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OTV報道部

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政府も本腰のオーバーツーリズム対策 首里城再建に向けて長年の課題を住民が議論

2023年8月、首里城を視察した岸田総理大臣。
観光客が人気スポットに集中することで起きる「オーバーツーリズム」について、2023年秋にも対策をとりまとめることを表明した。

海外からのインバウンド客の回復も見込まれるなか、首里城の再建に合わせて、周辺地域で長年問題となっていたオーバーツーリズムを防ぐためのまちづくりが議論されている。

世界自然遺産の西表島は一日の利用人数を制限

2021年、世界自然遺産に登録された西表島(いりおもてじま)。

豊かな自然の魅力が世界に発信される一方、懸念されるのは、観光客が集中することで自然が損なわれたり、住民生活に影響を及ぼしたりしてしまうオーバーツーリズムの問題だ。

竹富町(たけとみちょう)では、自然環境に配慮しながら観光を楽しむエコツーリズム構想をまとめ、西表島の一部エリアでは一日の利用人数を制限することになった。

岸田首相「オーバーツーリズムは重要課題」

2023年8月、再建が進む首里城を視察した岸田総理大臣。
今後、海外からのインバウンド客の増加が見込まれることを踏まえ、対策を急ぐ考えを示した。

岸田首相
「観光客が集中することによって生ずる混乱など、いわゆるオーバーツーリズムの懸念についても政府として重要課題だと受け止め、この秋にも対策を取りまとめていきたいと思います」

新型コロナの流行で、いったん沈静化したオーバーツーリズムの問題は、いま世界中の観光地で再び浮上している。

観光バスの間を縫うように救急車が緊急走行

2023年8月に開かれた首里杜まちづくり協議会。
行政や事業者、有識者、それに住民が、周辺地域を含めた首里城の復興を目指す計画について話し合っている。

NPO法人首里まちづくり研究会 伊良波朝義 理事長
「驚きました。首里で課題としているオーバーツーリズムについて、総理が自ら語ったということは、非常にありがたいです」

これからのまちづくりに欠かせないテーマの一つになっているのが、交通渋滞の解消だ。

住民が撮影した池端交差点。
観光バスの間を縫うように、救急車が緊急走行している。

渋滞は、生活への影響が大きいものの、解消の手だてがなく、住民は頭を悩ませていた。

駐車場の対策だけでは根本的な解決にならない

首里城の火災や新型コロナの流行があり、観光による渋滞は以前ほど激しくはないが、小学校の通学路にもなっているため、問題は依然くすぶり続けている。

住民は、「観光団は首里城が見えるので、駐車場の前で必ず2、3分は止まって首里城を見て行きます」と話す。

首里杜館(すいむいかん)の地下にある駐車場は、空きを待つ車の渋滞解消対策の一環として、2023年7月から大型バスの利用が予約制となった。

また、龍潭(りゅうたん)の向かいにある中城御殿(なかぐすくうどぅん)跡地も臨時の駐車場として確保されている。

沖縄県の担当者は、「オーバーツーリズムになっているという数値を拾いあげて、やはり渋滞したらどうしようかというように、追加で対策をしていきます」と話す。

住民側からは、渋滞のピークを避けても、子どもたちの登下校と重なる時間帯があることへの懸念や、駐車場の対策だけでは根本的な解決にならないといった声があがった。

城西小学校区まちづくり協議会 前田曉寛 会長
「入庫・出庫だけではなく、そこにバスがいるかいないかが重要です。データとして8時の入庫がこれだけ減りましたと言われても、実際7時半から8時の間にたくさんバスが通っていると、小学生にとって非常に危ない状態です」

首里まちづくり研究会 伊良波朝義 理事長
「首里城公園に車で行く、という視点でしか考えられていないです。観光施策と結びつけないといけません。台数がどうとか車の話ばかりで、全く未来志向になりません」

「いろいろな課題をテーブルにあげて住民と考えていきたい」

再びオーバーツーリズムが生活を直撃するのでは…。
暮らしの真ん中に首里城がある住民にとって、今回の首里城復興の取り組みは、その観光のあり方を見直す、またとない機会でもある。

古都首里のまちづくり期成会 與儀毅 副会長
「やんばるが世界遺産に認定されたとき、さっそく入域制限をしようという話になったじゃないですか。これは世界的な流れです。首里の町は文化の街と考えた場合、ある程度の人数制限することを、共通認識として考えてもいいのではないかと思います」

協議会では、景観の形成や歴史文化資源の活用などをテーマに、2024年1月まで議論を深めていく予定だ。

城西小学校区まちづくり協議会 前田曉寛 会長
「いま非常に首里城や首里地域は注目されています。交通だけに限らず、いろいろな課題をテーブルにあげて、もう一回話し合えるのはいいチャンスだと思っています。住民と一緒に考えていきたいです」

国としても、対策に本腰を入れ始めたオーバーツーリズム。
観光地として発展するために、暮らしと観光をどう両立していくのか問われている。

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