コラム
ドキュメンタリーの編集現場に潜入!そこには眩しい光景が・・・【平良いずみのよんな~よんな~通信】
今回は、後輩たちがドキュメンタリーを制作する編集室に潜入!
キラキラした夏の2か月間、窓もない編集室に籠って映像と格闘しているのは、二人ともキュートなレディたち。
“編集室にレディが二人並んでいる”
えっ、それがどうした!?って声が聞こえてきそうですが・・・・・・・
何を隠そう、撮影と編集を担う入社3年目の浜田夏海カメラマンは、開局60年あまりの、沖縄テレビ初の女性のカメラマン!こうしてレディが二人並んで編集機と格闘している光景は、私にとって、それはそれは眩しい光景なのです。
ということで、追い込まれている二人をよそにパシャパシャとシャッターを切り、思いっきり邪魔をしたオバちゃん・平良なのでした。
これまで沖縄テレビには、アナウンサーや記者、ディレクターに女性はいましたが、重さ8キロ以上もある撮影機材を担いで駆け回るカメラマンに女性はおらず、待ち望んできた人材でした。
女性カメラマンを待ち望んできた理由
以前、こんなことがありました。
県内の障害者運動を牽引してきた長位鈴子さんを追ったドキュメンタリー『障害者魂!』を制作していた時、日頃、撮影はカメラマンに任せきりの私がたまたまデジカメを手にしていたのを見て、鈴子さんが「これからシャワー浴びるけど、撮る?」と聞いてくださった。
「えぇぇぇ・・・、良いんですか?」
「男性のカメラマンには撮ってほしくないけど、女性のあなたなら良い」と言って、鈴子さんはすぐにお風呂場へ。考える間もなく、後に続いてカメラを回し始めると、緊張で手が震えていました。
生まれつき手足に重い障害のある鈴子さんの横には、女性のヘルパーさん。鈴子さんにして欲しいことを聞きながら服を脱ぐ手伝いや髪を洗う介助をしていきます。
その様子を小刻みに震える手で撮影していた私は、「なぜ、撮らせてもらっているのですか?」と素直に聞いた。
すると鈴子さん「いつも、(仲間を引っ張る)カッコイイ私しか撮っていないでしょ。でも、私はヘルパーの力を借りなければ生活できない。ヘルパーを使いながら生きるって勇気がいる、全部を見せないといけないから。でもその人達がいるから自分達は自立生活が出来て地域の中で生きていける。私達の夢を叶えてくれる人達だから」と。
助けてくれる人への感謝、そして、「助けて」と言えずにいる人へのエールを込めた言葉を口にした鈴子さんは本当に美しく、それを記録できたことで私は胸がいっぱいになりました。
ただ、会社に戻って映像を見返すと、やはり素人も同然の私が撮影した映像はブレブレで、扇風機のノイズにも気づかなかったため(プロのカメラマンはノイズにすぐ気づき対処してくれます)、鈴子さんの声が聞き取りづらいという始末・・・。
女性カメラマンが居てくれれば・・・と地団太を踏んだのでした。
待望の女性カメラマンが映像に刻むのは!?
そして、いま入社3年目の浜田カメラマンと入社5年目の上原麗夏ディレクターが制作しているのは、困窮世帯への食糧支援を続けるゴージャス理枝さんを追ったドキュメンタリー『ゴージャス理枝が行く』。
主人公のゴージャスさんはエステサロンの経営者。忙しい合間を縫って、食べ物の確保すらままならないほど経済的に厳しい家庭に食料を届け続けています。
浜田カメラマンは懸命にその背中を追い、沖縄の女性や子どもたちが置かれた厳しい現実を映し出します。
光熱費の支払いさえままならないシングルマザー、夫に先立たれ5人の子どもを女手ひとつで育てる母親からのSOSを受けてゴージャスさんが駆け付けると、悲嘆に暮れていた女性たちの様子が明らかに変化するのが画面から伝わります。
プライバシー保護のため食料を受け取った女性たちの表情をみることは出来ませんが、それでもなお、ゴージャスさんの笑顔を見て彼女たちが安堵し、心にあたたかな灯がともる瞬間を感じ取ることができる。映像ってすごいなぁ~と改めて。
また、番組ではゴージャスさんの名前に秘められた想い、ゴージャスさんの柔らかな笑顔の奥に、溢れるほどの涙があって、だから深い笑顔になっているということがわかるエピソードを、上原ディレクターが丹念な取材で引き出しています。
こんな時代だからこそ、こんな世の中だからこそ、ご覧いただきたい番組・ドキュメント九州『ゴージャス理枝が行く』は、テレビ西日本で9月12日(月)深夜24時25分~放送。沖縄県内では、9月16日(金)深夜25時55分~放送です。
ナレーターは後間秋穂アナ(台風などで日程が調整できず…小林アナにバトンタッチ!)、プロデューサーは本橋亜希子先輩!と、沖縄テレビの女性パワーを結集してお送りします。ぜひっ!
“らしさ”を大事にできる生きやすい社会を夢見て
話は戻りますが、10年ほど前、鈴子さんが全てをさらけ出してシャワーシーンを撮らせてくださった時のことを今でもよく考えます。
鈴子さんが社会の片隅で「助けて」と言えず苦しむ人たちに向けて伝えたいと全てをさらけ出してくれたあの現場に、女性はどうしても必要不可欠だったと思うと同時に、これまで必要な現場に女性が居なかったために、どれだけの声が埋もれ、必要なところに光が当てられずにきたのだろうと。
普段、仕事をする時は性別を意識することなく現場にいます。でも、どうしても同性でなければ撮れないこと、さらけ出せないこともある。それは性別に限ったことではなく、様々な社会的少数派に言えることだと思います。だからこそ、多様な人材がメディア側の人間にも不可欠だと強く思うのです。
私が入社した20年あまり前には、番組のディレクター、プロデューサー、ナレーター、そしてカメラマンまで全て女性というのは想像すら出来ない圧倒的な男社会だったメディア業界も少しずつ変化しています。
あと20年後、レディたちが編集室に並ぶ光景が珍しくもなんともない当たり前の光景になることを、そして、一人ひとりが“らしさ”を大事にしてますます輝ける、そんな光景を夢想しています。
あわせて読みたい記事