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真栄城 潤一

真栄城 潤一

「とにかく心を動かしているかどうか」 “アクターズスピリット”に迫る 牧野アンナさんインタビュー・後編【アクターズLog.】

「沖縄アクターズスクール」牧野アンナ

数々の実力派アーティストを輩出した「沖縄アクターズスクール」。その第二幕を彩る、新たな沖縄の才能・B.B.WAVES jr.メンバーを追う青春密着応援番組『アクターズTune!』が毎週土曜あさ10:55〜絶賛放送中だ。
【アクターズ Log.】は番組と並走しながら、時には番組内容を深掘りし、時には違った視点からのアプローチで、世界を目指すフレッシュな才能とそのインストラクターたちを立体的に記録する試みである――。

前回に引き続き、今回はアクターズスクールの中核を担う牧野アンナさん(COO兼プロデューサー)へのインタビューをお届けする。後半はハイレベルに歌って踊るために必要なこと、新生アクターズ始動の大きなきっかけとなった三浦大知さんの存在、そして11月に行われるB.B.WAVES jr.のファーストコンサートへの意気込みなどについて話を聞いた。

歌って踊るために必要なことは…

――ハードなダンスをしながら同時に歌って、それらを高いレベルで成り立たせるためにはどんなトレーニングが必要で、どうやったら三浦大知さんやISSAさん、安室奈美恵さんのような次元まで到達するんでしょうか。

「歌いながら踊る時間をなるべくたくさん持って、それを“当たり前”にしていくいうことを心がけていますね。例えば、アクターズでは発声練習もビートをとりながらやってます。通常、声とダンスのレッスンって別物としてやると思うんですよ。そうなると、自分で融合させなきゃいけなくなってしまう。だから歌いながら踊るのは難しいと思われるんですけど、もう全部歌いながら踊っちゃえばいい。
そこから先は才能とかセンスも関わってきますが、歌いながら踊ってるうちにだんだんそのバランス感覚や表現方法が身に付いてきて、後は自分の中で色んなことが分かってくるんです。
そうすると体力的に「ここまでやると息が上がるんだな」という限界値も見えてきます。歌って踊るために必要な体力や持久力って、やっぱり歌って踊りながらつけていくのが1番で。今回アクターズをやるにあたって、MAXのメンバーにもISSAにも大知にも、トレーニングについて結構聞いたんですけど、やっぱりみんな口を揃えて「歌いながら踊る」って(笑)」

――結局はめっちゃシンプルだったんですね(笑)。

「そうそう。ISSAは夜中に人がなるべくいない時間を狙って大きな声で走りながら歌うとか変なこと言ってましたけど(笑)。それもマスクをつけて。大知も体幹トレーニングみたいなこともするけど、基本的には歌いながら踊ることをなるべく長時間、例えば1日中歌いながら踊る時間を作るとか、そういうことをしてる。
だから身体感覚が鋭くて、普段とは違う筋トレをして余分な筋肉がつくと邪魔になって、もう歌えなくなるみたいです。声の艶感が変わったり、自分の動きに重さを感じたりして。だからやっぱり、筋力も歌いながら踊ってつけたものしか身に付いていって欲しくないみたいなことを言ってるんですよね」

「沖縄アクターズスクール」牧野アンナ
『アクターズTune!』のスタジオ収録で、メンバーにカメラへの意識の向け方をアドバイス

三浦大知さんが体現した“アクターズスピリット”

――三浦大知さんの存在は今回のアクターズ再始動の大きなきっかけになったということですが、育成について三浦さんと話した時に印象的だったことなどありますか。

「技術的なことよりも、マインドについての部分について話しましたね。大復活祭のドリームステージ(※)をやるにあたって、大知がレッスンするまでの間、2〜3回私が教えたんです。その時、沖縄までマネージャーさんがレッスン映像を撮りに来てたんです。大知は「自分がやる以上、アンナさんがどんなレッスンしてたのか、ちゃんと見ないとできないから」と。それで映像を見て、アクターズのレッスンに初めてちゃんと向き合ったみたいで。
その時の私は子どもたちに技術的なことはほとんど言ってなくて、とにかく「(自分を)出せ!!」って(笑)。彼は技術的なことを大事にするレッスンはたくさん見てきたけど、「あそこまで自分の中に秘めてるパワーを出せ!」とか「心を動かせ!」っていうことをすごく大切にしてるのは「僕は見たことがない」って言ってました。だから多分、彼の中ではアクターズスクールが大切にしてるマインドや感性の部分を改めて知ったんじゃないですかね」
(※ドリームステージ…アンナさんのレッスンを受けた子どもたちが大復活祭のステージでパフォーマンスを披露した企画。三浦大知さんがスペシャルサポーターとして、前日リハーサルで子どもたちとダンスバトルをして、本番に向けて檄を飛ばした)

