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長嶺 真輝

長嶺 真輝

注目選手・チームは?「秋春制」移行後の見通しは?国内6カテゴリーの“覇者”が沖縄に集結するサッカーキャンプがシーズンイン!

サッカー沖縄キャンプ
昨シーズン、J1初優勝を達成したヴィッセル神戸がキャンプを行う西原町民陸上競技場

沖縄の冬の風物詩となっているサッカーのキャンプシーズンが幕を開けた。

コロナ禍が落ち着いたこともあり、今年は主に1〜2月の期間に昨年より5クラブ多い24クラブのプロサッカーチームが実施予定。キャンプ地は石垣市を含め、沖縄本島でも南は糸満市から北は国頭村まで県内各地に及んでおり、トップ選手たちのプレーを間近に見ることができる貴重な機会だ。

温暖な気候や良質な芝で覆われたグラウンド、チームが同時期にキャンプを張ることによるトレーニングマッチの活発化など、沖縄キャンプの価値は年々上昇しており、昨年県内で実施したチームでは、J1のヴィッセル神戸を筆頭に5クラブが6カテゴリーで優勝を達成した。

今年の注目選手、注目チームはどこなのか。また、ファンにとって気掛かりとなっている2026年のシーズン「秋春制」移行後の見通しはどうなのか。キャンプ情報をまとめた。

目次

過去最高の「29クラブ以上」 温暖な気候や良質な芝が要因

沖縄県サッカー協会の玉城吉貴会長、沖縄県の高江洲昌幸文化スポーツ統括官、沖縄SVの髙原直泰CEO
サッカーキャンプをPRする(左から)沖縄県サッカー協会の玉城吉貴会長、沖縄県の高江洲昌幸文化スポーツ統括官、沖縄SVの髙原直泰CEO=15日、那覇市内

沖縄へのサッカーキャンプ誘致を推進する県文化観光スポーツ部スポーツ振興課は、J1のアルビレックス新潟、北海道コンサドーレ札幌、名古屋グランパス、J2のベガルタ仙台の4チームがキャンプインした15日、那覇市内で今年のキャンプについて記者会見した。

24クラブの内訳はJリーグ19クラブ(J1・12クラブ、J2・6クラブ、J3・1クラブ)、女子WEリーグ3クラブ、中国と韓国のリーグ2クラブ。海外からの来沖は4年ぶり。J1の新潟、J2の栃木SC、WEリーグのアルビレックス新潟レディースは沖縄で初めて実施する。

練習は県内15市町村にある計18カ所のグラウンドで行われる。新たな拠点としてJ1のFC町田ゼルビアとJ2の栃木が使う名護市21世紀の森公園サッカー・ラグビー場、J1の東京ヴェルディが利用する八重瀬町スポーツ観光交流施設も加わった。直近の2年間、改修工事などで受け入れができていなかったタピック県総ひやごんスタジアムも受け入れを再開し、J1の新潟とJ3の大宮アルディージャを誘致した。

3月以降には大学チームのキャンプも複数予定されており、それも合わせた15日現在の実施チーム数は過去最多の29クラブ以上になるという。

県の高江洲昌幸・文化スポーツ統括官は誘致状況が好調な要因について「冬場でも温暖な気温に加え、県として芝の養成・管理ができる人材を育てる事業に力を入れ、環境改善を進めた結果だと思います。沖縄でキャンプをするクラブが増え、トレーニングマッチを組みやすくなっているという相乗効果もあります」と分析した。

期間中は各クラブがサッカー教室や地域住民との交流も行う予定。北中城村のイオンモール沖縄ライカムでは約2週間、クラブやキャンプ地を紹介する展示、プレゼントがもらえるスタンプラリーを実施している。

徳元、田口、知念… 沖縄県勢の勇姿に注目!

サッカーキャンプをPRする(左から)沖縄県サッカー協会の玉城吉貴会長、沖縄県の高江洲昌幸文化スポーツ統括官、沖縄SVの髙原直泰CEO
各カテゴリーの優勝チームが沖縄に集結する

前述のように、昨年多くのカテゴリーで優勝したクラブが来沖する。J1覇者の神戸に加え、J2で頂点に立ち、J1昇格を決めた町田、天皇杯優勝の川崎フロンターレ、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を制した浦和レッズ、WEリーグとリーグカップの2冠を達成した浦和レッズレディースと錚々たるチームが並ぶ。石垣市がキャンプ地の蔚山HDFCも韓国Kリーグの優勝クラブである。

