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OTV報道部

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国の不作為は許されない早急な法整備を 人体に有害な”永遠の化学物質”の土壌調査に向けて

水道水などから人体に有害なPFAS・有機フッ素化合物が検出されている問題を受け、市民団体が沖縄県内で大規模な血中濃度調査を実施した。これと同時に、健康への影響を分析するため必要とされるのが土壌調査だ。
有識者は「地方自治体が声を挙げ土壌の基準や法整備にむけて国を動かしていく必要がある」と強調している

米軍基地から”有害物質を含む泡”が保育施設へ飛散 砂場の砂はすぐに入れ替え

2020年4月普天間基地から大量に流れ出した泡消火剤。そこに含まれていたのが、発がん性など人体への悪影響が指摘される有機フッ素化合物・PFOS。

事故後、国・県・アメリカ軍によって土壌調査が行われ最も高いところで、アメリカ環境保護庁が地下水を汚染する可能性があるとする値の実に921倍を検出。(1キログラムあたり3万5000ナノグラムEPA新スクリーニング基準1リットルあたり38ナノグラム)

さらに、宜野湾市からの要請を受け、沖縄防衛局は泡が飛散した保育施設の土壌調査を行った結果、131倍の値が検出されたとしてすぐに砂場の砂を入れ替えられた。

「子どもを守るために調査してほしい」

一方、2021年12月明るみに出た事実。それは…普天間基地の消火訓練場周辺の水から国が安全とする値の576倍に当たる汚染物質が検出され、隣接する普天間第二小学校そばの排水管を通って汚染水が放出されていた恐れがあるという事。

不安を募らせた保護者らは小学校のグランドの土壌調査を求め、宜野湾市や県に要請を続けてきた。しかし…

宜野湾市教育委員会 知念春美 教育長(当時)
「(健康への被害は)杞憂だと思います」

県も「国に基準値がない」として調査に否定的な見解を示してきた。

普天間第二小 保護者 具志堅美乃さん
「なんでこんなに危険な物質って言われているのに、大丈夫だよ安心してといえるのかすごく不安でしかないです」

普天間第二小 保護者 与那城千恵美さん
「子どもたちのそばに危険なものがあったら、誰でも守るために調べないとって思うはずなんですよ」

こうした声を受けて土壌調査を行わないとしてきた県は一転、2022年7月12日、玉城知事は…。

玉城知事
「県民の生活環境の保全の観点から県内の土壌汚染の状況を把握するための調査は、必要と考える」

ただ、県は早くても2023年の実施としているため、保護者らが参加する「宜野湾ちゅら水会」は、市教育委員会に調査の許可を求め2022年8月15日にも実施されることになった。

有識者が指摘「土壌と水の両方から人体の影響を分析するべき」

PFOSは飲み水や食品などから体内に取り込まれるほか、大気からも曝露する可能性が指摘されている。国内に基準はないが、アメリカ環境保護庁は2つの値を設けている。一つ目は、地下水を汚染する可能性がある値。これは1キログラムあたり38ナノグラムとされている。2つ目は、直接、土ぼこりなどを口にして健康に影響を及ぼす可能性があるとされる値で、これは3400倍ほど高い13万ナノグラムとされている。

この値について京都大学の原田浩二准教授は「直接、健康に及ぶ影響については評価が定まっていないとした上で土壌と水の両面から人体への影響を分析すべき」としている。

今回の調査について原田浩二准教授は、過去からの汚染の蓄積を知る手がかりになるとして注目すると共に、地下水を汚染する可能性のある値で詳細な調査が必要かどうかを判定するいわゆるスクリーニングレベルを超えた場合、行政による調査の実施が望ましいと強調する。

京都大学環境衛生学 原田准教授
「今回、汚染がスクリーニングレベルを超えたとなればこれは先日、玉城知事が言ったように土壌を含めた広い調査を行っていくきっかけになるだろう」

原田准教授はアメリカでは、2022年5月に地下水を汚染する可能性のある土壌の値が10倍厳しく見直されたとしてこう続けた。

京都大学環境衛生学 原田准教授
先日ですね、(飲料水の)生涯健康勧告値も非常に厳しくなったのに合わせた改定だと考えています

アメリカでは基準値の見直し 日本でも調査に向けて早急な法整備を

2022年6月、衝撃的な数字が発表された。アメリカ環境保護庁は生涯飲み続けても安全とする暫定の値を、水1リットルあたり70ナノグラムとしてきたものを大幅に見直し、ほぼ0に近い値とした。

この数値に当てはめると2021年、県民45万人に供給された北谷町浄水場の水に含まれていたPFASの値は500倍に上ることになる。2022年7月15日、池田副知事は政府に対しアメリカの見直しの背景を調査、分析し国としての対策方針を定めるよう要請するとともに土壌調査のための費用負担を求めた。

2022年、アメリカでは国民の命を守るため除染にむけた法整備が進められようとしていて、それは日本にあるアメリカ軍基地で働くアメリカ国民にも当てはまるとして、PFAS研究の第一人者京都大学の小泉昭夫名誉教授は、今が日本にとってもチャンスだと力を込める。

京都大学 医学研究科 小泉昭夫名誉教授
(米国民を守るため)アメリカ軍基地内の汚染も除去しないといけないという訳ですよね。だから日本の法律も土壌汚染対策法できちっときれいにするんだというふうになれば整合性がとれるわけです。日本に法律がないと、不作為でこのままズルズルいくと日本では(浄化)しなくていいんだってことになるんですよね。そこが一番問題になるところですね

2020年、日本では暫定ではあるが、ようやく飲料水の目標値が定められそれを超える場合には活性炭で除去するなどの対策がとられるようになった。こうしたことを踏まえ、土壌についても基準の策定と早急な法整備が求められている。

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