――これまで三浦さんの中に体感として基盤にあったその“アクターズ・スピリット”を、今になってちゃんとロジカルに自分の中で受けとめる機会になったのかもしれませんね。そんな前段もあって、復活祭のパフォーマンスが超ド級だったんですね…。

「彼は言葉で言うよりも「見せること」が自分が1番出来ることだって分かってるので、ドリームステージの子たちにそれを示すためにも、いつも以上に「感性を爆発させるっていうのは、こういうことだよ」っていうパフォーマンスをしたんだと思います」

「周りの『好き』が尋常じゃなかった」

「沖縄アクターズスクール」牧野アンナ
立ち位置や動きを確認しつつ、的確な指示を出しながらディレクションをしていく

――そもそもの話になりますが、アンナさんが歌とダンスに魅力を感じて始めたきっかけとか、プレイヤーとしての喜びはどんな風に感じるかということを聞いていいですか。

「私は多分、本当の意味での喜びを感じたことがないと思うんです。そもそもアクターズスクールに入ったのも母に勧められてなんですよ。歌って踊るのはもちろん好きですけど、プロになっていくレベルで好きになってはいなくて。それはもう(安室)奈美恵見てたら…。同じグループにいて、私は「今日も練習しなきゃな…」って思ってるけど彼女は全くそう思ってなくて、もう歌いたくて踊りたくてしょうがないんです。放っておいたらずっと歌ってるし踊ってる。
1回やった過去の振り付けは、私は忘れていっちゃうんですけど、彼女は昔の振り付けもずっと踊ってて、「あの振り付け何だっけ?」って言ったら大体踊れちゃう。たぶん、暇な時にゲームするみたいな感覚で、歌って踊るという行為があったんだと思います。だからもうなんか、歌と踊りを私は胸を張って「好きです!」って言えなくて…(笑)」

――いや、それは周りにいる人たちが凄すぎるんです(笑)

「そうなんですよ。そんなレベルの人たちを目の当たりにしてて、その人たちの「好き」のレベルが尋常じゃないので。でも自分がそのレベルの人たちと同じグループでやってたり、その人たちを指導する立場にあったから研究しなきゃいけなかったし、掘り下げる必要があったんです。
奈美恵とか大知とかが当たり前にやってることを、ちょっと理論的に自分の中で噛み砕いて理解してできるようになるための努力をしなきゃいけなかった。他者に教えたり、伝えたりするために。
それで、ある時点までは「この子たちに負けちゃいけない、だって私先生だから」って思ってたんですけど。でもふとした瞬間に、もうこれは追い抜かれちゃいけないということじゃなくて、「凄いな」って応援する気持ちもないときついなって気づいて。それからはすごい楽しくなりました」

レッスンへの眼差し

――そういった経験も踏まえて、インストラクターとしてのキャリアについてはどうですか。

「それは父が導いてくれた部分が凄く大きくて、私は本当は早い段階でプレイヤーを辞めたかったんですけど、父から「まだ駄目だ。今のお前の年齢で完全に指導者側に回るのは早すぎる。
もっとプレイヤー側の気持ちを理解できるようにならなければいけない」と言われて。スーパーモンキーズを辞めた時には完全にインストラクターになりたかったんですけど、そこから3年ぐらいはステージに出ながら指導するっていう時期が続きました。でもその経験がやっぱり大きかったです」

