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長嶺 真輝

長嶺 真輝

「マグロ食べて優勝だ!」千葉ロッテ・キャンプ受け入れ2年目の糸満市(沖縄県)の今。プロ野球キャンプ定着へ体制強化

 
千葉ロッテの上りが並ぶ西崎球場

約1カ月に及ぶ沖縄のプロ野球(NPB)春季キャンプシーズンも、もう少しで折り返し。NPB9球団が県内で実施する今年は新型コロナウイルス禍による来場制限が大幅に緩和され、各球場とも再び賑わいを取り戻している印象だ。キャンプを目的に来県する観光客も見られ、経済効果を期待する受け入れ自治体にとっては明るいニュースだろう。

そんな中、球団の受け入れ体制強化にひときわ奔走する市がある。今月14日から千葉ロッテマリーンズの2次キャンプがスタートする糸満市だ。昨年、約30年ぶりにプロ野球キャンプの受け入れが再開。今年はロッテが練習拠点とする西崎球場に新しい防球ネットを設置したり、経済界が特産品の贈呈を通して「海人のまち」など市の魅力を広くアピールすることを計画したりするなど、キャンプ定着に力を注ぐ。

市内ホテル宿泊 チームとの信頼関係構築も

1990年前後にオリックスを数年受け入れ、四半世紀以上の空白期間を経てロッテの受け入れを始めた糸満市。1年目の昨年は、球団は市外のホテルに宿泊したが、今年の宿舎は市内ホテルへ。さらにチームの移動に使うバスや、ユニフォームを洗濯するランドリーも市内の事業者を利用することになっているという。

全体の日程も昨年は6日間だったが、今年は10日間に伸びた。当然ながら、その分経済波及効果の拡大に対する期待感は膨らむ。市観光・スポーツ振興課の松田郁哉さんはこう語る。

千葉ロッテマリーンズ沖縄春季キャンプ
受け入れ体制の強化について説明する糸満市の松田郁哉さん(左)と新嘉喜巧治さん

「やっぱりキャンプ地と宿泊地は近い方が利便性がいいというイメージがあるので、その辺りを擦り合わせて市内のホテルに泊まっていただくという形になりました。球団側が直接もたらす経済だけでなく、ファンの方が糸満市に来て球場周辺で飲食をしたりすることも期待されます。まだ2年目ですが、年数を重ねていけば徐々にキャンプの内容が充実していくのかなと思っています」

市では2021年11月、プロ・アマ問わずスポーツキャンプの誘致に取り組み、市民のスポーツ参画人口拡大や経済効果の波及などを目的に市と関係団体が「市スポーツキャンプ等受入協力会」を設立。会員は増加中で、昨年9月にはロッテの本拠地である千葉県のZOZOマリンスタジアムに応援ツアーを行った。

市と球団の信頼関係は徐々に構築されてきており、松田さんは「やはり昨年に一度来ていただいているので、全くのゼロスタートではない。コロナ禍でもリモートで繋いで会議もできていました。球団側から歩み寄ってきてくれている印象もあるので、距離感は近くなっています」と好感触を語る。

20mの防球ネット新設で練習試合可能に

千葉ロッテマリーンズ沖縄春季キャンプ
西崎球場を囲むように新設された防球ネット(左側)

球団からの要望もあり、市はバックスクリーンや左翼側の裏に太いポールを設置して高さ14mの防球ネットを新設。さらに市都市計画課の新嘉喜巧治さんが「国道側は車通りも多いので、より強化しています」と説明する通り、国道331号線側の右翼や一塁側内野席の後方はネットを高さ20mにかさ上げした。その甲斐あって、今年はキャンプ開始2日目の2月15日午後1時から、セ・リーグ2連覇中の東京ヤクルトスワローズと西崎球場で練習試合を行うことが決まっている。

その他、これまで横長に繋がっていた内野の観客席を一席ずつに分けて感染症対策の体制を強化したり、内野観客席のグラウンド側に高さ2mのネットを新設して来場客の安全性を向上させたりと、より快適に過ごせる環境を整えた。

特産品の鮮魚、野菜をアピール

プロ野球キャンプには県内のメディアだけでなく、スポーツ紙や全国紙、通信社の番記者が各球団に張り付き、連日報道合戦を繰り広げているため、ニュースを通して市の魅力を発信するチャンスでもある。糸満は昔から漁業が盛んで「海人のまち」と呼ばれ、さらニンジンやレタスなど農作物の生産も盛んだ。

千葉ロッテマリーンズ沖縄春季キャンプ
昨年のロッテキャンプの時、井口資仁監督(右)にマグロなどを贈呈する東恩納博会長(中央)と當銘真栄市長(東恩納会長提供)

糸満漁業協同組合やJAおきなわ糸満支店、市建設業協会など市内12団体で構成する市経済団体協議会は昨年、糸満で水揚げされた30kg超のキハダマグロとソデイカ約10kg、寄付金10万円を球団に贈呈。ただ段取りがうまくできていなかったため、ほとんど報道されることはなかった。その反省を踏まえ、同協議会の東恩納博会長(糸満漁協会長)が意欲を語る。

千葉ロッテマリーンズ沖縄春季キャンプ
キャンプによる経済効果について期待感を語る東恩納博会長

「今年は事前に糸満の特産品を集めて、監督やスター選手に贈呈したいですね。糸満は鮮魚や新鮮な野菜が本当に多いので、その場でマグロや野菜をずらっと並べて写真を撮ってもらい、報道してもらえばいいPRになる。『糸満のマグロと野菜を食べて間違いなく優勝だ』とか言ってアピールできたらいいですね(笑)」

 ロッテの宿泊先の市内ホテルとは普段から交流が多く、マグロの調理なども調整がしやすいという。「ただロッテに来てもらうだけじゃなくて、総出で温かく迎え入れているんだという雰囲気をみんなでつくりたいです。経済団体が一同に揃って。それが定着に向けた鍵になると思います」と笑顔で語る東恩納会長。まだ緒に就いたばかりのロッテの糸満キャンプだが、関係者の熱は高まるばかりだ。

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