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大人気の民謡居酒屋「結歌」の“歌姫”。慰霊の日に歌で紡ぐ平和の光(那覇市 国際通り)

那覇市牧志にある島唄ライブが聴ける民謡居酒屋「結歌」の専属アーティストとして、連日連夜歌声を披露している“歌姫”がいる。その伸びやかで透明感のある歌声を目当てに、店内の100人超の席はあっという間に埋まる。店の顔として、琉装に身を包んでステージで三線を手に声を響かせているのは石嶺愛莉さんだ。歌声をTikTokやInstagramなどのSNSで積極的に配信し続けたことで、結歌はコロナ禍の真っ只中に開店したにも関わらず、今や「沖縄県内で最も集客している」と断言してもいいライブ居酒屋の1つとなっている。
その歌姫・石嶺さんが「平和のためのほんの小さな1つの光になってほしい」という慰霊の日への思いを込めたオリジナル楽曲を完成させた。SNSを駆使した新たな民謡居酒屋のあり方と、アーティスト石嶺愛梨さんの平和への思いに迫ってみた。
SNS動画で人気爆発、予約必須の民謡居酒屋「結歌」

「結歌」は観光客を中心に、石嶺さんの歌声を聴きに訪れるリピーターが非常に多く、ビール片手にウチナー料理を楽しむスタイルだ。「1日に4〜5組くらいはリピーターの方々が聴きに来てくれてるんですよ」と石嶺さん。コロナ禍の開店当時、少人数で来店していた客たちが、緩和ムードになってから満を持して、友人や会社の同僚などを引き連れて団体客がコンスタントに増え続けているという。
店を切り盛りするスタッフはほとんどが20代の若い世代で、石嶺さんのステージをメインにしつつも、“沖縄のおばちゃん”たちが作る各種チャンプルーやラフテー、もずく天ぷらなど味わい深い料理も大好評だ。

普段のステージで石嶺さんが歌うのは、BEGINの「島人ぬ宝」や夏川りみさんの「涙そうそう」といった、お馴染みの沖縄楽曲のカバーが中心だ。BEGINの「オジー自慢のオリオンビール」では、ジョッキを手にした客席から「あっり、乾杯!!」の合いの手が沸き起こり、それぞれのテーブルでグラスを交わす軽快な音が鳴り響く。
慰霊の日への思いを込めた楽曲を制作
そんな結歌で歌う石嶺さんが、去年(2022年)の慰霊の日、沖縄市のミュージックタウンで開催された平和と音楽をテーマにした「UMUI NO WAR うむいのわ」というイベントをきっかけに、オリジナル曲を書き上げた。

「慰霊の日には、毎年色んなお店でステージに立っていた時にも『月桃の花』や『平和の願い』を歌っていて、とても大事な日という感覚があります。そして、慰霊の日に歌うための自分の曲を作りたいという気持ちもずっとあったんです」(石嶺さん)
風に誘われ 懐かしいにおい
また 今年もこの季節がきた
月桃の花 咲き乱れ
胸に手を当てる 耳を傾ける
遠くから鳴り響いてくるピアノと二胡の伴奏に、初夏に吹き抜ける海風のような旋律の歌声が乗る。沖縄にとって特別な1日、6月23日の「慰霊の日」への思いを込めた楽曲のタイトルは「水無月の花」だ。
歌詞はこれまで書き溜めていた言葉たちの中から選びながら「悩まずにサラッと書けた」という。並んだ言葉からは沖縄の6月の梅雨明けの空気にうっすらと漂う悲しみや、かつてこの地で起きてしまった出来事へ向かうたくさんの人たちの複雑な感情を感じられる。
そして、サビを締めくくる「歌い続けて語り継ごう」というフレーズが石嶺さんの積年の思いそのもののように、力強く響く。
語り継ぐために自分の「歌」で出来ること
「世界では今も戦争している場所もありますが、戦争は2度と起きてほしくない。昔の沖縄で起こったことを忘れないために、伝えていくために、自分にできることは歌うことだと考えて形にしました」
これまで、結歌が開店する前にフリーで歌っていた時にも、石嶺さんは慰霊の日が近づくと観光客が大半の客席に向けて沖縄と平和を巡る楽曲を歌ってきた。その思いには揺るがぬものがある。
石嶺さんは「この曲を聴いて、少しでもいいから平和について何かを思う人が1人でもいてくれればと思っています。そんな、平和のためのほんの小さな1つの光になってほしい」と、願いを込めるように話した。

*石嶺愛莉さん Instagram
https://www.instagram.com/airi_sing0529/
*石嶺愛莉さん TikTok
https://www.tiktok.com/@airi_sing?lang=ja-JP
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