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琉球ゴールデンキングス

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“最強”から勝利をもぎ取った「5.5秒」の価値 #30 今村佳太<下>

“最強”から勝利をもぎ取った「5.5秒」の価値 #30 今村佳太<上>はこちらから

西地区の優勝争いが激しく、千葉Jに2連敗してたらCSは沖縄アリーナで戦えなかったかもしれない

繰り返しになるが、千葉Jとの第2戦を取れたことは本当に大きかった。あの時はレギュラーシーズン終盤で、島根スサノオマジック、広島ドラゴンフライズ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズと西地区優勝を激しく争っていたことも理由の一つだ。あのカードで2連敗していたら、チャンピオンシップ(CS)を沖縄アリーナで戦えていない可能性もないわけじゃない。あの試合を機に、僕たちが上がっていったイメージがある。

 どんな内容でもいいから、勝つか負けるかでは全然違う。特に千葉Jに対しては相手が格上だと思って挑んでいたから。千葉Jにはギャビン・エドワーズが怪我でいなくて、ファイナルでは戦い方が違うチームになっていたけど、あの時に勝ったことで、次に対戦する時の気持ちの持ちようが変わったと思う。

 特に、千葉Jのローや島根のペリン・ビュフォードのように、ウイングで動けて、なんでもできる外国籍選手にはちょっと苦手意識があった。キングスのビッグマンは外に出されてしまうと対応が難しくなるから、日本人選手をマークに付けることも多かった。チームの中にはああいうプレーヤーを嫌がってる選手もいたと思うから、その意味でも勝ち切れたことは大きかった。

やることは変わらない。シュートが入らなくても、打ち続けないといけない選手だと思ってる

迎えたファイナルのGAME1はシュートがなかなか入らなかったけど、自分がやることは変わらない。「シュートタッチが合わないから、自分が何もできない」というシーズンを送っていたわけじゃない。シュートが入らなくても、僕は打たないといけない選手。そこは一貫してやろうと決めていた。

 だからこそ、一回目のオーバータイムの最後のプレーはふがいなかった。その時点でスコアは82ー82。残り12秒で、僕にボールを任せてもらった。ADのハイピックを使い、自分にプレーの選択肢があった。ショットクロックもギリギリで打たないといけなかったのに、右コーナーに隆一さんがいるのが見えた瞬間、頭からシュートの選択肢がなくなってしまった。

 結果、中途半端なジャンプパスを隆一さんに送り、佐藤卓磨にカットされた。ムーニーがハーフライン近くから打ったシュートがリングに弾かれて、なんとか助かったけど、本当に後悔した。映像が残っていれば見てみてほしい。とても悔しがってるのが分かる。原さんがマークに来ていたけど、あれは打たないとダメ。キングスはリバウンドが強いし、自分たちのシュートで終わった方がいい。今思い出しても悔しい。

「マジで何してんだろうなー」

 ベンチに戻りながら、そう思っていた。ただ、これでスイッチが入った。ベンチに座っている時、もう一つ考えていたことがある。

 「もう、全部打ってやろうかな」

 ダブルオーバータイムに入ってからのキングスの初めのスコアは、あの「5.5秒」でやったフォーメーション。全く同じ形でエンドラインの隆一さんから右コーナーでボールをもらって、この時は3Pを決めた。

 みんなそうだったけど、僕も本当に疲れていて、腕を伸ばしたら吊るような状態だった。フリースローは試合を通してなかなか入らなかったけど、最後までシュートを打ち続けて、ダブルオーバータイムでは得点することができた。

 やっぱりGAME2にも疲労は残っていた。初戦で負けてたら、メンタル面も含めて余計にしんどい。優勝をできたことは、GAME1での勝利がとてつもなく大きかった。

もっと試合を支配できる圧倒的な選手にならないと、自分が求めてる選手像には近づけない

昨シーズンはできることは増えたと思うけど、成長したかどうかは見てる人に判断してもらえればいい。ただ、責任と覚悟を持ってプレーしたことが、結果につながったと思う。すごく充実したシーズンを送ることができた。あの「5.5秒」の場面も含め、スタッフ、チームメートが信頼して任せてくれたことが大きい。「一皮向けさせてもらった」という感覚だ。

 チームで戦うことを大前提として、どれだけ周りを巻き込んでプレーできるかということを目標に置き、それは一つ、僕が手に入れた武器だと思う。ただ、もっと試合を支配できるような、圧倒的な選手にならないと、自分が求めてる選手像には近づけない。

 昨シーズン優勝したことで、ファンの皆さんの期待は今まで以上に大きい。今シーズンも自分自身に全力でチャレンジしていきたい。

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#30 今村圭太

1996年1月25日生まれ。新潟県出身。
2020-21シーズンにキングスに加入し、チームのエースとして活躍。
一度乗り出すと止まらない3ポイントシュートや、豊富なスタミナと体の強さを活かしたディフェンスが武器。
座右の銘は「向上心なくして成長なし」。

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