大規模採用に給与アップも ウィズコロナで変化する雇用事情

──経済のスペシャリストであるブルームーンパートナーズの今川雄太さんとともにお伝えします。

今川さん
「今回テーマは『大規模採用に給与アップも。ウィズコロナで変化する雇用事情』です」

新型コロナの流行以降県内の有効求人倍率は長らく1倍を下回っていましたが、2022年の7月からは4か月連続で1倍を超え、観光業を始め様々な業種で人手不足感が強まっています。

新型コロナとの共存の中で県内企業の雇用事情にどんな変化が起きているのか、取材してきました。

採用枠の大幅な拡大　働きやすい環境づくりを積極的に

那覇市おもろまちに拠点を置く「シーエー・アドバンス」。国内の王手IT企業・サイバーエージェントの子会社で、インターネット広告やメディア関連の事業を担っています。

シー・エー・アドバンス 中村広毅 取締役
「ABEMAというサービスでして、ワールドカップで言うとコメントの監視だったりお客様からの問い合わせの対応だったり、後は得点が入ったときのハイライト動画の作成みたいなものも」

今川さん
「日本のハイライト動画は沖縄で作られている？」

シー・エー・アドバンス 中村広毅 取締役
「そういうことですね」

グループ全体で約1200人も社員がいるシーエー・アドバンスですが、オフィスを見渡すと、空席が目立ちます。

コロナ禍以降、リモートワークを積極的に導入し約半数の社員が自宅などから業務を行っています。

シー・エー・アドバンス 中村広毅 取締役
「僕らも最初は戸惑ったんですけど、結構それで仕事が成立してしまうということが分かったので」

IT業界ではコロナ禍を経て事業のオンライン化が加速し、これまで首都圏でしか成し得なかった専門性の高い仕事が地方からでも遠隔で出来るようになったといいます。

シー・エー・アドバンス 中村広毅 取締役
「（業務内容が）2008年に設立した当初は仕事の種類って3種類ぐらいしか無かったんですよ。2022年時点で100ぐらいある。コロナ禍になっても増えたんですよ」

そこでシーエー・アドバンスでは2024年度の新卒採用で、ある思い切った計画を打ち出しました。それは、採用枠の大幅な拡大です。

シー・エー・アドバンス 中村広毅 取締役
「24年の4月については今年の5倍の70人採用しようと思っていて」

シー・エー・アドバンス 中村広毅 取締役
「サービスの成長にダイレクトに影響出来るような仕事だったり、広告主の効果をダイレクトに上げるような仕事だったりをより大きく広げて。（そのために）新卒採用をもっと拡大して頑張っていきたい」

新卒を募集するにあたりウリにしているのは、意欲があり業績を上げれば年次にかかわらず、重要な仕事を任される「抜擢」文化です。2017年に新卒入社した大城拓真（たくま）さんは、入社6年目にして執行役員に抜擢されました。

入社6年目で執行役員に抜擢　大城拓真さん
「IT業界で言うと業界の変化のスピードがより加速しているなと感じていて、ベテラン社員と対等にやれるチャンスが広がってきているのかなと感じていますね」

若手社員の活躍の場を設けることで仕事への意欲を刺激するとともに、グループ会社全体で働きやすい環境づくりにも積極的に取り組んでいます。

モノクラム 新里麗 チーフ
「リラクゼーションルームでデザイン本を見たりとか画集を見たりとか、クリエイターの発想力を高めるような環境になっていて、それってすごくやりがいに繋がるなと思っています」

一方で県内ではまだ「IT業界で働くイメージが沸かない」という学生の声も多いそうで、シーエー・アドバンスでは琉球大学と沖縄国際大学の学生を対象にIT業界のキャリア講座を開講するなど、沖縄から全国に通用する人材の育成を目指しています。

シー・エー・アドバンス 中村広毅 取締役
「ベンチャー企業なので、会社を作っていくことに興味がある、情熱がある、そういう人たちを採用していきたいと思っています」

給与をアップ、独自性をアピールする事で人手不足を解消

沖縄で大きな比重を占める観光業は新型コロナの影響をモロに受けて業界自体を離れた人も少なくありません。
そのため人材確保のために工夫を凝らしている企業もあります。

那覇市の国際通りに面するホテル、パームロイヤル那覇。
新型コロナの流行前と比べて宿泊客の数は9割近く回復しましたが、慢性的に働き手が不足しています。

そんな中、2022年10月、ある策に打って出ました。

パームロイヤル那覇 高倉直久 総支配人
「まずは既存の職員の所得を上げました。10％から20％の範囲なんですけれども」

パームロイヤル那覇 高倉直久 総支配人
「新規募集する方に関しても、今まで17万円弱だったんですけれども、それを20万円台のベースで人材を募集したところ、今まで求人募集に全く連絡が無かったんですけれども、連絡が来るようになりまして」

給与アップは既存の従業員のモチベーションアップに繋がっています。

また、LGBTに配慮したホテルであることやバリアフリー設計であることを全面的に打ち出したことで、その独自性に惹かれ採用につながるケースも有り、来年の初旬にも人手不足が解消される見通しです。

今日の一言

──さて今川さん、今回のテーマから見えてきたことはなんでしょうか。

今川さん
「こんな時だからこそ、攻めの人材投資で企業価値のUP」です。

新型コロナによって企業の外部環境は大きく変わりました｡
ただそんな中で大変厳しい人材確保の競争に対して､今回人材投資を先行して行える企業が次のチャンスをどんどん掴んでいくんだなというふうに改めて思いました｡