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長嶺 真輝

長嶺 真輝

27日からファイナルに挑む琉球ゴールデンキングス 幾多の「悔しさ」がプラスの”ジンクス”を引き寄せるか

ゴールデンキングス2023CSチャンピオンシリーズ
ファイナル開幕前日の記者会見に臨む琉球ゴールデンキングスと千葉ジェッツの選手、HC=26日、神奈川県の横浜アリーナ©️琉球ゴールデンキングス

プロバスケットボールBリーグ1部のチャンピオンシップ(以下、CS)ファイナルが27日、神奈川県の横浜アリーナで開幕し、昨シーズン準優勝の琉球ゴールデンキングス(西地区1位)が悲願の初優勝を懸けた大一番に挑む。相手は今シーズン、53勝7敗でB1の歴代最高勝率を記録した東地区1位の千葉ジェッツ(以下、千葉J)。27、28の両日に第1戦、第2戦を行い、1勝1敗で並んだ場合は20日に実施する第3戦で年間王者を決める。

千葉Jは3月にあった一発勝負の天皇杯全日本選手権の決勝でもぶつかり、76ー87で敗れた相手だ。日本代表ガードの富樫勇樹を筆頭に、平均得点が87.9点とリーグで断トツに高い攻撃力を誇る。さらに堅守も備え、下馬評ではキングスの分が悪い。

ただ、Bリーグには現状のキングスにとってプラスに働く、ある“ジンクス”が存在するのをご存知だろうか。それは、この1年間で2度も日本一の厚い壁に阻まれ、その「悔しさ」を糧に力を付けて再びファイナルの舞台に戻ってきたキングスだからこそ引き寄せられるジンクスである。

2年続けて「前大会の準優勝チーム」が頂点に

ゴールデンキングス2023CSチャンピオンシリーズ
セミファイナル第2戦後、ファンに向けて手を振るキングスの選手たち=21日、沖縄アリーナ©️Basketball News 2for1

そのジンクスとは、端的に言うと「前回大会の準優勝チームが、次回大会で優勝する」というものである。Bリーグでは、この現象が2シーズン続いているのだ。

2017ー18、18ー19に2シーズン続けてファイナルでアルバルク東京に敗れた千葉Jは、次のCSとなった(19ー20シーズンはコロナ禍でCS中止)20ー21シーズンに宇都宮ブレックスを破って初優勝。翌21ー22シーズンは、今度は宇都宮がキングスを敗って頂点に立った。

当然その時の対戦相手やチームの状況など、優勝するためには様々な要因が絡むが、このジンクスは完全に「偶然」と言い切れるものではない。昨年のファイナルを2連敗で終えた後、岸本は多くの負傷者を出しながらもリーグトップの勝率を残した昨シーズンを振り返り、こんな事を言っていた。

「チームメートの怪我やコート外でもいろんなことがあった中で、逆境を乗り越えてきました。最後は乗り越えられなかったのですが、そこに立ち向かっていくのがキングスが歩んできた歴史だと思います。悔しさもありますが、素晴らしいチームメートとシーズンを最後まで戦ってきました。これがいい経験になったと言えるのは、これからの僕たちの行動次第だと思います」

前年のCSで、ファイナルで敗れるという、もしかするとそのシーズンで最も悔しい経験をするチームは一つしかいない。今季で言えばそれがキングスだ。その「悔しさ」は、チームを成長させるためにはうってつけの糧になり得る。

積み上げた自信 ”完全体”で挑む

ゴールデンキングス2023CSチャンピオンシリーズ
記者会見でファイナルへの意気込みを語る今村佳太©️琉球ゴールデンキングス

今シーズンのキングスは田代直希、牧隼利、渡邉飛勇がけがから復帰。新加入の松脇圭志とジョシュ・ダンカンもシーズンが進むごとに目に見えてチームにフィットし、リーグでもトップクラスの層の厚さを誇るチームとなった。

桶谷HCが「今シーズンは怪我に対して非常に敏感にやってきた」と説明するように、トレーナーやストレングス&コンディショニングコーチなどスタッフ陣が徹底して選手のコンディションを管理。CSでは各チームに主力の負傷離脱が相次ぐ中、キングスは一人も欠く事のない”完全体“でファイナルに臨むことになった。昨シーズンの最終決戦では満身創痍の状態だったため、真反対の状況と言える。

また、昨シーズンは帰化選手の小寺ハミルトンゲイリーがいたたため、ビッグマンを一緒に3人コートに立たせる「3BIG」で押し切る試合も多かったが、今シーズンは総合力を磨いてきた。特にオフェンスではボールコントロールをする「ハンドラー」の役割を担う選手が増え、スムーズなパス回しから内外のどこからでも得点が取れる。3BIGを宇都宮に封じられ、ジリ貧になった昨シーズンのファイナルの経験が、ここでも生きている。

26日午後、今回のファイナルの舞台となる横浜アリーナで行われた前日会見で、桶谷HCはこう語った。

「正直、去年よりも余裕があります。それが自信の表れなのかなと思う。相手はレギュラーシーズンで最高のプレーを見せた千葉さんですが、CSで勝ったチーム、コーチ、プレーヤーが最強なので、そう言えるように頑張りたいです」

続いてマイクを握った今村佳太も「去年の経験もあってリラックスできてますし、ワクワクしています。レギュラーシーズンでいい時も悪い時も戦ってきた経験と自信があるので、覚悟を持ってプレーしていきます」と力を込めた。

生え抜き11年目の岸本「責任を持って」

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記者会見でファイナルへの決意を語る岸本隆一©️琉球ゴールデンキングス

最後に、ファイナル進出を決めた21日のセミファイナル第2戦後、岸本が会見で口にした言葉を紹介したい。チーム最長の生え抜き11年目のプレーヤーであることの自覚と責任がうかがえる内容である。

「Bリーグになって、何度もあと少しというところで悔しい思いをしてきました。昨シーズンに限らず、今までたくさんの人たちがキングスのためにプレーして、働いてきた。そういう方達の気持ちも形に変えられるように、思いをぶつけていきたいです。自分がチームに残って、長くキングスでプレーするからには、責任を持ってプレーしないといけないといつも思っています。だからこそ、何よりも今回優勝という結果を出すことに意味があると感じます」

沖縄出身選手としての立場も踏まえてファイナルへの思いを問われ、こうも語った。

「自分自身も沖縄出身の選手として意義を感じていますが、キングスは球団として沖縄のためにどうあるべきかということが一番大きな部分なので、みんなが同じくらい沖縄のためにプレーし、働いています。引き続き、期待していただければと思います」 

旧bjリーグでは最多4度の優勝を達成したが、Bリーグが創設してからはまだタイトルを獲得していないキングス。積み上げてきた経験を力に変え、新たな歴史の扉をこじ開ける。

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