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OTV報道部

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沖縄に残る奇跡の映画館 戦後の大衆文化の香りを残す劇場を未来に残すために

沖縄に現存する最も古い映画館、「首里劇場」。
2022年4月に館長が亡くなり、休館したままで取り壊される可能性が高まる中、首里劇場を記録や記憶に残そうとする人を追った。

昭和の味を残しながら 古い・汚い・臭いがモットー

那覇市首里大中町の住宅街の真ん中に建つ古びた映画館、「首里劇場」。
70年以上に渡って営業を続けてきたが、現在は休業したままだ。

初めて首里劇場を取材したのは2021年5月。

首里劇場館長 金城政則さん
「自分のところ(映画館)は、古い・汚い・臭いをモットーにしてやろうと思いまして。昭和の味を残しながら」

首里劇場をひとりで切り盛りするのは金城政則館長。ユニークなキャラクターで親しまれた名物館長だった。

娯楽の殿堂は衰退 生き残りをかけて

戦後間もない1950年。傷ついた人々を元気づけようと、まだ建物もほとんどない首里の街に建てられたのが首里劇場だ。

映画や沖縄芝居で人々を楽しませた、まさに娯楽の殿堂。

しかし、テレビなど新たな娯楽の台頭で次第に映画は斜陽に。生き残りをかけて首里劇場は成人映画の上映に舵を切った。

その後も細々と営業を続けてきたが、2014年にフィルムでの上映が終了することになった。

首里劇場館長 金城政則さん
「これで終わりですよ。これで最後、フィナーレ。この映画もあと1時間で終わりです」

そして2021年5月、新たなお客さんを呼び込もうと成人映画の上映をやめ、昭和の名画を上映する「名画座」として新たなスタートを切った。

名画座を訪れた女性
「地元ですけれども、名画座になってまずはうれしいです。以前は成人映画ばかりやっていたので、ちょっと通るのもはばかられました」

首里劇場館長 金城政則さん
「気兼ねなく来られるような映画館にしていこうと思いますね。今からはまた」

しかし、それから1年も経たないうちに館長は病気で亡くなった。

戦後の大衆文化を体感できるのはここしかない

首里劇場調査団 平良竜次さん
「今後、とりあえずここは休館です。このままだと取り壊しの可能性も大変高いです。ただ、それをそのままにしていいものか、という思いもあります」

築70年を超え、老朽化した劇場は建て替えるにしても莫大な費用が必要だ。そんな中、首里劇場に思い入れのある人が集まり、結成されたのが「首里劇場調査団」だ。

この場所の歴史を伝え、人々の記憶に残したいと内覧会を開いている。

首里劇場調査団 平良竜次さん
「やっぱり芝居小屋ですよ。舞台が大きく、映画館とは違います。両側、右と左の方に花道がある。花道がある劇場はもう沖縄ではここだけです。戦後の大衆文化を唯一体感できる場所はここしかないんですよ」

「どうにか皆さんに知ってもらって残せるようになれば」

首里劇場調査団の平良竜次さん。金城館長とは10年以上の親交があり、首里劇場の広報のような存在でもあった。

首里劇場調査団 平良竜次さん
「上からバタバタと降りてきて僕の顔見たら、『なんだお前か』って言われるんですよ。すぐ帰りますって言ったら、『さんぴん茶でも飲め』っておごってくれました。『映画も観ていけばいいさ、お金はいいよ』とも言ってくれて」

館長が守り続けてきた首里劇場の貴重さを改めて伝えようとしている。

首里劇場調査団 平良竜次さん
「奇跡的なことなんですよ。沖縄という島の大衆娯楽の歴史の最後に残った貴重な財産だと思っているので、それをどうにかみなさんに知ってもらって残せるようになればなと」

首里劇場を残すために映画で魅力を伝える

2023年2月。首里劇場調査団は、劇場の歴史や建物についての調査の結果を発表した。

首里劇場調査団 平良竜次さん
「首里劇場は沖縄芝居、そして映画がメインで興行が営まれていました。ただそれだけではなくて、地域のコミュニティ施設としても使われていたということが分かっています」

また、那覇市で文化財の保存に携わってきた古塚達朗(ふるづか たつお)さんを招き、保存や活用の可能性についても意見を交わした。

琉球歴史文化コンサルティング 古塚達朗さん
「(建物の)構造上の問題は、非常に難しいところがあります。文化財としては、そこをいかに補強していくかということを考えれば残せないことはありません」

ただ、文化財として残すためには地域の住民の理解を得ることも必要で、課題は少なくない。
首里劇場を残すために…。平良さんは劇場の今を映画にして伝えることにした。

首里劇場調査団 平良竜次さん
「首里劇場とは何かということを、まだ見たことない人たち、知らない人達にこの魅力をちょっとでもいいから伝えられたらいいなと思っています」

映画は2023年4月に開かれた沖縄国際映画祭で上映された。

首里劇場調査団 平良竜次さん
「次はこの首里劇場を懐かしいとか、いい所だったねで終わりではなくて、未来にどう繋げていくか考えたいです。未来ですね」

戦後の沖縄の大衆文化の香りを残す首里劇場を未来に残すために…。奮闘が続く。

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