沖縄経済
小麦価格高騰で高まるコメへの注目度
後間
こんにちは。後間秋穂です。
今回は小麦価格高騰で高まる米への注目度について、野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんに詳しく伺います。よろしくお願いします。
宮里
よろしくお願いします
後間
日本人の主食である米ですが、近年の消費量はどうなっていますか。
宮里
はい。こちらは国民1人当たりの米の年間消費量を示したものです。1962年度をピークに減少傾向が続き、2020年度にはピーク時の半分以下にあたる50.7キロまで減少しています。
また別の調査でも朝食に米を食べる人の割合は28%、パンを食べる人の割合は56%と米離れが進んでいることは明らかです。ただ、米の需要が減少する一方で米を粉にした「米粉」の分野には追い風が吹いています。今回はこの「米粉」の動向を中心にお話ししたいと思います。
後間
確かに、最近スーパーなどで「米粉」の商品をよく見かけるようになりましたよね。なぜ今、人気が高まっているのでしょうか。
宮里
はい。この背景には、小麦の価格が高騰していることが挙げられます。
2021年、世界的に生産量の多いアメリカやカナダで小麦が不作となり、2021年10月の売り渡し価格は19%ほど上昇しました。
さらに、最近では世界有数の小麦の輸出大国、ロシアによるウクライナ侵攻も影響し小麦価格の高騰に拍車がかかっています。
このため、国内の食品メーカーは小麦を使ったパンやお菓子、カップ麺などの値上げに踏み切り、その結果米粉を使った商品が注目されるようになったのです。
後間
そうなんですね。では米粉の需要や生産量はどうなっていますか。
宮里
はい。実は日本では過去にも米粉が注目された時期がありました。2005年に主食用の米が豊作となり、国はその一部を米粉として販売し普及を図りました。このため、一時は需要や生産量は高まりましたが、パンを作っても膨らまないなどの問題があり2014年度以降需要が停滞し、生産量も下げ止まってていました。
しかしその後、国の研究機関の開発や米粉用の製粉機の開発などを経て、パンやケーキなど様々な用途に対応できるようになりました。現在ではモチモチした独特の食感が評価され、需要量は増加傾向となり、生産量も追いついてきました。
後間
米粉の人気の高まりに伴い、米粉ビジネスは大きな転換期を迎えていると思いますが、具体的にはどのような商品がありますか。
宮里
はい。東京の最大手の米卸会社では米粉で作るチーズの本格生産に乗り出しました。植物性でありながら本物のチーズのような味わいで、菜食主義者の多い海外からも注目されています。この会社では月およそ200トンの生産ができる体制を整えていて、まずは冷凍食品メーカーや飲食店チェーン向けに販売を始め、ゆくゆくは消費者に向けても販路を拡大する計画です。
また、2022年3月にはうどんチェーンなどを展開する企業が、米から作った麺とスープを合わせた「ミーシェン」と呼ばれる料理を提供する飲食店を東京にオープンしました。
日本ではなまだなじみのない料理ですが「ミーシェン」は香港では人気の料理で、この企業ではうどん、そば、ラーメンに続く「第4の麺」として定着させていきたい考えです。
後間
米粉の利用が広がれば日本の食料自給率の向上も期待ができますし、大きな可能性を秘めているといえますね。
今回は近年注目される「米」について宮里さんに伺いました。ありがとうございました。
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