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長嶺 真輝

長嶺 真輝

「40歳までプレーしたい」琉球コラソン・石川出の強い覚悟 12日のリーグ戦再開に向けいい手応えも

琉球コラソン・石川出
ベテランの一人として琉球コラソンを引っ張る石川出=7日、ANAアリーナ浦添(長嶺真輝撮影)

日本ハンドボールリーグ(JHL)男子の2023-24シーズンが長い中断期間を経て、11月11日にリーグ戦を再開する。

琉球コラソンは12日午後3時から、ホームのANAアリーナ浦添にトヨタ車体ブレイヴキングスを迎え、今季第9戦行う。試合は3カ月ぶり。これまで1勝6敗1分の勝ち点3点で13チーム中暫定11位と苦しい戦いが続く中、9戦全勝で首位を独走するトヨタ車体を相手にどのような戦いぶりを見せるのか、注目される。

キーマンの一人に挙げられるのが、レフトバックの石川出だ。東長濱秀希(ジークスター東京)、棚原良と共に興南高校3年時に全国3冠、日本体育大学では4年連続インカレ優勝という偉業を達成し、2010年に大崎電気でJHLデビュー。2016年にコラソンへ移籍し、所属8季目となる。

持ち味である豪快なディスタンスシュートは得点力不足に苦しむコラソンにとって欠かせない武器となっている。チームで上から2番目の36歳となった今も主力としてプレーし、経験を積んだベテランならではの戦況を読む力も求められる。7日にANAアリーナ浦添であった練習の前に、石川がインタビューに応じた。

中断期間に“スタイル”を再構築

琉球コラソン・石川出
豪快なフォームでシュートを放つ石川

ー 前半戦を振り返って。
「今シーズンは僕がコラソンに入団してから一番しんどいですね。スタッフ、選手とも新しい外国籍選手が入ってきてパワーアップすることを期待していましたが、チームへの合流が開幕直前で、コラソンのハンドボールを外国籍選手に落とし込めないまま新シーズンを迎えてしまいました。彼らもまだ若い選手で、言葉の壁もある中でなかなかチームとして向上することが難しかったです」

ー 中断期間を経て、今のチーム状態は。
「外国籍選手は台湾出身が多いのですが、10月に台湾で国体のような大会があって、彼らが一時帰国している時期がありました。その間に、コミュニケーションが取りやすい日本人選手同士で再度チームを立て直し、会話が増えて緊張感が増してきました。ディフェンスは前からアグレッシブに当たり、オフェンスはボールと人が動いて、縦に強く行くというコラソンのハンドボールを再構築できてきています。そこからプラスアルファで、外国籍選手が持ち味を発揮するという流れが良いと感じています」

「特に左利きのパン・エンジャー(身長190cm)は高さがあって相手ディフェンスの上からシュートを打てるので、オフェンスの幅が広がる。彼がディフェンスを引き付け、その隙を突いてまわりの僕だったり佐藤(草太)、東江(太輝)とかがシュートを狙うことができると思っています」

全勝のトヨタ車体にどう挑む?

琉球コラソン・石川出
練習でチームの完成度を高める琉球コラソンの選手たち

ー 次戦は日本代表を複数抱えるトヨタ車体が相手になる。
「この中断期間にどれだけ自分たちのハンドボールを突き詰められて、それをどのくらい試合で発揮できるのかを試すには絶好の相手だと思っています。同じくらいの順位の相手だと、どうしても勝ち負けが先行して意識の中に入ってきてしまう。トヨタ車体ほどの強豪であれば、『自分たちのハンドボールをやる』ということに集中できます」

ー 高さも体の強さも秀でた相手とどう戦うか。
「オフェンスでは体を当てられてしまうと相手に分があるので、いかに大きな選手の間を狙っていくかが大事になります。スピードも生かしながら、少しでもディフェンスが寄ってきたらパス。タイミングを外すことができれば、勝機はある」

