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OTV報道部

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沖縄で黒糖づくりが始まって400年 県内8つの離島の黒糖から世界に誇れるラムを

2023年は、沖縄で黒糖づくりが始まって400年の節目の年だ。製造技術の向上で生産量が増加する一方、消費量が伸び悩み、黒糖の余剰在庫が深刻な問題となっている。

そんな中、沖縄県内8つの離島の黒糖をふんだんに使ってラムを製造するプロジェクトの集大成となる商品が発売された。

「沖縄から世界に誇れるラムを」
作り手の情熱によって生み出された珠玉の1本はすでに多くの反響を呼んでいる。

沖縄から世界に誇れるラムを集大成となる商品がリリース

2023年8月8日に開かれた新商品リリースの記者会見。

登壇した関係者が口々に語ったのは…。

JAおきなわ 前田典男 理事長
「黒糖の可能性を広げたということで、非常に期待しています」

ともに商品開発を行った琉球大学農学部 平良東紀 教授
「世界に挑みたいと(聞いて)本当かな?とも思ったのですが、今日、それが実現できています」

大いなる期待とともに世に送り出されたのは、「THE OKINAWA ISLANDS RUM(ザ オキナワ アイランズ ラム)」。

ラムとは、サトウキビを原料に作られる蒸留酒で、ウォッカやテキーラと並ぶ世界4大スピリッツの一つ。

そのラムを沖縄県内8つの離島の黒糖から作る「ONERUM(ワンラム)プロジェクト」の集大成となる1本だ。

瑞穂酒造 商品開発室室長 仲里彬さん
「洋酒事業への本格参入、沖縄県だからこそできる、世界に通用するようなモノづくりに積極的にチャレンジしております」

ワンラムプロジェクトが目指してきたもの

2021年の黒糖の余剰在庫は過去最多の1万6000トンで、沖縄の黒糖づくりの深刻な問題となっている。

島の人々の生活を支える製糖業を盛り上げ、誇りに思ってほしいと、ONERUMプロジェクトの中心となって活動する瑞穂酒造の仲里彬(なかざと あきら)さんは、8つの島すべてを回り、その島の黒糖の魅力と生産者の想いを肌で感じてきた。

そして第1段となる伊平屋島を皮切りに、8つの離島の黒糖の個性を反映させたラムを次々とリリースした。
限定販売の各800本が即日完売となるなど、沖縄県産ラムの魅力は瞬く間に広がっていった。

瑞穂酒造 商品開発室室長 仲里彬さん
「このラムを飲めば飲むほど、黒糖の消費量が増えていくのは間違いないことです。『それぞれの離島に行ってみよう』『このラムを持って、そこで飲んでみよう』というような形で増えていくはずです。聖地巡礼といいますか、8島を回る方々が増えてくれるとうれしいです」

今回新たに発売されたラムは、これら8つのラムを巧みなブレンド技術によって1本に仕上げたものだ。

仲里さんは、まず黒糖の味の違いを感じてほしいと話す。

沖縄テレビ 稲嶺羊輔 記者
「(粟国島の黒糖を試食して)甘くておいしいです。(与那国島の黒糖を試食して)ん!?(驚き)」

瑞穂酒造 商品開発室室長 仲里彬さん
「この粟国と与那国の(黒糖の)差に、皆さん同じようなリアクションを(一番)とっています」

沖縄テレビ 稲嶺羊輔 記者
「食感も違いますし、甘み以外の要素が複雑に入っていると言いますか」

瑞穂酒造 商品開発室室長 仲里彬さん
「余韻も長く続いて、塩味や酸味も後に続くような特徴があります」

そして、これらの個性豊かな黒糖を使って 1本のラムに仕上げると、驚きの味が…。

沖縄テレビ 稲嶺羊輔 記者
「黒糖の甘さ、香りを感じますね。フルーティーさも感じます」

瑞穂酒造 商品開発室室長 仲里彬さん
「ピーチやマスカットと表現する方もいます。外国の方はハニーテイスト、はちみつの香りがするとよくおっしゃいます」

この日は、伊江島の黒糖を使った仕込みが行われていた。
1000本のラムを作るのに、800キロもの黒糖を使用する。

瑞穂酒造 玉城誉良さん
「伊江島出身です。実家が(サトウキビ)農家をやっているので、その(ラムの)何パーセントかに自分たちの黒糖が含まれているかと思うとうれしい気持ちがあります。ラム酒1本で全8島の黒糖の魅力を伝えきれたらなと思います」

バーテンダーもうなる!沖縄県産黒糖ラムの完成度

発売を目前に控え、仲里さんは沖縄県内のバーテンダーを招き、アイランズラムの試飲会を行った。

バーテンダーの男性
「甘みは入れていないですか?」

瑞穂酒造 商品開発室室長 仲里彬さん
「本当にちょっとだけ、ガムシロップを入れました」

バーテンダーの女性:
「(味が)きれいに伸びます。素晴らしいです」

完成度の高さに、第一線で酒を提供するバーテンダーもうなる。
なかでも仲里さんの話に熱心に耳を傾けているのが、BAR坂梨の坂梨貴彦さん。

アイランズラムと出会い、坂梨さんはバーテンダーとして大きな決断をすることになる。

自信を持って提供できる1本

BAR坂梨 坂梨貴彦さん
「本当に味わいがよくて、とても使いやすいと感じています。今回、ベースを思い切って沖縄県産ラムに変えることに決めて、使っていこうと思います」

カクテルなどのベースとして使用する「ハウスボトル」は、バーテンダーが幾多の酒の中から選び抜き、店の味を表現する1本だ。
20年以上にわたり愛用してきたハウスボトルに別れを告げ、アイランズラムに切り替える。

沖縄県産黒糖ラムの完成度の高さ、そして地産地消を掲げるプロジェクトにほれ込んでの大きな決断だった。

BAR坂梨 坂梨貴彦さん
「これだけクオリティの高いラムを今回作っていただけました。自信を持ってお客さんに出せます。県外や海外のお客様も増えているので、アピールできたらと思います」

沖縄から世界に誇れるラムを

小規模離島の基幹作物であるサトウキビで沖縄を盛り上げようと2020年に始動したONERUMプロジェクトは、アイランズラムの発売をきっかけに、さらなる広がりを見せることになる。

海外で飲食店を多数経営するシンデレラキャピタル 中澤政行さん
「ライバルは日本です。シンガポールとマレーシアで協力して、日本の売り上げをこのラムで超えようとしています」

小さな島々から生み出されたラムは国境を越え、シンガポール・マレーシアでも販売されることになった。

瑞穂酒造 商品開発室室長 仲里彬さん
「(海外とは)比べられないぐらい小さな蒸留所だと思いますが、ONERUMチームの想いは大きな蒸留所に絶対に負けないものだと思っています。島の方々の想いや、ONERUMチームの想いを、ラムを通して伝えていきたいです。世界中に行ってきます」

黒糖伝来400年の節目に、作り手の情熱によって生み出された珠玉の1本。

「沖縄から世界に誇れるラムを」

壮大な目標は、もはや夢物語ではない。

アイランズラムは、蒸留時に出る廃液を次の発酵に再利用する「ダンダー仕込み」と呼ばれる国内で初めての製法で作られ、このサステナブルな方法によって、コストダウンとより豊かな風味を実現した。カクテルだけではなく、ソーダ割りやコークラム、いろいろな飲み方ができるように作られている。

単にこのラムが売れるということだけではなく、その先にある、黒糖を生産する離島産業の盛り上がり、そして沖縄の新たな誇りの一つになっていくことを期待したい。

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