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OTV報道部

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台風で撤去にギモン…「何の役に立つのか」PAC3配備から3カ月の先島諸島 撤収の時期は見通せず

北朝鮮の弾道ミサイルへの備えとして、先島諸島に自衛隊のPAC3が配備されておよそ3カ月が経った。

南西シフトで軍備増強が進む先島で、PAC3の配備が続く意味を識者の見解も踏まえながら考える。

台風接近で迎撃態勢とらず、地元からは苦言も

松野官房長官
「各種情報を踏まえ、総合的な判断に基づき、適時適切な体制を構築しているところであり、引き続き地元自治体と調整の上、PAC3部隊についても必要な体制を維持していく考えであります」

2023年7月22日から3日間にわたって、先島諸島を訪れた松野官房長官。

日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを訴え、防衛政策への理解を求めた。

北朝鮮の軍事偵察衛星の打ち上げをめぐり、2023年4月22日に出された破壊措置準備命令。

これに伴い、沖縄本島のほかにも宮古島、石垣島、そして、与那国島に地上配備型の迎撃ミサイルPAC3が配備された。

こうした中、Jアラートが鳴っているが、PACの発射機は見えない。

当時、台風が近づいていた先島では、PAC3の発射機が強風で倒れる恐れがあるとして迎撃態勢をとっていなかった。

こうした事態に、地元から苦言が呈される場面も。

与那国町 糸数健一町長
「PAC3を台風で傷つけてはいけない。何かあってはいけないということで、発射台を畳んだ、片づけたということで私はびっくりしています。甚だ遺憾なことだと思っています」

安全保障が専門の沖縄国際大学の前泊博盛教授は、PAC3の配備が妥当だったのか疑問を呈する。

本当に島を守るための配備なのか

沖縄国際大学 前泊博盛教授
「台風が来た時に、自衛隊がやったことはPAC3を守ったんですね。北朝鮮が、ミサイルを撃つかもしれないという情報があるにもかかわらずです。気候や天候によって影響を受けるような防衛システムに過ぎないということは、住民にとって何の役に立つのだろうか、大きな疑問を持った一連の出来事だったと思います」

自衛隊は沖縄テレビの取材に対し、悪天候の際は、イージス艦とPAC3を組み合わせて態勢を構築すると回答している。

沖縄国際大学 前泊博盛教授
「これが本当に果たして、島を守るための配備なのかどうか。結局、守るべきは国体や国であって、住民や国民ではない。それが如実(にょじつ)に出たような気がします」

国民は見ざる言わざる聞かざるの中で、主権者の機能を失いかねない

石垣市では、台風が通過したあとになって初めてPAC3の部隊が展開した。

遊泳客で賑わうビーチから数百メートル離れた先に、PAC3の姿が確認できる。民間地に配備されて3カ月が経過しようとしている。

石垣島では、現在も埋め立て地の南ぬ浜(ぱいぬはま)町での配備が続いている。

南ぬ浜町は人工ビーチのほか、船が寄港する岸壁、ガス関連施設に物流拠点などさまざまな機能がある。

このため、船の荷物の積み下ろしなどを担う港湾労働者が、安全面の懸念を訴える事態となった。

全港湾沖縄地方本部 山口順市執行委員長
「どんなに安全だと言っても、我々は安全という認識にはなりませんよと、早めに撤去して基地内に持っていくようにと申し上げました」

港湾労働者でつくる全港湾沖縄支部は、組合員の安全が確保できないとして自宅待機を検討。

物流など住民生活に影響を与えかねない状況となり、防衛省が全港湾に説明する機会を設けた。

沖縄国際大学 前泊博盛教授
「軍事的な情報の希薄さ、国からの説明が十分に行われていない。そして、そのことを住民に知らせない。国民は見ざる、言わざる、聞かざるの中で、もはや判断ができなくなる。主権者としての機能を失いかねない。そんな状況になると思います」

新たな戦前に回帰する流れを断ち切る必要がある

中国の海洋進出や、台湾有事を念頭に推し進められる自衛隊の南西シフト。

石垣島では配備の賛否をめぐり、住民投票の実施を求める市民運動が起きた。

また、与那国島では、新たにミサイル部隊を配備する計画に不安を感じる住民も少なくない。

前泊教授は、軍事施設・機能が集中する沖縄が、再び捨て石とされないか危機感を示す。

沖縄国際大学 前泊博盛教授
「基地があるために攻撃を引き付けるマグネット効果っていうのがあるんですよ。沖縄県外に攻撃が行かないように、沖縄において局地戦を展開する。本当に住民を守る安全保障なのか、それとも、国や国体を守るための安全保障なのか。新たな戦前に回帰するかのような流れをどこかで断ち切る必要があると思います」

軍備の増強が何をもたらし、その向こうに何が待っているのか。

沖縄戦の悲劇を二度と繰り返さないために、沖縄を取り巻く状況を冷静に見極め、国の動向を注視していく必要がある。

北朝鮮が今後、予告なく衛星を打ち上げるとしていて、PAC3が撤収する時期は見通せず、市民が目の触れる場所に置かれ続けている状況について、民間地や港湾施設を軍事利用するための地ならしが行われているとの見方もある。

石垣市の南ぬ浜町での配備は、8月31日までで、自衛隊は今後について、さまざまな要素を勘案しながら、適切な態勢を構築していくとしている。

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