「沖縄アクターズスクール」牧野アンナ

――今のアクターズのレッスンの時、子どもたちのどういう点を見ているんでしょうか。

「1人ずつを見てます。この子はこうで、この子はここが足りないんじゃないか、みたいなことを個別に見る。それを踏まえて全体の方向性も考えたりしますが、実はあんまりタスクを決めないようにしてます。その時々のその子たちの状況を見ながら対応してます。例えばちょっと気持ちが浮ついてるなとか、こんな感じでやれば“それっぽく”見えるでしょ、という姿勢を見つけたり。
とにかく心を動かしてるかどうか、本気でやってるかっていうところが1番のポイントで。本人たちも一生懸命やってないわけじゃないし、気を抜いてるつもりはないけど、気がついたら“それっぽく”やっちゃってることがあるんです。
その時に「違うよ、それ」っていうのを教えますね。本当にちょっとしたことなんですけど、それが人を凄く感動させられるか、「へえ、上手いじゃん」って思われるだけかのボーダーになったりするので」

――アンナさんのほかに、舞子さんと健さんもレッスンを担当していますが、それぞれの強みや役割についてどのように考えていますか。

「まず、舞子は本格的にボーカルトレーナーになるための勉強を凄くしてて、声帯の仕組みとか喉を壊さずに歌うことなどの知識を身につけています。そういった部分は旧アクタースクールにはなかったんです。だから歌に特化しつつ、でも通常のボーカルトレーナーとは違ってそこにアクタースピリットが乗っかった時に彼女の持ってる知識をどんな風に子どもたちに伝えられるかっていうところを期待しています。

健はダンスが得意なんですけど、ただの振付師とかダンストレーナーではなくて、歌のジャマにならず、むしろ歌をさらに盛り立てて、なおかつ今まで世の中にないスタイルの振り付けを考えられるようになってほしい。だからアクターズの子たちの歌の実力は舞子にかかってて、ダンスの実力と世界観は健にかかってて、そして私はマインドの部分を徹底的に指導していくっていう、大きく分けてその3つの柱なのかなと。
このバランスからどういう才能が昇華していくか、というのが今のビジョンです。でもそれぞれに任せっ放しではなくて、健がやってる部分に対して私と舞子が助言したり、健がなんかここつまらないよねっていうポイントを指摘したり、互いに協力して作り上げていく雰囲気があるので面白いですよ。前のアクターズの時から経験値積んでるし年齢も上がってるし、プロとしての深い話をできるようになってるので。
今までの世の中にないものを作るためには…みたいなことを夜な夜なリモートでずっと話してます。
子どもたちの意識が上がったりパフォーマンスが良くなったりすると、3人で集まって「私たち凄くない?」って自分たちで言い合ったりして(笑)」

“未完成”だからこそのエネルギーを爆発させる

「沖縄アクターズスクール」牧野アンナ
モニターで本番のパフォーマンスをチェックする時には笑顔が浮かんでいた

――めちゃくちゃ楽しそうですね(笑)。大きなイベントとしては、11月19日に沖縄市民会館でファーストコンサートがあります。どんな目標をもって臨みますか。

「シンプルに絶対感動させる、ということですね。「よく分からないけど、凄かったな」って思ってもらえるパフォーマンスにしたい。「上手かったね」とかは絶対言われたくないし、それ言われたら負けだなと思ってます。本当に感動した時って「上手かった」なんて感じないと思うんですよ。だって上手いのは当然で、それを超えたところに感動があるので。ヤバいとか、かっこいいとか、そういうことを感じさせるものにしたい。
 今のあの子たちのレベルで人の心を動かすために、あの子たちが持ってる最大の武器って、一生懸命さだったりとか、ひたすらに伝えていくパワーとか、色んなものがあふれて、観た人たちに「自分も何か頑張らなきゃ」って思わせるようなものだと思うんです。アウトだって分かってるけど、死にものぐるいでヘッドスライディングする高校球児たちの甲子園を見て感動するような。
 プロみたいな感動のさせ方はまだできないのですが、でも、今のあの子たちは未完成だからこそ持っているエネルギーの爆発で勝負できる。それを解き放つようなパフォーマンスにしたいですね」

アクターズスクール

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新番組「アクターズTune!」では、沖縄アクターズスクールの新生B.B.WAVESメンバーとしてエンターテインメントの世界のスタートラインに立った沖縄出身の子どもたちが、歌や踊りなどパフォーマンスに汗を流し、ひたむきに情熱を注ぎながら、成長を遂げていく過程を追っていく青春密着応援番組。

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アクターズスクール|アクターズTUNE

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アクターズスクールが志す、時を隔てても変わらないもの。牧野アンナさんインタビュー・前編【アクターズLog.】

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