振り返る。復帰後の2試合について、「移籍して自分が何をするかを試されるゲームだと思っていました。そういう部分では、いい仕事ができたと思います」と手応えを口にした。
試合に出られない間も、ベンチで試合を見ながら「自分が出たら何をすべきか」「チームの特徴は何か」をじっくりと観察していたという。「この2試合はチームにアジャストできたと思っています」という感覚は、その積み重ねの成果と言える。
スクリーンとダイブで攻撃に流動性を
繰り返しになるが、川真田の真価は得点やリバウンドの数字だけでは測れない。まだ試合勘が戻っていないのか、簡単なパスミスをする場面もあり、アンソニー・マクヘンリーAHCは「試合に慣れるようにこれからトレーニングしていかないといけない」とした一方、「ディフェンス面でチームを助けてくれる選手。クーリーに休みも与えてくれる」と高く評価する。
さらに目を引くのが、ハーフコートオフェンスにおけるスクリーンと、その後の素早い動きだ。
クーリーの体重を2キロ上回る117キロの巨体を生かし、ボールハンドラーにつくディフェンダーをスクリーンで確実に引き離し、相手の守備網にズレを生み出す。そこから一気にスピードを上げてゴールへダイブすることで、自ら得点機会をつくり、周囲の選手が攻めるスペースも広げる。
今シーズン、選手、コーチ陣ともに大きく顔ぶれが変わったキングスは、連係の質を高める途上にあり、ボールの動きが停滞したり、ペイントアタックの頻度が減ったりする場面も多い。その現状にあって、ボールを持たない場面での献身的な働きで、オフェンスの流動性を生み出せる川真田の存在は極めて価値が高い。
その技術を高く評価するのが、滋賀時代に川真田と3シーズンをともに過ごしたガードのキーファー・ラベナだ。「スクリーンの時に相手ディフェンダーがどう動くのかや、自分がスリップするべきなのかなど、状況の読みがすごく上手」と語り、日本代表での経験や本人の努力による成長をたたえる。
さらにラベナは、ボールのキャッチやパスなど細かなボールタッチも向上したと指摘する。川真田自身も「キーファーとプレーするのはやりやすい」と話し、互いの特徴を熟知する間柄だからこそ、ピック&ロールでの連係に手応えを感じている。
マクヘンリーAHCも「彼はすごくいいスクリーナー。アジリティ(俊敏性)やハーフコートでのスピードを生かし、チームにたくさんのアドバンテージをもたらしてくれている」と、攻撃のペースを変える働きに期待を寄せた。
クーリーとの違いを武器に、Bプレミアで勝負
川真田自身、メインのセンターを張るクーリーとの役割の違いを強く自覚している。
「ジャックはあまり足が速くない分、パワーがある。リバウンドだったり、そういう部分の力強さがあると思う。逆に自分は、どれだけチームのオフェンスを速くするかが課題だと思っています」
ここでいう「速さ」は、脚力や走力だけを指すものではない。相手の得点後に素早くボールを出し、前線へ運び、正確なスクリーンから次の攻撃につなげる。センターに求められる一連の動作をいかに速く、無駄なく遂行できるか。川真田は「どれだけ速く正確にできるかを求めています」と強調した。
一方、クーリーとの共通点もある。オフェンスリバウンドだ。マクヘンリーAHCは川真田のリバウンドへの貢献に「正直びっくりしている」と明かし、セカンドチャンスを生み出す働きを評価する。
クーリーを休ませながらインサイドの強度を維持できることは、長いシーズンを戦う上で大きな意味を持つ。大差で勝利したこともあるが、滋賀戦のクーリーの出場時間は24分2秒にとどまり、ここまでの8試合で2番目に少なかった。
今季から始まったBプレミアでは、コート上の外国籍選手数に制限がない「オンザコートフリー」が導入された。日本人ビッグマンにとっては出場時間を獲得するハードルがより高まると見られていたが、現状では、外国籍選手が少ない時間帯にインサイドを支える役割を担い、各チームで存在感を発揮している。
その傾向を念頭に、川真田は「日本人ビッグマンにとってチャンスのあるリーグ」とポジティブに捉え、「そのチャンスを逃さず、一つひとつ積み重ねていって、チームを勝利へ導きたい」と意気込む。ただし、「自分がプレーできるレベルじゃなければ、プレータイムはどんどん減っていく」と危機感も忘れない。
スピード、リバウンド、泥臭いプレー。自らの武器を愚直に磨き、外国籍選手と競いながら勝利に貢献する覚悟だ。
コート内外で愛される存在に
もっとも、川真田の魅力はプレーだけではない。試合後にコート上でマイクを握った際には、持ち前のエンターテイナーぶりを発揮した。開口一番、客席を一周見渡しながら「こんばんは!」の3連発。さらにユーモアたっぷりに言葉を続けた。
「こういう勝った日に飲むお酒は美味しいと思うので、皆さんいっぱい飲んでほしいですけど、平日で明日も仕事があると思うので、あんまり飲み過ぎず、いっぱい飲んで、また2日後に応援お願いします。サンキュー!」
明るく親しみやすいキャラクターは、すでにチームに溶け込んでいる。
マクヘンリーAHCは、ベテランの山内盛久と川真田がチームを盛り上げる存在だと紹介し、「どちらがチームで一番面白いか、いい意味で競い合っているんじゃないかな」と冗談交じりに笑う。試合後にマイクを握る姿は、新たな名物になりそうだ。
沖縄という場所への思いも強い。男子日本代表が48年ぶりに自力で五輪出場権を獲得した「FIBAワールドカップ 2023」で、アカツキジャパンの一員として沖縄の熱気を肌で感じた川真田は、「沖縄のワイワイしている感じが、祭りみたいで好きだった」と振り返る。
キングスからオファーを受けた際は「お、マジか」と胸の高鳴りを感じたという。他チームからも契約の打診を受け、迷った時期もあったが、「(キングスは)ファンの熱量がすごくて、このアリーナでプレーできることは本当に素晴らしいことだと思っています。本当にホームで試合をするのが楽しみです」と語り、沖縄サントリーアリーナの雰囲気も加入を決断する一因となった。
28歳を迎え、プロ選手として脂が乗った時期にある川真田にとって、新天地での挑戦はまだ始まったばかり。泥臭く献身的なプレーでキングスの攻撃を加速させながら、その愛される人柄で沖縄のファンを沸かせていく。
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