沖縄経済
転換期を迎え変わりゆく百貨店
こんにちは。後間秋穂です。今回は「転換期を迎え 変わりゆく百貨店」について、野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんにうかがいます。
後間
近年、百貨店といいますと閉店などのニュースを耳にすることが多い気がしますが、実際どういった状況なのでしょうか。
宮里
全国的に百貨店は閉店への動きが続いています。
2022年10月には、新宿の百貨店が、立て替えのために売場を分散する形で移転しました。
また2023年1月には、渋谷駅近くの百貨店が56年の歴史に幕を閉じました。さらに、池袋駅に直結する百貨店も、アメリカ資本のもとで再開発され、大手家電量販店が入ると言われています
後間
インターネット通販の台頭で、ショッピングの形は大きく変化していますが、百貨店のありかたや役割も変わってきているのでしょうか?
宮里
これまで百貨店は、電鉄会社がターミナル駅に繁華街や百貨店を設けるという形で成長してきました。
しかし、少子高齢化・人口減少などに伴って、そのビジネスモデルは見直しを迫られています。
ファストファッションや通信販売の市場拡大などもあって、高価格品中心の百貨店の存在感が低下し売上も長期的に減少傾向が続いています。
2022年の百貨店の売上は約4兆9800億円でした。バブル崩壊後の1991年の約9兆7000億円からは半減に近い減少幅です。
売上の4割を占めていた衣料品の売上減少の影響が大きいようです。それとは対照的に、2006年以降のコンビニの売上幅は堅調に推移しているのが分かります。
後間
今後、百貨店は、なくなってしまうのでしょうか。
宮里
従来のような形の百貨店はこのまま消滅するとの見方もある一方で、業態を大きく変えるなど新しい形で存続していくとの見方もあります。
例えば、渋谷の百貨店の立て替え計画からは、大都市圏の百貨店が目指す一つの未来像が見えてきます。この百貨店の跡地に建てられるビルでは、上層階が賃貸レジデンス、中層階には高級ホテルが入り、低層階は縮小された百貨店を含む商業施設が入る予定です。
電鉄会社が再開発のパートナーとして選んだのは、フランスの高級ブランド等を多数傘下に持つ不動産開発投資会社で、国内外の富裕層をメインの顧客にしていくことが予想されています。
百貨店はこれまで、あらゆる消費者層をカバーする憩いの場になってきましたが、今後はそうしたあり方からの大きな転換を迫られているようです。
後間
大都市だけではなく、地方の百貨店にも変化は見られるのでしょうか。
宮里
2023年1月に閉店した北海道帯広市の百貨店は、地元企業が営業を引き継ぎ、百貨店機能を縮小する一方で、医療機関などを誘致し、地域コミュニティの新たな拠点にしていく計画です。こうした動きは、地域それぞれの事情に即して、百貨店が多様に進化していく兆しともいえそうです。
後間
今後の展望に期待したいですね。今回は、「転換期を迎え 変わりゆく百貨店」ついて宮里さんにうかがいました。
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