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OTV報道部

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首里城火災から3年 「再び朱色を輝かせるために」使命感に燃える漆職人たち

2019年に発生した首里城火災で鮮やかな朱色の城は跡形もなく焼け落ちた。
長年にわたって首里城の漆の塗り替えに携わり、伝統的な朱色をつくってきた漆塗りの職人が再び首里城を甦らせようと動き出している。

漆塗りは“天気”との戦い

眩しいほど鮮やかな朱色に、真っ直ぐな眼差しを向ける漆職人の諸見由則さん。

漆塗りの道に進んで40年あまりの諸見さんは、高校卒業後漆器作りを通して技を磨き続け2006年からは首里城の塗り替え、修復事業に携わってきた。

諸見由則さん
「自然の天気との戦いです。すごく大変なんだよ、本当に大変」

漆は非常に繊細で湿度や気温、風などに状態を左右されやすく、さらに沖縄の強い紫外線を受けると劣化してしまうため扱いがとても難しいという。

伝統継承のため若手職人の育成にも

諸見さんは、現在塗り替えの現場の責任者を務めていて若手職人の育成にも力を入れてきた。

諸見由則さん
「どんどん若い人たちを育成して伝承していかないと、もう私も年なので」

大事に育ててきた後輩が、今では現場をとり仕切る姿を頼もしく感じているようだ。

諸見由則さん
「彼はずっとついてきた」

森田哲也さん
「最初はだいぶ怒られましたけどね、諸見さんは自分の目標みたいな人ですね」

現場の最前線で先頭に立つ森田哲也さん。
漆に惚れてこの道に進み、首里城の塗り替え事業が始まった2006年から諸見さんのもとで漆を塗り始めた。

森田哲也さん
「正直そのときは素人同然だったので、自分ではできると思っていたけど、諸見さんには相当怒られたし。でも、その分いろんなこといっぱい教えてもらったので、僕の中では師匠みたいな存在」

「一瞬で燃えている」「今までに味わったことのない感情だった」

2016年には正殿の塗り替えに着手。

約2年3か月の年月をかけ2018年に全ての工程を終え鮮やかな朱色を甦らせた。
2019年の年明けには正殿裏の御内原エリアも完成し首里城の復元工事全てが完了。

2018年の首里城

その矢先のことだった。

諸見由則さん
「電話が来て。首里城が燃えているよって、急いで向かった」

目に映った景色は…

諸見由則さん
「正殿はそこまで燃えていなかったですね。天井の中が燃えていた。あれは防ぎようがない一瞬でしょ、一瞬で燃えているから、本当にもう、がっかりしちゃって」

森田哲也さん
「一緒に4時半くらいから見ていたんですよ、龍潭の向こうのほうから」

森田哲也さん
「悲しいのは悲しかったですけどもちろん。でもね、今までに味わったことのない感情だった」

長年にわたって塗り続けてきた「巨大な琉球漆器・首里城」は、ほんの数時間で焼け落ちた。

「より質の高い朱色をつくれるように」「今は新しく再建することしか考えていない」

諸見由則さん
「こんなに時間かけて、情熱かけてやったのが一瞬で燃えてしまって、本当にみんなもう唖然してた。ショックっちゃショックだよ。ショックだけどそれだけではもう収まらないから、早めに再建するように向けたほうがいいかなという気もしてきて、みんなに言って今後やろうねってことで」

首里城火災から2022年10月31日で3年。いよいよ2022年11月3日から始まる正殿の再建工事に向けて、諸見さんは着々と準備を進めている。

焼失前までは県外から入荷した漆が使われてきたが、2026年の完成を目指す正殿には県産の原料を用いた漆が使われるため、より質の高い朱色をつくれるよう日々試験を繰り返している。

諸見由則さん
「本当に大変ではあったんだけどもうしょうがないよねって、焼けたのはどうしようもないので、もうあとは今後新しく再建することしか考えていなかったので」

諸見さんは正殿の塗り替えの際漆を紫外線から守るために塗る油を開発。
その油を朱色の顔料と絶妙な割合で混ぜ合わせ黒い漆に重ねて塗るという、より琉球王国時代に近い工程と技法を再現した。

諸見由則さん
「本土にはないですよ。これはここで開発した油だから沖縄仕様ですよ」

さらに、それを機械ではなく丁寧に手作業で濾して不純物を取り除いていく。

「生きがい」“首里城”再建のために魂を燃やす

諸見由則さん
「今後のことを考えたら育成をどうするか、僕ができなくなっても若い人たちが引き継いで、あと5年10年20年30年引き継げるように教えているところ」

諸見由則さん
「(首里城は)沖縄の象徴でもあるし。一日も早く、早めにまたみんなに見てもらいたいなと思っていますよ」

首里城の朱色を再び甦らせる。再建と伝統の継承に魂を燃やしている。

諸見由則さん
「自分としてはもう今後やっていくしかないので、生きがいというか責任かな。使命みたいなものだよ」

2022年11月3日に起工式が行われ、首里城正殿の再建工事が始まる起工式の前には平成の復元の際にも行われた琉球王国時代の伝統行事「木遣行列」も開催される。

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