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長嶺 真輝

長嶺 真輝

躍進から低迷、琉球コラソン“原点回帰”へ 東江主将「OFの強い縦、DFの強い当たりが絶対に必要」

琉球コラソン
ホーム開幕戦の終了後にファンを前に挨拶する東江太輝主将=7月、沖縄県立武道館アリーナ

昨シーズンは球団として歴代最多の8勝を挙げ、7位に躍進した日本ハンドボールリーグ(JFL)の琉球コラソンが一転、苦しんでいる。

「Evolution(進化)」を掲げて迎えた2023-24シーズンは強みであるはずの体を張ったプレーやスピード感が影を潜め、7〜8月の序盤戦は1勝6敗1分。勝ち点3で13チーム中11位と低迷し、開幕スタートダッシュに失敗した。

台湾出身のパン・エンジャーとエストニア出身のイェスペル・ブルーノ・ブラマニスという身長190cm台のプレーヤーを含め、高さのある外国籍選手3人も新加入してスケール感や戦術の幅の広がりが期待されたが、それ以前にチームとしてやるべき事に対する共通認識が浸透し切れていない印象だ。

11月まで続くリーグの中断期間を利用し、東江正作監督は「原点回帰」を優先事項に挙げる。浮上に向け、もがくコラソンを取材した。

“8勝”が悪い方向に?プレーの強度が減退

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引き締まった表情で練習に臨む琉球コラソンの選手たち=9月26日、ANA ARENA 浦添

まずは前半戦を振り返る。

昨シーズン、高い得点力を発揮したライトバックの依田純真がオフに現役を引退したが、ほとんどの主力が残ったコラソン。しかしアウェーでの開幕戦でトヨタ紡織九州レッドトルネード佐賀に23ー34で完敗すると、この試合を含め、いずれも7〜11点という大差を付けられて4連敗でスタートした。

オフェンスではチームの武器である「強い縦の1対1」が徹底できずに相手ディフェンスのズレがつくれず、難しいシュートが増え、パスミスも頻発。ディフェンスも強度が足りず、簡単に得点を許してしまい、オフェンスにおけるもう一つの武器だった速攻が昨シーズンに比べて減少した。

第5戦は引き分けたものの、その後再び2連敗。リーグ戦の中断前最後の試合となった富山ドリームスとの第8戦を28ー26で勝利して初白星を挙げたが、今シーズン新規参入したばかりで、まだ戦力が十分とは言えない最下位の富山に対して接戦を演じたことからも、チームの厳しい現状がうかがえた。

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練習で指揮する東江正作監督

なぜ、ここまで苦戦が続いたのか。東江監督が厳しい表情で振り返る。

「昨シーズン8勝したことが悪い方向に出てしまい、選手たちのチャレンジをする気持ちが薄れてしまいました。厳しいプレーができず、ディフェンスは守れないし、オフェンスでは点が取れない。開幕直前に入った外国籍選手も、こちらが思い描く動きを理解するのに時間がかかってしまった。昨シーズンから後退した状況下で彼らをどう生かしていくかを考えてやった結果、ああいう形になってしまいました」

一度築いた「強さ」と「スピード」という土台が無くなった状態で、外国籍選手の「高さ」を生かしてさらに上のステージへ踏み出そうとしたため、連係が悪化してチームが足元から崩れてしまった。悪循環に陥っていることは、コート外から見ていても明白だった。

苦戦続きの中で見えた“光明” 再構築へ、攻守に「強さ」を

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練習に励む東江太輝主将

ただ、その中でも“光明”が見えた試合もあった。石垣市中央運動公園総合体育館で行った福井永平寺ブルーサンダーとの第5戦だ。

前半こそ容易に守備網を突破されて次々と失点し、4点ビハインドで折り返したが、後半は前線から激しいプレッシャーを仕掛けて攻勢に。GK衣笠友貴が好セーブを連発して流れを引き寄せ、さらに各選手が積極的に縦に切り込んで得点を重ね、終盤に追い付いて30ー30で引き分けた。序盤戦の8試合で、唯一得点を30点台に乗せたゲームでもある。

東江太輝主将が振り返る。

「悪い中でも、オフェンスでは強い縦の1対1はしっかりやろうということで、外国籍選手にもそれを徹底させました。ディフェンスは抜かれてもいいから強い当たりをやり続ける。相手も勢いのあるチームでしたけど、なんとか同点まで持って行けました」

この言葉に出てきた「オフェンスの強い縦の1対1」と「ディフェンスの強い当たり」は、東江主将が繰り返し強調するポイントだ。チームの再構築に向けて「昨シーズンクリアしたことではあるけど、もう一度戻ってでも、この2つは絶対に徹底しないといけない。その上で戦術や、外国籍選手の高さを生かしていく。30点を取れるオフェンス、30点以下に抑えるディフェンスをやっていきたいです」と改善を誓う。

司令塔の東江主将 シュート&パスのバランスに注目

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得点力のアップが期待される佐藤草太

東江主将に関しては、攻撃の司令塔としてどのようなプレーを選択していくのかも注目される。

開幕前は、外国籍選手の高さが加わることでオプションが増え、自身は“バランサー”として「味方に点を取らせて、その隙間で自分も点を取る」というオフェンスを描いていたが、連係が深まらず、その形をほぼ実現できていない。結果、自らシュートを打たざるを得ない場面が増え、自身の計40得点はリーグ全体で5位タイの数字だ。

ただ、その過程を経て他チームが東江主将のシュートを警戒していることは間違いない。それを念頭に、リーグ戦の再開後をこう見通す。

「前半戦であれだけ僕が打ちに行っているので、シュートは見せつつプレーしないと、相手ディフェンスが僕に集まらなくなってしまう。僕に集中させておいて、行けなくなったらパスという感覚でいいと思っています。あとはパン・エンジャーとか佐藤草太らの得点が、それぞれあと2点、3点ずつ伸びてこないと、上と戦うためには厳しいですね」

192cmのエンジャーはディフェンスの間を割る動きやディスタンスシュート(ロングシュート)、169cmと小柄ながら強靭な肉体を誇る佐藤は強い縦の1対1とステップシュート(一瞬の隙を突いて立った状態で打つシュート)を得意とする。佐藤は現状、1試合平均で3〜4点ほどだが、キャプテンからの期待も背に「安定して7〜8点を取りたい。相手を退場させながら点を取ったり、パスの判断力も磨いていきたいです」と意気込みを語る。

リーグが再開するのは、9戦全勝で首位に立つトヨタ車体ブレイヴキングスと対戦する11月12日のホーム戦。まだ時間はあるが、当然チームには危機感が強く、練習にも熱が入る。東江監督も「自分たちのストロングポイントをもう一回見直し、復活したい」と気を引き締める。1カ月半後、どんなハンドボールを地元ファンに見せてくれるのか。魂のこもった熱いプレーに期待したい。

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