クラブ創設29年目にして悲願のJ1初優勝を達成した神戸は、1月19日〜2月1日に西原町民陸上競技場でキャンプを行う。大迫勇也や武藤嘉紀、山口蛍など多くの日本代表経験者を揃える。前線からの積極的な守備やダイナミックに展開する縦に速いサッカーに磨きを掛け、連覇を狙う。

町田は高校サッカー界を牽引してきた青森山田高校で長年監督を務めた黒田剛氏が指揮官となり、1年目でいきなりクラブ史上初のJ1昇格を成し遂げた。ブラジル出身で昨季J2MVPのエリキや成長著しい若手選手らを擁する。1月19〜24日に名護市サッカー・ラグビー場、1月25日〜2月1日はうるま市具志川運動公園多種目球技場でキャンプを張る。

当然のことながら、沖縄県出身のプレーヤーにも注目だ。

FC東京2年目のDF徳元悠平は、昨シーズンが自身初のJ1でのプレーだったにも関わらず、早速主力に定着。昨年5月12日の川崎フロンターレ戦ではペナルティエリア内の左側から右足で豪快にゴールを射抜き、J1初ゴールも決めた。AFCアジアカップのカタール大会に臨む日本代表メンバーに入っていて来沖こそしていないが、GK野澤大志ブランドンもチームメートだ。東京は1月19〜28日に国頭村かいぎんフィールド国頭、1月29〜30日に糸満市西崎陸上競技場で行う。

1月22日〜2月4日に南城市陸上競技場で実施するJ2のジェフユナイテッド千葉にはMF田口泰士がいる。所属4年目。昨シーズンは32試合に先発出場し、1ゴール6アシストを記録。J1昇格プレーオフに進んだチームを支え、J2のベストイレブンに選出された。

1月15〜28日に糸満市西崎陸上競技場でキャンプをするJ2の仙台には、今季からDF知念哲矢が加入した。直近の2シーズンは浦和に所属し、1年目は9試合に出場して1得点を挙げたが、昨年は出場無し。仙台への移籍発表時に「選手としてもすごくプラスになるような経験ばかりでした。その反面、悔しい思いをすることも多く、我慢が多かった2年間でもありました」とコメントしており、新天地での活躍が期待される。

キャンプ実施チームと、地元のJ3・FC琉球、日本フットボールリーグ(JFL)沖縄SVとのトレーニングマッチも予定されている。記者会見に出席したSVの髙原直泰CEOは「我々もJクラブと6試合ほどを予定しています。(今シーズン加入した)我那覇和樹選手も出ると思うので、注目していただけたらと思います」と観戦を勧めた。

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サッカー沖縄キャンプ イオンモール沖縄ライカム
イオンモール沖縄ライカムに展示されているキャンプ実施チームのユニホームやチーム紹介パネル

このように注目ポイントが極めて多い沖縄のサッカーキャンプ。県によると、3年ぶりの有観客開催となった昨年の経済波及効果は前年度比3.7倍の約20億7736万円となった。26クラブがキャンプを行った2020年には過去最高の約33億5千万円に達しており、コロナ禍から本格的な復活が見込まれる今年はさらに更新する可能性もありそうだ。

一方で、現在関係者にとって一つの懸念事項がある。Jリーグが2026〜27年シーズンから、開幕時期を現行の2月から8月に変更し、年をまたいで8月〜5月にシーズンを行う「秋春制」に移行することである。

暑い夏場の試合を減らして選手のパフォーマンス向上を図ることや、ACLや欧州の主要リーグと日程を合わせることなどが目的だが、沖縄のキャンプ時期とシーズンが重なることになる。ただ、冬場は降雪地域での試合が困難になることが予想されるため、12月頃から2月頃にかけての約2カ月間は「ウインターブレーク」として中断期間を設けることも決まっている。

それを念頭に、県の高江洲統括官は会見で「現行のシーズンオフとウィンターブレークの期間がほぼ重なるということで、現時点では沖縄キャンプへの大きな影響はないものというふうに考えております」と見通した。

確かに、シーズン中に寒い中でトレーニングをしてパフォーマンスが下がったり、怪我をしたりするリスクは避けたいはずなため、多くのチームが沖縄キャンプを継続する選択肢を取ることは十分に予想できる。ただ、それぞれのクラブの予算やシーズン中に本拠地以外でキャンプを行うことに対する考え方は不透明な部分も残るため、高江洲氏は「今キャンプに来ているクラブなどといろいろ意見交換をしながら、今後の影響について見極めていきたいと思います」とも語った。

サッカーキャンプは観光のオフシーズンとなる冬場の誘客に貢献しているほか、子どもたちがプロサッカー選手を目指すきっかけになるなど沖縄に様々な好影響を及ぼしているため、是非とも多くのクラブに継続してもらいたいところだ。

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