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OTV制作部

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琉球トラウマナイト原案・監修の小原猛による沖縄妖怪解説「三線ユーリー」

写真:琉球トラウマナイトの原案・監修を務める小原猛氏。

OKITIVEをご覧のみなさん、こんにちは!琉球トラウマナイトのラジオ番組「かんこどりのなく夜」の桃Dこと比嘉桃子です。(琉球トラウマナイトはテレビ以外にもラジオもあります)琉球トラウマナイトの原案・監修を務める小原猛さんに沖縄の妖怪について伺います。

小原猛(以下、小原)
何でも聞いてください。宜しくお願いします。

―「琉球トラウマナイトレジェンド2022」1本目のドラマに登場する「三線ユーリー」について伺います。これはどういった幽霊でしょうか?

小原
「実は三線ユーリーは辻のジュリ(かつて沖縄の歓楽街に存在した遊女たち)達が深く関わります。『ジュリマジムン』という遊女が化けたマジムンの中の一部を『三線ユーリー』と呼んでいるんです。彼女たちはお客さんの前で芸を披露するために三線や踊りに精通していました。そのジュリが死んだ後に、どこからともなく三線の音色が聞こえたりする時に『三線ユーリーがでた~』となるわけです。
ジュリにはいくつか掟があるんです。ジュリも人ですから、死んだらお墓に入りますよね。でも辻の近くにはジュリの墓は無いんです。入れないわけです。
辻で死んだジュリの亡骸は田舎に帰るのですが、そこでも一族の墓に入れないということで集落の郊外に作られた『ジュリ墓』というお墓に入ります。そこから夜な夜な三線の音色が聞こえてくる話をたくさん聞いた事があります。」

―去年の「琉球トラウマナイト レジェンド2021」でジュリマジムンやりましたが、悲しい話ですね…。ジュリマジムンという大きなくくりがあり、その中の一部が三線ユーリーと呼ばれているんですね。三線ユーリーになるのはやっぱり三線担当だったジュリ…ですか?

小原
「おそらく。三線とか身近だったものには念がうつるといわれてるんです。今ちまたで呪物、呪物と騒がれてますが。あれですね。呪物には大きく2つあって、ひとつは『呪術に使われた人形やほうき』もうひとつは『死んだ人の念が乗り移ったもの』。三線ユーリーの三線は後者の念が乗り移ったものです。前者の呪術に使われたものは、結構コレクターがいたりします。漫画家の水木しげるさんも呪いのお面を集めたりしてましたね。」

―なるほど。仕事道具や肌身離さず付けていた装飾品などは呪物になりやすそうです。三線ユーリーは1人ですか?逆立ち幽霊のようなド級の幽霊が1人いる…という感じですか?

小原
「ん~複数ですね。ジュリマジムンなんだけど、それが三線を持ってたっていう情報が追加されたらそれは『三線ユーリー』になります。今回の『トラウマナイトレジェンド2022』では、南風原の宮平に伝わる話を少し元にしたんだけど。志堅原乃比屋(しけんばるぬひゃー)という南風原のジュリがいて、彼女は三線がうまくて有名だったんですが、そこのお金持ちの客が、『いくら積んでもいいからお前の三線が欲しい』と言って聞かなかったそうなんです。彼女は『私の命よりも大事だから差し上げることはできません』と何度も断ったんだけど彼女は病死してしまう。彼女が亡くなってから三線がお金持ちの手に渡ってしまい、ある日死んだ志堅原乃比屋が化けて出て、『私の三線を返してください…』と言ってお金持ちの前に現れたそうです。腰を抜かしたお金持ちは三線を差し出し、『どうぞこれがあなたの三線です』と言って膝まづくと志堅原乃比屋は消えていった。そういう話が残っています。」

―おお、まさしく怨念。「私の〇〇返して…」というのが幽霊っぽいですね。怖い…。

小原
「先ほど話したように、三線ユーリーはジュリマジムンの一種なんです。ジュリが死んだら亡骸は生まれ故郷に返されます。しかし、マブイはそのまま遊郭に残る場合も多いんです。死後、そのジュリにとって嫌だったお客さんとかお店に来ると、畳と畳の隙間からそのお客さんを引っ張ったりしてたそうです。」

―「手で引っ張る」というのもこれまた幽霊っぽいですが、驚かせようとしてそういうこともするんですね。お客のマブイが落ちてしまいそうな話です。

小原
「他にも、珍しく男性と三線が出てくる話が伝わっています。与那原のチョンナーユーユーという三線の唄者だった男性が亡くなったあと、自分のお墓に現れて、生きてる人に唄の勝負を挑むという話です。生きてる者の唄が下手だとチョンナーユーユーの霊に食べられてしまうという結構怖い話。チョンナーというのは方言で『知念』という意味です。チョンナーユーユーは高音があまり得意ではなかったらしく、ある日勝負を挑んだ男が高音を綺麗に出し、チョンナーユーユーを負かしたというオチです。」

―人間みたいな弱点!そしてまた志堅原乃比屋(しけんばるぬひゃー)と同じく、名前がリズミカルで面白いですね。チョンナーユーユー。トラウマナイトの物語では、三線ユーリーが登場人物をまやーしていく(まどわしていく)んですが三線をもった幽霊というのは沖縄独特だと思いますし、そういった幽霊がいる事も初めて知った方も多いのではないでしょうか。

小原さんありがとうございました!

小原猛(こはらたけし)
1968年京都生まれ。与那原町在住。作家。著者に「琉球怪談」「沖縄怪異譚大全」、ラジオ沖縄「琉球トラウマナイト・かんこどりのなく夜」パーソナリティ。元那覇市若狭公民館勤務。現在、琉球新報小中学生新聞「りゅうPON!」に、「ふしぎうちなーショートショート」連載中。

琉球トラウマナイトレジェンド2022

【番組概要】
人気ホラーシリーズ「琉球トラウマナイト」が今年も放送!
今回放送するのは、沖縄に古くから伝わる昔話や伝承を現代風にドラマ化する「レジェンド」!
今年は、ある家族を中心に全3話の恐怖ドラマを放送!
2022年8月9日(火)よる7時55分より沖縄テレビ8チャンネルにて放送!
暑いこの季節、背筋も凍る恐怖体験をお見逃しなく!

番組情報はこちら

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