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OTV報道部

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台風真下の海の環境はどうなっている? OIST×NTTが行う世界初の試み

地球温暖化が進むと勢力の強いスーパー台風の発生が増加すると予測され、被害を防ぐためにはいかに高い精度で台風を観測出来るかが重要になる。こうした中、台風に向かって突き進む最新の観測ロボットを用いた世界初の試みが沖縄から始まった。

かつてない過酷なミッションに挑むのは「せいうちさん」

2022年7月8日、OIST・沖縄科学技術大学院大学の研究所でお披露目となったのは、観測ロボット「ウェーブグライダー」

GPS、それに風速や湿度、海流を観測する各種センサーを搭載し「せいうちさん」と名付けられた観測ロボットは、これまで誰も経験したことのない過酷なミッションに挑む。

その相手は”台風”だ。

OIST御手洗哲司 准教授
「台風が海に及ぼす作用と、海が台風に及ぼす作用を同時に測る。海岸から離れた外洋で、しかも台風が最も発達した目の付近で大気と海洋の同時観測をしたというのは多分、我々が初めて」

御手洗准教授は県内各地に流れ着き、漁業や観光業に大きな打撃を与えた軽石についてもシミュレーション通じて漂流を予測し情報を発信してきた。

今回、NTTの研究部門と協力しウェーブグライダーを使った台風と海の関係性を知る研究を世界で初めて本格的にスタートさせた。

OIST御手洗哲司 准教授
「(台風は)海洋からエネルギーをもらって発達するわけですよね。一方で、台風は海洋をかき混ぜちゃうので、逆に、かき混ぜちゃうと水温が下がってしまう。自らエネルギー源の供給を減らすという方向に行ってしまう。そういった複雑な過程がまさに台風と海が接するところで起きている」

温暖化で猛烈な台風は増加 重要さを増す台風情報

温暖化による海水温の上昇で今後は猛烈な台風が増加と予測され、これまで以上に台風の情報を集める必要に迫られている。

プロジェクトに携わるNTTの久田正樹さんは、台風の強さなど予測精度向上を目指したいとしている。

NTT宇宙環境エネルギー研究所主幹研究員 久田正樹さん
「社会で大きな影響のある台風ですので、その被害を抑える。未然に防ぐということを目指してやっています」

人工衛星を使い遠隔操作できるウェーブグライダーは、エンジンやモーターを使わず波の力を利用して進み、人間がまず立ち入れない台風の真下の荒れた海で観測を行う。

台風を知ることで 地球のメカニズム解明にもつなげたい

2022年7月11日、ウェーブグライダー「せいうちさん」は大海原を行く旅に出た。

OIST御手洗哲司 准教授
「地球を一つの生命体として考えると、大気とか海洋が果たしている役割は心臓のような、ポンプのような働きをしている。そういったものが、地球温暖化とか気候変動が今起きていて非常に大事な循環システム、ポンプとしての役割がどういうふうに変わっていくかというのを、台風の観測を通じて見たい」

御手洗准教授はこのプロジェクトを通して台風を知り、私たちが住む地球そのもののメカニズムの解明にも役立てて行きたいと意気込んだ。

台風の真下に潜り込み直接データを収集するウェーブグライダー。最新の技術を駆使した研究は、私達の生活を守るために欠かせないシステムとなるかもしれない。

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