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OTV報道部

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亡き兄への想いを預かり歌にのせて~名曲「涙そうそう」に込められたもの~【OKINAWA SONG BOOK~沖縄歌集~『涙そうそう・夏川りみ 編』 】

沖縄ソングブック_沖縄歌集

連載企画「OKINAWA SONG BOOK~沖縄歌集~」

沖縄県内のみならず、日本全国で愛される沖縄の歌(ウチナーソング)。 名曲が誕生する背景には、その時々の世相が密接に関係しているといいます。この企画では、誰もが知っている【一曲の沖縄の歌(ウチナーソング)】をテーマに、歌詞に込められた思いや制作秘話などを紹介しています。

2001年にリリースされた夏川りみさんの「涙そうそう」は、ロングセラーとなりミリオンセールスを記録しました。長く愛されていく中で、海外でもカバーされるなど多くの人に愛されてきました。

あらためて街でこの曲の印象を聞くと…
・ゆるやかな感じでいい曲だなって印象。(糸満市60代)
・「思い出」っていうイメージですよね。もう会えない人に対して歌ってる曲なのかな。(宜野湾市20代)
・学校で歌った事がある。やさしい歌って感じ。(那覇市小学生)
・やっぱり両親の事を思い出しますね。優しい両親で、それを思うとやっぱり涙が出てくる。(那覇市70代)

夏川りみさんが一度で聞き惚れた歌

夏川りみさんの代表曲とも言える「涙そうそう」について、りみさんは特別な力を持っていると話します。

夏川りみさん
「やっぱり人の流れが、動きが止まるっていうんですかね。この『涙そうそう』に出会って、人前で歌わせていただいたときに、皆さんふとこう、あれ?って、なにこの歌っていう感じで立ち止まって聞いてくれるという反応は感じましたね。」

りみさんは初めてこの歌に触れたときの事をこう振り返ります。

夏川りみさん
「沖縄サミット2000年の年ですね。何気なくテレビを付けたら、そこにはBEGINのニーニーたちが映ってました。生でライブをされてたんですよね。ただ一曲だけが知らない歌があって、…それがまさに『涙そうそう』だったんです。もうその曲を一緒に聞いたときに、サビがもう頭から離れなくなって。なにか“こういう歌が歌いたいな”というのが強く湧いてきたんですね。」

2000年にBEGINがリリースしたシングル「涙そうそう」

BEGINの歌う「涙そうそう」に心を奪われたりみさんは、いってもたってもいられず、同じ石垣島出身で先輩と慕うBEGINの元を訪ねました。

夏川りみさん
「同じ石垣島でね、うちの姉とBEGINが同級生ということもあって。ライブ会場で楽屋を訪ねたら”久しぶりだな元気だったかー”って。”元気だよ”って返して。”今日のライブは見れた?聞けたか?””とっても良かったよ。…特にあの『涙そうそう』っていう歌さ。あの歌ちょうだい!”ってはじめてそこで言ったんです。そしたらなんか”待って、りーみー。だったらよー、俺なんかBEGINで新曲をりーみーに作るから、それでやったらいいさー!”みたいな事で『あなたの風』という曲を作ってもらったんですね。」

BEGINの三人は、りみさんのために「あなたの風」を書き下ろしてくれたといいます。しかしそれでも「涙そうそう」を歌う事をあきらめられなかったりみさんは、三人に思いを伝え、待望だった「涙そうそう」のレコーディングが実現したのです。

そして、BEGINのメンバーと挑んだレコーディングの際に、この歌の歌詞が生まれたエピソードを知ることになったといいます。

夏川りみさん
「沖縄の青空をイメージしながら”晴れ渡る~”って気持ちよさそうに歌ってたら、比嘉栄昇さんが、”りーみー、お前この曲どんなにしてできたか聞いた?”って聞かれて。そのまま”実はこの曲よー”って教えてくれたんです。」

