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OTV報道部

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戦争体験者が語る平和の大切さを通して慰霊祭の継続や意義を見つめ直す

毎年、慰霊の日6月23日を合わせて執り行われる各地の慰霊祭は、新型コロナウイルスの影響により規模の縮小や中止が続いている。終戦から77年が経過するなかで、記憶の継承や鎮魂の祈りなど慰霊祭に込められた「意義」を今一度、見つめ直す。

「あの悲鳴が頭に浮かぶ」忘れることができない光景

うるま市に住む石川栄喜(93歳)さん。首里高校の前身、県立第一中学校の生徒だった石川さんは1945年の3月、鉄血勤皇隊として16歳で沖縄戦の戦場に動員された。

元鉄血勤皇隊 石川栄喜さん(93歳)
「お前たちは、自分であって自分の体ではないという言葉は、忘れることが出来ないですね」

石川さんは、兵士たちの食料を確保する「炊事班」の一員として砲弾が飛び交う中、畑や民家などから食料を調達するのが主な任務だった。5月に入り、アメリカ軍は旧日本軍が拠点としていた首里に攻め入った。

戦闘の激化により、石川さんの級友たちが次々と犠牲になった。

元鉄血勤皇隊 石川栄喜さん(93歳)
「腸が飛び出す、頭が切断されて脳みそが木の葉っぱに真っ赤染まっているのを見たんですよ。あの悲鳴がみんな頭浮かびますよ」

沖縄戦では19歳以下の少年・少女が、なんら法的な根拠がないまま学徒隊として戦場に動員された。元全学徒の会のまとめによると、学徒隊として動員され犠牲となったのは21の学校で1984人に上る。

南城市に住む瀬底幸子さんも、首里高等女学校の4年生の時に看護隊として動員された。

看護隊として動員された瀬底幸子さん
「(兵隊は)水くれ、痛いよ、とするから。気の毒とも思いませんよ、感情も無し」

5月の中旬には、戦況の悪化に伴い、拠点だったナゲーラ壕(南風原町)から撤退命令が下り、瀬底さんは負傷兵を抱えながら糸満の米須の壕まで避難した。

看護隊として動員された瀬底幸子さん
「(糸満では)入り口・出口塞がれて、あっちからも火炎放射器。こっちから手りゅう弾とか投げられて、出口も亡くなった人でみんな寝ている」

追い詰められ「自決」を覚悟したが、一緒にいた先生に、説得される。

看護隊として動員された瀬底幸子さん
「(手りゅう弾を)1人しか、1個しか持っていなかった。これでみんなは死ねなかった。その中から石川先生を先頭にして、手をつないで壕から出ました」

沖縄戦の組織的戦闘が終わったと言われる6月23日。瀬底さんは捕虜となって生きながらえたが、33人の級友を失った。

慰霊祭に込められた「平和への願い」を忘れ去ってはいけない

生き延びた戦争体験者たちが、犠牲者への鎮魂の祈りと平和への思いを新たにするため、戦後から続けられてきた慰霊祭。2022年の今、新型コロナウイルスの影響で、各地の慰霊祭は中止や規模の縮小を余儀なくされている。

ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界で平和の尊さが叫ばれるなか、瀬底さんや、石川さんは慰霊祭が衰退していかないか懸念している。

看護隊として動員された瀬底幸子さん
「あのニュースを見るとね、自分たちと重なり合うんですよ。世の中が平和であるようにそれを(慰霊祭で)願いたい」

元鉄血勤皇隊 石川栄喜さん(93歳)
「戦争のことが忘れ去られていく。そんな事があってはいけない」

コロナ禍の中で慰霊祭の存続を模索する人がいる。

ずゐせんの塔慰霊祭サポートの会 謝花譲さん
「何とかできそうで安心しました」

首里高等女学校の生徒たちを祀ったずゐせんの塔で、慰霊祭をサポートする謝花謙さん。

ずゐせんの塔慰霊祭サポートの会 謝花譲さん
「皆さん来たい気持ちはあるけど、もう物理的にここに来ることは叶わない」

高齢化が進む戦争体験者や遺族。慰霊祭に参加すること自体が難しくなってきているが、謝花さんは「せめて慰霊の日、当日の様子を見てもらって、もどかしい思いをしている人たちの気持ちを和らげたい」とライブ配信をする予定だ。

ずゐせんの塔慰霊祭サポートの会 謝花譲さん
「毎年のようにここに来ると、塔に向かって手を合わせながら涙を流している。そうした方々の思いを何からの形で、やっぱり繋いでいかないといけないなと思いました」

「平和はお互いが作り上げるもの」

93歳の石川さん、以前は参加していた一中鉄血勤皇隊の慰霊祭には足を運ぶことが難しくなり、今年は参加を見送る予定だ。

養秀同窓会副会長 太田幸子さん
「せめて御霊に対する敬意を払うためにも、何とか形にして何かがあればいいんじゃないかと思いまして」

コロナ禍となった2019年から一中の校章をかたどった和菓子を健児の塔に供えた後、体験者や遺族へ贈り続けている。

養秀同窓会副会長 太田幸子さん
「慰霊祭は無くすものではなくて、ちゃんとやっていきたいと思っています」

戦後77年。体験者の高齢化が進み、戦争の記憶の継承が難しくなっていく中、世代を超えて平和への思いを共有する慰霊祭の「意義」を、今、見つめ直す時が来ている。

――― 今、伝えたいことは何ですか?

元鉄血勤皇隊 石川栄喜さん(93歳)
「平和は…お互いが作り上げるものだ。みなさんが守っていかないと」

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