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OTV報道部

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沖縄出身美術家の作品が大英博物館に展示の快挙 オスプレイとチョウを同じ大きさで描く「革新的なアーティスト」

世界屈指の博物館として知られるイギリスの大英博物館に、沖縄県出身の美術家・照屋勇賢(てるや ゆうけん)さんの作品が展示されることになった。
芭蕉布の着物に、紅型(びんがた)の美しさと沖縄にのしかかる基地問題を表現したその思いを聞いた。

沖縄の伝統工芸に込められた社会へのメッセージ

南風原(はえばる)町出身で、現在はベルリンを拠点に創作活動を続けている美術家・照屋勇賢さん。

世界各国の美術品などおよそ800万点が所蔵される大英博物館で、2023年10月から1年間に展示・公開されるのは、照屋さんの代表作、「結い、You-I」です。

伝統的な芭蕉布の着物に古典紅型の色鮮やかな絵柄が施された優美な作品だが、近づいて見てみると、戦闘機やパラシュートで降下する兵士など、アメリカ軍や基地を想起させる柄や、辺野古の海に生息するジュゴンが描かれるなど、現代の沖縄が抱える社会問題を示唆している。

照屋勇賢さん
「古典の持っている調和や美しさを壊さず丁寧に、桜を爆発しているイメージや、パラシュートに変えていくことを意識しました。古典の美、古典の柄の美しさありきで、単純にそのイメージを少しずつ変えていったということです」

2023年11月に沖縄県立博物館・美術館で開かれる個展の準備のために帰国した照屋さん。

大英博物館への収蔵が決まった時は率直に驚いたと話し、作品の持つ伝統美やメッセージが国境を越えてイギリスにも伝わったと実感した。

柄の中で支配者や権力をひっくり返す

照屋勇賢さん
「沖縄の基地問題や平和活動、あとは沖縄の歴史ですね。常に支配されてきたけれども、芸術や文化、平和への願いでここまでやってきたというイメージが着物の中に出ていますので、それへの反応がやはり大きいです」

照屋さんは、戦闘機や兵士といった沖縄を「支配」し続けるモチーフを、地域で長年受けつがれてきた伝統様式に当てはめることで、力関係の転換を生み出した。

照屋勇賢さん
「オスプレイとチョウを同じ大きさで描きました。支配者や権力をひっくり返すことが柄の中で可能になったということは、描きながら気づきました。このことも結果的に古典柄の強さだと思います」

「結い、You-I」を制作した2022年、若手の登竜門と呼ばれる展覧会に挑戦していた照屋さんには、沖縄のアメリカ軍基地の存在を、あえて審査員に議論してもらう狙いがあった。

照屋勇賢さん
「当時はそういった挑戦をしてちょうどフェアかなと思って、あえて仕掛けたという作品です。それが結果的には、大英博物館に『やるじゃないか』って認められたのかもしれないです」

「沖縄の人たちによって作られるものが大英博物館に入っていくきっかけになれば」

大英博物館によると、芭蕉布に紅型を施した着物を所蔵するのは今回が初めてで、照屋さんについて、「民主主義、アイデンティティ、軍事力、植民地主義、移民に関する現在の言説に反応するユニークな作品を制作する革新的なアーティスト」だと、評している。

照屋勇賢さん
「今回の着物の収集をきっかけに、沖縄にもっと関心が広がって、沖縄の現状や、沖縄での活動、現代アートや工芸・民芸など、沖縄の人たちによって作られるものが大英博物館に入っていくきっかけになればと思っています」

ローカルな視点で、グローバルなアート活動を続ける照屋さん。
沖縄の歴史、平和、文化への思いを結び付けた作品は、極東の小さな島で起きている日常を世界の人々に伝える。

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