歌詞にこめられた亡き人への想いと“涙”の理由

夏川りみさん
「森山良子さんが作詞をされたって事をあとから知らされたんです。もともとはBEGINが曲を作って、それにタイトルだけ『涙そうそう』という言葉を入れて良子さんに渡したんですと。森山さんが”この『涙そうそう』ってどういう意味なの?”って聞いたときに、比嘉栄昇さんが説明したのが”涙がとめどなくポロポロ溢れるっていうのは方言で『涙そうそう』って言うんです”と。それを聞いた良子さんは、そのメロディーを聞いて、もう歌詞が勝手に降りてきて、書きあげたようなんです。」

森山良子さんの「涙そうそう」は1998年発売のアルバム『TIME IS LONELY』に収録。画像は2001年にリリースされたシングル「さとうきび畑/涙そうそう」

夏川りみさん
「BEGINの三人から”森山良子さんが大好きな兄を亡くされて。その大好きな兄への思いがそこに表れていて…。それがこの歌なんだよ。”って。聞いたとき、もしかしてこの歌は、私が歌ってはいけない歌なのかな…って気持ちが過ったんです。…でも私はこの曲に出会ったときに、こんな歌が歌いたい、この曲が歌いたいという強い気持ちがあって、そのときもその気持ちがとても強くて。」

悲しみにも喜びも おもうあの笑顔
あなたの場所から私が 見えたらきっといつか 会えると信じ生きてゆく
―「涙そうそう」 歌詞より抜粋―

夏川りみさん
「レコーディングを一旦止めて、歌詞をもう一度ちゃんと読む、向き合うような時間を取らせてもらったんですね。歌詞を改めて見つめて、そういう思いが入ってるんだっていう、気持ちを切り替えして。そこからもう1回レコーディング歌い直しをさせていただいたんです。そうして歌ったら、BEGINのみんなが、”りーみー、今の歌い方だったらよ、みんなに届くよ”って。そこで初めてOKっていうのをいただいたんです。」

夏川りみさん
「レコーディングして、初めてあがったCDを受け取って、私の歌った出来たてホヤホヤのCD盤を持って、森山良子さんが毎年コンサートとやられてる会場に会いに行ったんです。良子さんにお会いして、”できたてホヤホヤです。聞いてください”ってCDをお渡ししたんです。そうしたら、良子さんは私のそのCDをまだ聞かない間に言ってくれたんです。”りみちゃん、BEGINから聞いているよ。いっぱいいっぱい歌ってね”って言ってくださったんです。その一言で、これはもう、1人でも多くの方に届けないといけないなっていう気持ちになって。」

その後「涙そうそう」はロングセールスを記録し、夏川りみさんの歌声に乗せて、日本中に届けられました。

夏川りみさん
「初めてBEGINが歌う涙そうそう聞いたときの気持ちと変わらず、やっぱり素敵だなっていう気持ちは毎回毎回感じながら歌わせてもらってるので、新鮮な気持ちで、何かその歌に惚れ込んで、1人でも多くの方にこの歌、その気持ちが届くように、何か丁寧に歌い続けていきたいなって思います。」

古いアルバムめくり
ありがとうってつぶやいた
いつもいつも胸の中
励ましてくれる人よ
晴れ渡る日も 雨の日も
浮かぶあの笑顔
想い出遠くあせても
おもかげ探して
よみがえる日は 涙そうそう

一番星に祈る
それが私のくせになり
夕暮れに見上げる空
心いっぱいあなた探す
悲しみにも 喜びにも
おもうあの笑顔
あなたの場所から私が
見えたら きっといつか
会えると信じ 生きてゆく

晴れ渡る日も 雨の日も
浮かぶあの笑顔
想い出遠くあせても
さみしくて 恋しくて
君への想い 涙そうそう
会いたくて 会いたくて
君への想い 涙そうそう

夏川りみ/涙そうそう(2001)
作詞:森山良子/作曲:BEGIN

夏川りみライブの様子

OKINAWA SONG BOOK-本土復帰50年特別企画- 放送のお知らせ

2022年11月19日(土)午後2:00~2:55放送(1時間版)
2022年12月6日(火)午後7:00~8:54放送(2時間版)
(沖縄テレビ8チャンネル) ※1時間版は九州地区のCX系列局でも放送されます。

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