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OTV報道部

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父は「沖縄県民斯ク戦ヘリ」の電文を打電した通信兵 旧海軍司令部壕で自決か 遺骨収集で紡ぐ世代間のつながり

旧海軍司令部壕で戦死した通信兵の遺族が先週沖縄を訪れ、壕の一般に公開されていない場所で2022年から始まっている遺骨収集に参加した。

今も遺族の元に帰らない遺骨や名前のある遺品は、遺族にとってどのような意味を持つのだろうか。

福岡県から遺骨収集に参加した遺族

大腿骨(だいたいこつ)や肋骨など複数の遺骨。

持ち主の名前が刻まれた印鑑や万年筆は、2022年10月から始まったNPO団体による遺骨収集活動で見つかったものだ。

豊見城(とみぐすく)市にある旧海軍司令部壕は、1945年の沖縄戦で使用された壕で、遺骨収集は、一般に公開されていないおよそ150メートルの坑道で行われている。

10月、福岡から沖縄を訪れ参加したのは荒川恒光(つねあき)さん85歳。

荒川さんの父・荒川一登(いっと)さんは、大田實司令官が自決する7日前に、海軍次官に宛てた電文を打電したとされる通信兵だ。

最期はここで命を全うしたんだろう

「沖縄県民斯ク戦ヘリ」

戦火を逃げまどう県民の厳しい状況を伝え、戦争が終わった暁には特別の配慮を求める内容の電報である。

この壕で、この信号室から電文を打った父を思い、荒川さんは毎年沖縄を訪れている。

荒川恒光さん
「ここで自決した遺体が3体あったということなので、ここで父が亡くなっていると思っております。通信兵というのは最後まで司令官の側で、業務をやらなきゃいかん立場だったと思いますので、最期はここで命を全うしたんだろうと思っております」

遺骨や遺品がまだ残っている

荒川さんは「この海軍壕は父との関係が非常に深いと思いますので、できるだけ参加させていただきたい」と考えている。

10月22日に行われた遺骨収集では、息子の剛至(まさゆき)さんとともに参加した。

剛至さん
「いまだに遺骨とか遺品が出てくるっていうのは驚いています。私も今日、初めて見ました。まだそういうものが残っています」

ふるいにかけ、石なのか、あるいは遺骨なのかを見落とさないよう、丁寧に作業を進める。

「遺族に早く遺骨を返してあげたいということが、一番の気持ちです」と荒川さんは遺骨収集に対する思いを語る。

父・一登さんは信号室で自決し、その遺骨は収集されて、国立戦没者墓苑に納められていると考え、荒川さんは手をあわせてきた。

荒川恒光さん
「沖縄戦もDNA鑑定をやっているということで、去年とおととしに厚労省へ申請したんですが、(遺骨が)みんな一緒になってしまったので、DNA鑑定はもうできなくなってしまいました。いま、海軍壕のようなところで出てきたのは、まだ鑑定の方法があるんですよね」

これから見つかる遺骨は、どうにか帰りを待つ遺族に届けたい。

荒川恒光さん
「ここで出たのはなるだけやっぱり、丁寧に拾い上げてDNA鑑定に回せるようにしてもらえればと思います」

そして今も見つかる名前のある遺品についても、何か手がかりがないかと父の海軍学校の名簿を持参した。

荒川恒光さん
「34期だけで、300人ぐらいいます。この期が一番多いんですね」

遺骨収集に参加している女性
「サカタって書いてないですか?」

剛至さん
「うちの家族には、ここで収集された遺品として、印鑑が届いていると、もうずっと小さい頃から聞いてきています」

祖父に会えたような穏やかな気持ちになる

荒川さんが父の遺品を手にしたのは今から51年前の1972年。

海軍壕で見つかり、糸満市摩文仁で慰霊碑を管理する事務所に展示されていた印鑑には、荒川の文字が刻まれていた。

荒川恒光さん
「これがその印鑑なんですね。これを見た瞬間、これは間違いないということで出してもらって、確認しました」

父と母がそろいで作った黒檀の印鑑。
遺品を形見として大切に持つ父の姿を剛至さんは幼いころから見てきた。

剛至さん
「印鑑が戻ってきたときに、やはりここで祖父が生きていた、ここで頑張っていたと思いました。ここに来ると、何か祖父に会えたような、穏やかな気持ちなんですね。そういう繋がるものが見つかって、それがご遺族の元に戻ったら、本当にそれが一番ですね」

「今回来てくれてよかった」次の世代に引き継がれる想い

父親が最期を迎えた場所で、多くの犠牲を生んだ戦争について、次の世代に伝えていこうとする父の姿を見てきた剛至さん。

今回は仕事を休んで沖縄を訪れた。

剛至さん
「そういう話は小さい頃から聞いていたんですけど、自分では結局何もできずにこの年になりました。一緒にこうやって作業に携われるのもあと何回かわからないので、この機会を逃したら、一緒に来られることはないかなと思うと、今回来られたことはすごく良かったかなと思っています」

体力の続く限りこの場所を訪れたいという恒光さんの思いは、次の世代に引き継がれている。

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