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くらしと経済編集部

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着実に進化を続ける「人工光合成」

小林
こんにちは。小林美沙希です。
国が、「脱炭素化」を実現するためのキーテクノロジーとして位置付けている「人工光合成」が着実に進化しています。
野村証券那覇支店支店長の宮里洋介さんに伺います。宜しくお願いします。

宮里
よろしくおねがいします。

小林
宮里さん、地球温暖化を食い止めるのは世界共通の課題ですね。

宮里
大気中の二酸化炭素の濃度は、産業革命前に比べて40%も増えていて、今後、有効な対策をとらないでいると、21世紀末には世界の平均気温が
2.6℃〜4.8℃、平均海面水位も最大82センチ上昇すると予測されています。

小林
そこで進められている研究が「人工光合成」なんですね。
自然界の光合成は、植物などが太陽のエネルギーを使って、水と二酸化炭素から酸素とデンプンなどを生み出す反応ですが。

宮里
人工光合成も自然界と同様、太陽エネルギーを活用しますが、光に反応して特定の化学反応を促す「光触媒」の役割が大きいです。
光触媒が太陽光に反応して水を分解し、水素と酸素を作り出します。
そこから水素だけを安全に取り出しエネルギーとして活用します。
取り出された水素は、工場などから排出された二酸化炭素と合成してプラスチックの原料を作り出す、燃料電池車の動力エネルギーとして活用することが想定されています。

小林
そうなると、光触媒の能力を上げる必要がありますね。

宮里
現在、産学官で、光触媒の効率を上げる研究をしています。
この研究では、2016年度に植物の光合成のおよそ10倍の変換効率、3%の光触媒を開発し、プロジェクトの最終である2021年度には10%という目標を掲げています。
また、自動車メーカーグループの研究所は今年、世界最高7.2%の変換効率を達成しました。

小林
光触媒の研究は進んでいますね。
今後の研究はどう展開していきますか?

宮里
これまで「排出しないこと」に重きを置いていた二酸化炭素が資源となります。
人工光合成を進める段階で生成された水素と、火力発電所や工場などが排出した二酸化炭素を合成して、プラスチック原料などの化学品を作ります。

小林
そうですか!
他の研究はどうでしょうか?

宮里
東京の大学や大手化学品メーカーなどが、ソーラーパネルのようなパネルを100平方メートルの敷地いっぱいに設置して、人工光合成で水素を作り出す大規模な水素製造施設の実験をしています。
本州と九州の合計面積にあたるサハラ砂漠の面積の3%分に人工光合成用の光触媒パネルを設置すれば、全世界の消費エネルギーを賄える水素が作れるそうです。

小林
取り出された水素と、温暖化につながっている二酸化炭素を使い、温暖化対策をするわけですね。

宮里
実はこの光触媒、1967年に日本の科学者が発見したもので、この技術では世界に先行しています。
日本は資源が乏しいですが、将来的には世界の主導的役割を果たす可能性もあります。

小林
宮里さん、ありがとうございました。

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