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OTV報道部

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新型コロナの影響などで子牛の競り価格は下落 苦境に立つ畜産農家 

子牛の競り価格の下落が続いている。新型コロナで畜産物の消費が落ち込んだことに加え、エネルギー価格の高騰や飼料価格の高止まりが農家を直撃し、このままでは廃業する恐れもあるという。

2022年から止まらない下落傾向

永田記者
「これから月に一回の肉用牛の競りが行われます、今日は450頭あまりが取引されるということです」

糸満市武富にある南部家畜市場。繁殖農家が育てた子牛や成牛が競りに出さている。
競り落とした肥育農家は出荷できるようになるまで、子牛を丹精込めて育てていく。

この日行われた競りの子牛の平均価格は59万4854円。2021年の同じ月よりも約10万円も下回った。

子牛を競りに出すまでエサ代が約40万円掛かり、設備投資などの費用を含めると、採算ラインは60万円だと言われている。

JAおきなわによると、牛肉が需要回復の兆しを見せた2021年11月から12月は価格が上向いたが、2022年に入り、下落傾向が止まらない状況だという。

急激な円安や世界情勢による飼料・肥料の高騰

JAおきなわ農業振興本部 畜産部 大城一也 部長
「飼料の高騰、あとは肥料の高騰によって、だいぶ農家の方の生産コストが上がってきています」

最大の要因として挙げられるのが、飼料価格の高騰だ。
肉用牛の飼育では、牛の成長に合わせて、粗飼料と呼ばれる稲わらと乾牧草、とうもろこしなどが入った濃厚飼料を与えている。

エサのほとんどは輸入に頼っていて、輸送費の上昇や急激な円安進行、ロシアのウクライナ侵攻による穀物価格の高騰が続き2021年上旬は6万円台だった配合飼料価格は、2022年7月には1.5倍の9万円台に達した。

JAおきなわ農業振興本部 畜産部 大城一也 部長
「エサ代がかかるので、赤字になっていたものですから、それで県外の購買者が子牛を今まで67万で買っていたのを、ちょっと10万下げぐらいで今取引されているという状況」

「需要の落ち込みもあり低価格で競り落とさざるを得ない」

兵庫県から参加した肥育農家は、2020年と比べ飼料代が月に30万円から40万円上がり経営を圧迫していることや、需要の落ち込みなどもあり『繁殖農家には申し訳ないが、低い価格で競り落とさざるを得ない』と苦しい胸の内を語った。

──子牛の競り価格が下がる一方、飼料の高騰にも直面している繁殖農家は

繁殖農家 比屋根智和さん
「(値下がりは)15万20万そこら辺、だからいつもは年末上がってくるんですけど、やっぱり厳しいかなという感じですね。自分たちも厳しいですけど、やっぱり肥育農家が厳しいから、いろいろみんなで話し合ってみんなで儲かる牛作りが理想かなって思っています」

現状に苦悩を滲ませながらも、手抜きせず、牛と向き合っていると言う。

繁殖農家 前門ゆかりさん
「こまめに繁殖率を上げて、ちゃんと一年一産、子牛を出産させて。発育が良くて血統が良ければそれなりの値段で売れるので、そういうふうに一応頑張っています」

「その場限りだけではない支援を」

JAおきなわの大城部長はこのままの状況が続けば、牛の数を減らしたり、廃業に至ってしまう農家が増えてくると警鐘を鳴らす。

JAおきなわ農業振興本部 畜産部 大城一也 部長
「県とか国とかがいかに再生産できるような支援をしてくれるか、その場限りの支援じゃなくて、再生産できるような支援をしてくれないことには、農家はどんどん廃業とかに繋がっていく」

JAおきなわとしては、1トン当たり6500円の飼料代の支援を継続していて、県産品を生み出す大切な畜産業を守るため、行政機関には喫緊の課題として、迅速に取り組んでほしいと窮状を訴えた。

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