沖縄経済
「2024年問題」物流業界の対策
こんにちは。後間秋穂です。
今回は物流業界の抱える問題とその対策について、野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんにうかがいます。
後間
コロナ禍でインターネット通販の利用者や利用頻度が増えたように思えますが、実際に物流業界の現状はどうなっていますか?
宮里
2021年度の宅配便の取扱個数は49億5300万個に上り、前年度に比べて1億1700万個ほど増加しました。
また、そのうちのおよそ98.5%、48億8200万個がトラックで運ばれています。
一方で、荷物を運ぶトラックドライバーの数は、2030年にはおよそ42万人と2015年に比べ35%ほど減少するという推計もあります。
これまで物流業界は慢性的な労働力不足の状態にありましたが、インターネット通販の急成長でドライバーの長時間労働も常態化しています。
こうした現状にさらに追い打ちをかけそうな問題が「2024問題」です。
後間
どういった問題なのでしょうか。
宮里
2018年から働き方に関する複数の法律が改正されていて物流業界では2024年4月から、自動車運転業務の年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されます。
「2024年問題」とはこの規制によって生じる恐れのあるさまざまな問題のことです。
例えば、この規制によって1日に運べる荷物の量は減ることが見込まれていますので、物流事業者の売上・利益は減少します。
とはいえ、激しい価格競争のなか運賃を上げるのも容易ではありません。
また、ドライバーも走行距離に応じて手当が支給されますので、この規制によって走行距離が短くなれば収入が減少する恐れがあります。
そうなればドライバーの離職にも繋がり慢性的な担い手不足に拍車がかかることが予測されています。
こうした問題の影響によって、今後、輸送量が大幅に減少し2030年には全国のおよそ35%の荷物が運べなくなるという試算も出ています。
後間
このままでは物流が滞ってしまうことも考えられますね。
何か対策は講じられているのでしょうか。
宮里
はい。千葉県のある事業者では、後継者不足に悩む各地の運送事業者を積極的に買収してきました。
拠点数とトラックの台数を増やすことで、荷物をバトンのようにして引き渡しながら運ぶ「バトンタッチ配送」を実現できます。こうしてドライバーの負担を軽減し、輸送体制の強化を目指しています。
また、埼玉県のある事業者は、県内の自動車教習所を買収しました。業界内でドライバーを奪い合うのではなく、一から養成することが狙いで、ドライバー不足に悩む他社にも活用を促しています。
一方、国も企業に対してドライバーの長時間労働を軽減する計画の策定や報告を義務化するといった対策を検討していて、2024年問題の解決に向け社会全体で対策を進めていくことが求められています。
後間
私たち消費者も再配達を減らすために宅配ボックスやロッカーを積極的に活用するなどできることから始めていきたいですね。
今回は「2024年問題」物流業界の対策について宮里さんにうかがいました。
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