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OTV報道部

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辺野古代替施設よりも普天間基地の方が軍事的に優位性が高い 米幹部の発言が波紋

普天間基地の移設計画を巡り、アメリカ軍の幹部は、辺野古の代替施設が完成するのは、2037年になる予定だと述べた。

また、代替施設よりも普天間基地の方が軍事的に優位性が高いとする見解を示したことで、松野官房長官は火消しに追われた。

辺野古の代替施設の完成は2037年の予定

沖縄に駐留するアメリカ軍は、11月8日から報道機関を対象に、訓練の様子などを公開している。

この一環で開かれたワークショップのなかでアメリカ軍の幹部は、普天間基地の移設に伴う辺野古の代替施設が完成するのは、「2037年の予定」という見通しを示した。

台風など自然災害の影響は考慮されておらず、少なくともあと14年間は普天間基地が使用されることを示唆している。

辺野古沿岸部の北側、大浦湾で見つかった軟弱地盤が最も深い所で90メートルに達するとみられることについて、「軟弱地盤が修正できなければ軍事的な影響を与える恐れもある」と述べた。

松野官房長官「日米間に見解の相違はない」

一連の発言を受けて、政府は火消しに追われた。

松野官房長官
「地盤改良については、沖縄防衛局において有識者の助言を得つつ十分な検討が行われていて、飛行場として問題なく建設は可能であると承知しています。こうした内容については米側にも説明を行い確認してきており、日米間に見解の相違はないです」

住宅地に囲まれた普天間基地は、滑走路がおよそ2800メートルで、大型の輸送機や戦闘機もたびたび飛来している。

これに対し、辺野古の代替施設の滑走路は1800メートルで、アメリカ軍の幹部は航空機の運用に懸念を示し、辺野古はすぐ隣に山があることでレーダーの捕捉が悪いなどと指摘した。

また辺野古の代替施設が完成した後も、普天間基地が残せるのであればその方が良いという見解も示した。

アメリカ軍は沖縄に駐留する海兵隊の一部を改編し、離島の防衛に特化した小規模の部隊で展開する海兵沿岸連隊・MLRを2023年11月に発足させる。8日に公開した訓練も、こうした作戦を遂行するためのものであった。

新しい戦略を米政府が練っている中で見直す機会がある

17年前の2006年に合意された辺野古への移設計画は、今のアメリカ軍の戦略にかなったものなのだろうか。

安全保障が専門の沖縄国際大学の野添文彬准教授は、「近年のEABO(機動展開前進基地作戦)の下では、米軍の部隊を少人数で分散させて、固定的な基地に依存しないで活動している。新しい戦略と言うのをアメリカ政府が練っている中で、見直す機会があるのではないかと思う」と指摘する。

中国のミサイル能力の増強で大規模な基地は脆弱に

政府は「辺野古が唯一の解決策」と繰り返しているが野添准教授は、アメリカ軍の戦略に沿って基地負担の軽減を図る方法は別にあると指摘する。

沖縄国際大学 野添文彬 准教授
「中国のミサイル能力の増強によって、固定的で大規模な基地は軍事的に脆弱(ぜいじゃく)になっている。沖縄県外に兵力を分散させることが、実は沖縄県民の基地負担の軽減にもなり、あるいは安全保障上のメリットもあるかもしれない」

アメリカ軍の幹部は発言に際し、「政治的なしがらみがなく、あくまで軍事的な意味合い」だと前置きしているが、アメリカ軍の本音が垣間見えるような発言は、今後も波紋を広げそうだ。

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