「ディフェンスでは9mラインを6mラインと捉え、しっかり前から当たる。角度の狭いアウトサイドに誘導して、ゴールキーパーとの連携がうまく取れれば相手の点数を抑えることができるんじゃないかと考えています」

36歳で一線に「まだまだ負けたくない」

琉球コラソン・石川出
真剣な表情で練習に臨む石川

ー チームにおける自身の役割は。
「得点を狙わないといけないポジションですが、強引にではなく、チームの戦術の中でうまくシュートを打ちたいと考えています。あとはベテランなのでしっかりとゲームの流れを読みながら、ゲームをつくっていくことも役目です」

ー 自分の強みは。
「佐藤のようにフェイントを使って相手ディフェンスの間を切り裂くというプレーはあまり上手ではないですが、ディフェンスの枝(シュートを防ぐために頭上に挙げた腕のこと)をしっかり見ながら、相手キーパーと駆け引きをすることが得意です。思い切りシュートを打ちたいタイプなので、ディフェンスとの間合いの取り方も意識していますね」

「例えば僕は右利きですが、そこにディフェンスが枝を張ってきて相手キーパーが反対側に構えていたら、シュートの瞬間に手首を返して枝の裏側を狙いに行ったりします。前の試合における自分のシュートを分析して、相手のスカウティングを予想したり、試合の一発目のシュートでの相手の反応を見て、自分に対してどう対策をしているのかを読んだりと、いろいろ考えながらプレーしています」

ー ベテランになって体の変化もあると思う。工夫していることはあるか。
「自分自身、40歳まで一線でプレーすると決めているので、体へのアプローチは常に考えながらやっています。例えば今シーズンの開幕前のオフは、例年であれば全く体を動かさない期間も長かったのですが、今回は『オフにしなかった』という感覚です。若い頃に比べて体をプレーできる状態に戻すのに時間がかかるので、1週間だけ体のケアにあてた後は、ずっと筋トレやランの練習を続けていました」

ー なぜ40歳まで続けたいのか。
「ずっと一線でプレーをして、40歳を超えてもそのまま続けてる選手が男子では少ないんです。だからこそ、やってみたい。もちろん若手も増えてる中で契約を切られる可能性もありますが、まだまだ負けたくない気持ちもありますし、引っ張っていかないといけないという意識もあります。他チームの同年代は途中から出て短時間で結果を出すという選手も多いですが、やっぱり現役中は60分間主力として出てなんぼだという気持ちがあります。自分が一線でプレーし続けることで、他の選手にも刺激になったらうれしいですね」

「勇気もらった」日本代表がパリ五輪出場権獲得

琉球コラソン・石川出
キーパーを交わしてシュートを放つ石川

ー 10月のパリ五輪アジア予選で男子日本代表が優勝し、36年ぶりに自力での五輪出場を決めた。
「心の底から感動しましたし、めちゃくちゃうれしかったです。小さい頃から知ってる(東江)雄斗がキャプテンとして代表を引っ張っている姿を見て『すげえな』と思ったし、同時に『自分も頑張らないといけない』という気持ちにさせてくれました。一人のハンドボール選手として、勇気をもらいました」

ー ハンドボール界の勢いを、どうJHLに繋げるか。
「代表だけではなく、JHLの各チームがこの盛り上がりを底上げしていかないといけない。少しずつ競技もメジャーになりつつあるので、日本のハンドボール選手一人一人が意識を高め、観客を魅了するプレーをしないといけないですね」

ー 最後に中盤戦に向けて意気込みを。
「一戦必勝で、一つずつ勝ち点を積み重ねていきたい。監督がシーズン開幕前に言っていたように、昨シーズンの勝率(8勝13敗1分)を上回ることが目標です。まだまだ試合はあるので、コラソンのハンドボールをしっかりと表現できれば十分に達成できると思っています。ぜひ応援をよろしくお願いします」

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