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くらしと経済編集部

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使用済み食用油を 地球にやさしいエネルギーに

後間
こんにちは。後間秋穂です。
家庭や飲食店などで使われ、毎日大量に廃棄される食用油。今回は使用済み食用油をエネルギーに変える取り組みについて野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんにうかがいます。よろしくお願いします。

宮里
よろしくお願いします。

後間アナと宮里支店長2ショット

後間
使用済みの食用油、いわゆる廃食用油はおもにどういった用途で利用されていますか。

宮里
はい。特に飲食店などから回収・処理された事業系の廃食用油は年間38万トンに及び、家畜のエサやインクなどの工業原料として利用されています。
一方で、最近では航空機などの燃料の原料として輸出されるケースが増えていて、国外での利用量が2020年の9万トンから、2021年には12万トンにまで急増しています。これは廃食用油全体のおよそ3分の1を占めています。

廃食用油の主な用途

後間
そうなんですね。ではなぜ、航空機の燃料の原料として廃食用油の輸出が増えているのですか。

宮里
はい。航空機は多くの二酸化炭素を排出するため、石油由来以外の燃料の導入などによる脱炭素化が急務です。
航空業界では、電動化や水素燃料の開発といった脱炭素化の動きも進んでいますが本格的な実用化には至っていません。そこで、廃食用油から燃料を作ることが現実的な選択肢として注目されています。

後間
なるほど。二酸化炭素の排出量の削減は喫緊の課題ですからね。

宮里
そうなんです。食用油の原料は植物であるため、成長過程において二酸化炭素を吸収しています。そのため燃料となって二酸化炭素を排出したとしても、吸収した二酸化炭素の一部を排出すると考えることができ、二酸化炭素の削減効果が見込まれます。

石油を使わず、廃食用油などを原料にした航空機燃料は「持続可能な航空燃料」を意味する「サスティナブル・エビエーション・フューエル」の頭文字をとって、「SAF(サフ)」と呼ばれています。
SAFを開発している企業は海外に多く、2022年7月現在、フライト段階に達している企業も5社あり、50以上の世界の空港でSAFが提供されています。
このため、海外で廃食用油の需要が高まっているのです。

従来の航空燃料とSAF

後間
では国内の状況はいかがですか?

宮里
はい、もちろん日本でもさまざまな企業が開発に取り組んでいますが、実際にフライトに利用された例は少なく、海外ほど導入は進んでいないのが現状です。
ただ対策を急ぐ動きもあり、例えば2022年3月には航空会社やエネルギー会社、商社など12社が業界の垣根を越えてSAFの国内生産と普及を目指す団体を結成しました。
2022年11月には不動産会社が管理する東京・丸の内エリアの飲食店から廃食用油を回収しエンジニアリング会社など3社が設立した新たな会社で、国内初の国産SAFの大規模生産を目指しています。

SAF普及に向けた国内の動向

後間
こうした環境に優しい取り組みが加速し、地球温暖化への対策に繋がることを期待したいですね。
宮里さん、ありがとうございました。

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