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くらしと経済編集部

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新しい農業の形「水耕栽培」で地球温暖化防止へ

後間
こんにちは。後間秋穂です。土を使わず、養分を溶かした水溶液で植物を育てる水耕栽培。
今回は「地球温暖化防止にも期待される水耕栽培」について、野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんにうかがいます。よろしくお願いします。

宮里
よろしくお願いします。

後間
従来の方法とは違い、土を使わない水耕栽培のメリットは何でしょうか?

宮里
はい。水耕栽培のメリットは特定の作物を同じ場所で長年栽培していると生育が悪くなったり枯れてしまったりする連作(れんさく)障害が起こらないことです。
害虫も増えないので無農薬で栽培できます。
また、除草などの必要がなく作業負担が少ないこと、効率よく栄養を吸収できるため成長が早く収穫量が多くなることもメリットといえます。
さらに屋内でもできる水耕栽培は天候の影響を受けません。
こうしたメリットから、屋内で無農薬野菜を水耕栽培し、大量に生産する「植物工場」が注目されています。

水耕栽培のメリット

後間
そうなんですね。なぜ近年水耕栽培は注目されているんでしょうか。

宮里
はい。国連によりますと世界の人口は2050年にはおよそ97億人に増える見込みで、世界の人口の半数以上が都市部に住むと予測されています。
一方、地球温暖化の影響で高温による生育障害や品質の低下、害虫の増加など農業に与える影響も懸念されています。

そんな中、水耕栽培は食料を安定的に供給でき生産効率を高められることや、都市部など消費地の近くで生産することで輸送コストや輸送に伴う二酸化炭素の排出を抑えられることから注目されているんです。

後間
なるほど。国内で水耕栽培を取り入れている事例はありますか。

宮里
はい。東京の電鉄会社では2014年に都内の線路の高架下に1日あたり400株を生産できる植物工場を開設しました。レタスやベビーリーフ、バジルなどを栽培し、ブランド化して都内のホテルやレストランに販売しています。

また、2021年には大手スーパーA社が都内の店舗に水耕栽培装置を導入し、収穫したレタスをそのまま野菜売り場で販売する取り組みを始めました。

東京都内の都市型農業例

後間
徐々に水耕栽培を導入する動きが広がっているんですね。

宮里
そうなんです。また新たな動きとして、水耕栽培と魚の養殖をかけ合わせ持続可能な農業を実現する「アクアポニックス」という農法が注目されています。

魚の排せつ物を微生物が分解し、植物がそれを栄養として吸収する仕組みで、水はフィルターで浄化され再び水槽に戻ります。
収穫された野菜は有機栽培となるため単価が上がり、養殖した魚も収益源となるなど、ビジネスとしても高い生産性が魅力です。

水耕栽培では、リーフレタスやトマト、イチゴやメロン等幅広い種類の野菜や果物、魚の養殖では、チョウザメやイズミダイなどの食用淡水魚やニシキゴイなどの観賞魚が育てられるため、観光業など既存の事業との相乗効果も期待できます。

SDGsへの関心の高まりなどを受け、世界のアクアポニックス関連市場は2028年には約2400憶円になると予想されていて、国内でも一層の普及に期待したいです。

アクアポニックスの仕組みとメリット

後間
宮里さんにうかがいました。ありがとうございました。

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