沖縄経済
輸出好調な日本酒の今後の戦略
後間
こんにちは。後間秋穂です。今回は「輸出好調な日本酒の今後の戦略」について野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんにうかがいます。よろしくお願いします。
宮里
よろしくお願いします。
後間
国内では日本酒離れが進んでいるようですが、日本酒の輸出は好調なようですね。
宮里
日本酒の2021年度の国内出荷量は、ピークだった1973年度の2割近くにまで落ち込んでいます。日本酒のうち純米酒や純米吟醸酒は増加基調にあるものの市場全体としては減少が続いています。
一方で、こちらの通り、日本酒の輸出は大きく伸びており、2022年度の売上総額はおよそ475億円で、13年連続で増加していて、新記録を更新しています。輸出額が最も多いのは中国で若者や富裕層の間で高級酒として人気です。総輸出額のおよそ7割は、中国、アメリカ、香港で占められますが、インバウンド需要の高いベトナムやタイ、マレーシアなどの東南アジア諸国やさらには欧州への輸出額も大幅に伸びてきています。
後間
日本酒の市場を活性化するには、輸出に活路を見いだすのが有効と言えそうですね。
宮里
世界的に日本酒の需要が高まるなか、こちらのように、日本酒のさらなる輸出拡大に向けた戦略とも言うべき、2つの大きな動きがあります。
一つ目は税制改正です。国税庁は税制を改正し、輸出用に限定した日本酒を製造できる免許制度を設けました。この改正では、最低製造量の基準がないため、小さな規模での取り組みも可能となりました。新潟市の事業者では、およそ20坪の小規模な醸造エリアで酒造りを開始しています。半径20km以内で栽培された米を原料とし、その50%を自然栽培や有機栽培に取り組む生産者から調達する予定があるなど地域農業の持続性や環境への視点も大切にしています。この醸造所は既に、北米や欧州、アジア国との輸出契約を締結しているということです。
後間
このような法改正によって日本酒の輸出拡大がスピーディーに進むといいですね。もうひとつの戦略も教えてください。
宮里
続いて二つ目の戦略は、日本酒の「古酒」の輸出拡大です。古酒とは「長期熟成酒」などとも呼ばれ、主に酒蔵で3年以上熟成させた日本酒を指します。熟成の方法や期間によって、新酒とはまったく違う色や味わいに変化するのが魅力です。
近年、その存在は薄れてきていましたが、2019年に老舗酒造会社7社が、古酒のブランド化に取り組む団体を設立しました。2020年に販売した202万円の古酒8本セットは、すぐに完売して大きな話題を呼びました。また、昨年販売した88万円のセットも売れ行き好調だったということです。団体の代表者は、「熟成させた日本酒の古酒のおいしさを世界にアピールしていきたい」と語っています。頂点の高級酒からピラミッド型に裾野が広がるワインのような市場を形成することが、古酒をめぐる今後の戦略のカギと言えそうです。
後間
日本の主力輸出商品としての地位を確立できるといいですね。
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